営業者口座のないSPC

匿名組合契約では、匿名組合が営業者に年間20万円程度の営業者報酬を支払う
ことが一般的です。この営業者報酬は、SPCを維持するため事業を行っている
匿名組合が、営業者(SPC)に対して報酬を支払うというものです。
ただ、この営業者報酬は、SPCの内部取引のため、SPC全体の決算では内部取引
として消去され表示されることはありません。匿名組合決算の損益計算書で
『営業者報酬』として表示されます。
 
SPC案件では、営業者用の預金口座として、『営業者口座』が準備されることが
一般的です。営業者報酬は、匿名組合決算に合わせて匿名組合口座から営業者
口座に送金されます。営業者は、受取った営業者報酬で法人税等の納税資金に
充当します。
 
案件によっては、営業者口座がなく、匿名組合事業を行う事業口座のみという
案件もあります。そのような場合、営業者報酬をどのように扱うかが問題と
なります。
 
匿名組合契約書には、営業者報酬の記載はあるので、匿名組合経理では営業者
報酬を計上します。しかし、営業者口座はないので、営業者報酬の精算処理はなく
経理が進みます。その結果、営業者から匿名組合に対する営業者報酬を受取る
債権が計上され、匿名組合では反対の債務が計上されます。営業者口座がないので
これらの債権債務は計上されたままで、匿名組合経理上残ることになります。

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【消費税】基準期間の課税売上高の判定

消費税申告書を作成する際に重要となるのが「基準期間の課税売上高」ですが、
先日はその判定を慎重にしなければならない機会が2度ございました。

【ケース1】
設立3期目となる不動産関連SPCの消費税申告書を作成するケース
この場合、前々事業年度の課税売上高が判定の基準となりますが、会計ソフトで
作成した申告書のチェックを行う際、前々年度の課税売上高とは異なる金額に
なるケースがあります。

