6月 2007アーカイブ

5%ルール

不動産の流動化において、オリジネーター(もともとの所有者)が
SPCに不動産を譲渡した場合、オリジネーターが
負担するリスク負担割合がおおむね5%以下
であればオフバランスしても良いという
ルールである。

まず、おおむね5%と言っているが、通常は
5%以下ということが多い。
リスク負担割合というのは、昨日のブログの
フローチャート図にもあるが、譲渡した不動産の
譲渡した時の時価(一般に譲渡価格を採用する)
に対する、オリジネーターが負担するリスク金額
(一般にはSPCに対するエクイティ出資金額)の
割合のことをいう。

ただ、最近ではこの5%ルールよりも高い基準を
設定している監査法人が多い。これは特に
大手の監査法人が多い。
具体的には、6月27日に掲載した投資事業組合の
子会社判定のフローチャートにある
「利益又は損失の過半を享受する者は、
 投資事業組合を子会社と判定する」という
規定を援用して、エクイティ出資の過半を
オリジネーターが出資すれば、オフバランス処理を
認めないということである。

つまり、5%ルールとあわせて適用して、
5%の過半である2.5%を超えるリスク負担を
した場合、オフバランス処理を認めないという
ものである。
ちなみに米国の会計基準では、この基準を
採用されている。

また、他のケースでは、過半ではなく
15%つまり5%ルールとあわせて、5%×15%=0.75%
しか負担してはならないという大手監査法人の
見解も聞いたことがある。

これが、まさに監査法人ごとの温度差であり
基準が明確にされていない現時点での
混乱の要因の一つではないだろうか。

監査法人ごとの温度差

イメージ 1

SPCに対する会計処理に関するスタンスは
監査法人や担当者ごとに異なることが多い。
これは、SPCに関する会計基準が改正の動きがあるが
(恐らく、今年又は今年度末までに作成されると思う。)
現段階では、明らかでないことが一つの要因であろう。

会計士というものは、基本的には会計処理を保守的に
考える傾向がある。というのは、会計監査というものは
失敗がないことが当たり前で、もし失敗があれば
大問題となることが、多いためである。

そのため、SPCというだけで、頭からオフバランスはダメという
会計士が多い。
しかし、その場合、ストラクチャーの概要や契約書ドラフト等を
見て、判断しているというより、SPCというだけで
ややこしいものと考えてで、「実質的に判断して」という
抽象的な理由で、オフバランスを認めていないことも
多いのではないでしょうか?
契約書を見て、明確に指摘にて、明確にオフバランスを否定している
と聞いたことはない。

監査法人の担当者からすれば、オフバランスはダメですよと
言っておいた方が楽なケースが多い。その時には
「実質的に判断して」という言葉が、非常に便利なのである。

ちなみに大阪地区でのオブバランス処理に関する温度差順に
大手監査法人を並べると
 .函璽泪
◆,△困
 新日本

という順序ではないだろうか。

トーマツの監査は厳格であるという定評があるが、
これは、創業者の影響が大きいのではないかと思う。
ご存知の方は少ないと思うが、トーマツとは
「等松さん」という創業者の名前が由来している。

創業者は元々軍人であったらしく、その辺から
監査での厳格さが影響しているのはないかと思う。

新日本というのは、太田昭和とセンチュリーが
合併してできた監査法人である。太田昭和の太田は
日本で初めて監査法人をつくった太田哲三さん
の名前が由来している。

事務所のカルチャーとしては、財閥系大手企業の
関与先が多く、おぼっちゃん的な空気が
蔓延しているのではないかと思う。

いずれにせよ、会計処理に関して監査法人ごとに
温度差があることは、本来あってはならないことであり
将来的には、一つの方向に収束していく事が
望まれることである。

会計上のオフバランス処理条件

イメージ 1

SPCを利用しての資金調達のメリットとして
資産を切り離す(オフバランス処理)できることは
以前、申し上げたとおりである。
そのための条件としていくつかあるが、SPCが
オリジネーターの連結子会社に、該当しないという
条件がある。

「中間法人の役割」で、中間法人によってSPCは、オリジネーターの
孫会社にはならないと書きました。つまり議決権ベースで考える限り
SPCは、オリジネーターから切り離されていることとなる。

ところが、実質的な支配がオリジネーターからSPCに及ぶ場合
子会社として認定されることとなる。
この、「実質的な」という意味が抽象的であり、各監査法人ごと
また、同一監査法人内でも、担当者によって見解がことなる
ことが多い。

一般的な見解としては、昨日書いたAM業務を、オリジネーターが担当する場合
支配が及ぶと考えられている。
これは、昨年9月に 企業会計基準委員会(ASBJ)より公表された
「投資事業組合に関する支配力基準及び影響力基準の適用に関する
実務上の取扱い」において投資事業組合に関する子会社の判定
フローチャートI(上記のフローチャートを参照して下さい)で、
△竜述が、AM業務を担当する会社は、
その投資事業組合を子会社と判定するとされたためである。

この基準は、ライブドア事件により投資事業組合に関する
会計基準を整備した一環で作成されたものである。
あくまで、この基準は、投資事業組合に関する会計基準であり
SPCに関する会計基準ではない。
そういった意味では、AM業務をする会社は、直ちにSPCを
連結子会社とする会計基準はないということが正しいといえる。
しかし、現実としては、投資事業組合の会計基準を
準用して、オリジネーターがAM業務を行えば、連結子会社と
判定するケースが多い。

そのため、AM業務担当会社はどこで、PM業務会社はどこであるかは
会計上のオフバランス処理判定のポイントとなるのである。

AMとPM

AMとPM コンビニエンスストアの名前ではない。
午前や、午後という意味でもない。
不動産の流動化において、必ずと言って良いほど
出現するプレイヤーである。
AMとは、アセットマネージャーで
PMとは、プロパティマネージャーである。

以前、この両者の違いがわかっていなくて
混乱したものである。

分かりやすく言えば、PMとは、不動産の日常管理業務を
する者であり、マンションで言えば、管理人さんの
業務が近いものと思う。
一方、AMとは、不動産の改修計画を立案したり、
テナントを誘致するための企画をしたりする者である。

PM業者は、どちたかと言えば、定められたことを
粛々とするのに対し、AM業者は、積極的に不動産に
関与して、不動産のバリューアップに携わる者と
言えよう。

報酬のもらう順序も、AMとPMでは異なる。
PM業者は、賃料収入から直接報酬をもらえることが多く
AM業者は、PM業者や信託銀行の報酬等を支払った後に
報酬がもらえることが多い。

というのは、PM業者のしている日常業務は、不動産の
維持には不可欠なことであり、賃料から真っ先に
もらえるようにしておくべきものであるからでしょう。
一方で、AM業者の業務は、どちらかと言えば、成功報酬的な
要素があるため、他の費用から劣後してもらえるものなっている。

実際は、同じ会社が、A物件では、PM業者となり
B物件では、AM業者になるなど、キッチリ住み分けが
出来ているわけではない。

なぜ、このようにAMとPMについて長々と書いてきたかと
言えば、オリジネーター(不動産のもともとの所有者)の
会計上のオフバランス処理において、オリジネーターが
AMであるか、PMであるかが大きな影響を及ぼすからである。

そのため、その会社は、AM業者なのかPM業者なのかの
判定は、重要になるケースがある。
会計上のオフバランスについては、次回以降に
もうすこし突っ込んで書きます。

流動化、証券化での中間法人の役割

最近の流動化や証券化での資金調達の
広がりにより、これらの業務に携わるプレイヤーの数が
増えたことは間違いない。
ただ、流動化、証券化で使われるビークルの役割を
十分に理解されていないプレイヤーも、結構いらっしゃる
ことを最近気がついた。

これは、大阪という流動化プレイヤーが東京よりも
圧倒的に少ないことも原因であると思うが、プレイヤーの
増加だけでなく、流動化・証券化の書籍があっても
難解なものが多いのも要因のひとつと思う。

そこで、流動化・証券化での中間法人の役割について
お話したいと思います。
オリジネーターが資産を譲渡する相手先となるSPCは、
オリジネーターが、出資して設立すれば、オリジネーターの
100%子会社となってしまいます。
その場合、万が一、オリジネーターが倒産等した場合、
その子会社であるSPCは、清算手続きに入ってしまうことと
なる。そうすると、SPCは直ちに譲り受けた資産を処分することと
なり、流動化・証券化で予定していたスケジュールよりも
早期に終了することとなる。
また、清算手続きで資産を処分した場合、一般的には
安く処分することになるので、流動化・証券化による資産を
担保とする債権者又は投資家は損失を被ることとなる。

そうならないようにするために、SPCをオリジネーターを
含めて、どの会社の子会社とならないような仕組みを
作るため中間法人が利用される。
順序としては、オリジネーターが中間法人を設立し
中間法人がSPCを設立する。ならば、SPCはオリジネーターの
孫会社であり、子会社と大きく変わらないのではと思われる
かもしれない。
実は、そうなるのではなく、オリジネーターが中間法人を
設立する際、基金(会社の資本金に相当するもの)を拠出するが
オリジネーターは中間法人に関して、議決権を全く持たない
仕組みとなっている。これがミソである。

通常、法人設立の際、資本金を拠出すれば、株主となり
議決権を持つこととなる。つまり、お金と議決権は
切り離すことができないものである。
一方で、中間法人法では、お金を出したからと言って
議決権が必ずついてくるとは限らないのである。
その結果、オリジネーターにとって、中間法人は
子会社(正しくは、子法人?)とはならないのである。

ちなみに、SPCの資本金を提供している中間法人からみれば
SPCは、中間法人の子会社である。
長々と書いてきたが、中間法人は、オリジネーターとSPCとの
絶縁体のような役割を果たしていると思っていただければ
言いと思います。

不動産鑑定士 研修を終えて

先週 1週間 東京にて不動産鑑定の研修を無事に終えることができた。
昨年12月の同様の1週間の研修を含めて、東京での研修は、これが最後になると思う。
合計2週間の研修を受けて感じたことは、これで、一通りの不動産鑑定の実務を
見ることができた。
もちろん、普段から不動産鑑定の実務をされている方から見れば、あたり前のことで
あろうが、実務経験の乏しい僕とすれば、大変有益な研修であった。

不動産鑑定の実務について、まだまだ未確定なところもあろうが、
僕が今までの研修を通じて、疑問に感じたことは、次のことである。

収益還元法や、DCF法で、収益を算定する際に、収益物件であれば
大家は敷金や保証金を受取ることとなり、これらの運用益や
償却益を収益として算定することとなる。
この運用益の算定方法について、違和感がある。
というのは、一般に不動産鑑定では、敷金のような預り金の
年利5%で運用できるとして、運用益を計上することが
一般的なことである。
ご存知のとおり、わが国の金利情勢で5%での運用というのは
極めて難しい環境にあり、このような計算は、経済実態からは
乖離していると思う。
もう少し、この辺を経済情勢に合わせてものにできないものかと思う。

ではなぜ、このような高い利率で計算されるのかというと
不動産鑑定士の主要業務のひとつである地価公示の作業では
5%の運用利回りを用いることが、一般的であり、それ以外の
不動産鑑定の実務でも、この利回りを用いることが通常であるからでる。

つまり、地価公示での鑑定作業が、それ以外での鑑定評価実務でも
広く使われていることにある。

果たして、このような方法で、いいのかどうかは、今後の
実務を通じて考えていきたいと思うし、コメントしていきたいと
思う。

不動産鑑定士への道

昨年より不動産鑑定士となるための実務演習を受けている。
というのは、随分昔のことになるが、平成11年に不動産鑑定士試験に
合格したが、その後、実務経験を受けずにいたためである。

では、なぜ不動産鑑定士の実務を受けていなかったといえば
当時は、鑑定実務を受け入れてもらえる鑑定事務所が
なかったのである。
今は、不動産投資がブームになっていることもあり
不動産鑑定士試験合格者は、引く手あまたと聞くが
平成11年当時は、今とは全く逆の状態であった。

過去のことはさておき、試験合格から約8年経て、不動産鑑定士への
道が開かれたことは、個人的には大変うれしく思っている。
これも、規制緩和の一環と思う。例えば、弁護士や会計士の合格者数が
増えて、資格取得者を増やそうとする傾向が、不動産鑑定士の資格制度にも
大きく影響していると思う。

たまたま、僕は、公認会計士と税理士資格を持っていることから、両資格と
比べて、不動産鑑定士試験制度について触れてみたいと思います。
不動産鑑定士の場合、お客さんが、国や地方公共団体であることが
多く、これらが顔を見ながらの仕事をされるスタンスが強い
気がする。具体的には、毎年行われている地価公示による
計算方法に縛られて、鑑定評価の作業を進めている。
当然、地価公示価格と鑑定評価はリンクさせなければならないと
法律上定められているが、どうもその縛りの中で仕事をしているため
窮屈な感じがしてならない。

個人的には、今後順調に実務修習が進めば、2年後に晴れて
不動産鑑定士になれるが、もう少し、その点を、うまく
解きほぐして、仕事を進めたいと思っている。具体的には
まだ、どうするかは決めてませんが。。。。

不動産鑑定士への道

昨年より不動産鑑定士となるための実務演習を受けている。
というのは、随分昔のことになるが、平成11年に不動産鑑定士試験に
合格したが、その後、実務経験を受けずにいたためである。

では、なぜ不動産鑑定士の実務を受けていなかったといえば
当時は、鑑定実務を受け入れてもらえる鑑定事務所が
なかったのである。
今は、不動産投資がブームになっていることもあり
不動産鑑定士試験合格者は、引く手あまたと聞くが
平成11年当時は、今とは全く逆の状態であった。

過去のことはさておき、試験合格から約8年経て、不動産鑑定士への
道が開かれたことは、個人的には大変うれしく思っている。
これも、規制緩和の一環と思う。例えば、弁護士や会計士の合格者数が
増えて、資格取得者を増やそうとする傾向が、不動産鑑定士の資格制度にも
大きく影響していると思う。

たまたま、僕は、公認会計士と税理士資格を持っていることから、両資格と
比べて、不動産鑑定士試験制度について触れてみたいと思います。
不動産鑑定士の場合、お客さんが、国や地方公共団体であることが
多く、これらが顔を見ながらの仕事をされるスタンスが強い
気がする。具体的には、毎年行われている地価公示による
計算方法に縛られて、鑑定評価の作業を進めている。
当然、地価公示価格と鑑定評価はリンクさせなければならないと
法律上定められているが、どうもその縛りの中で仕事をしているため
窮屈な感じがしてならない。

個人的には、今後順調に実務修習が進めば、2年後に晴れて
不動産鑑定士になれるが、もう少し、その点を、うまく
解きほぐして、仕事を進めたいと思っている。具体的には
まだ、どうするかは決めてませんが。。。。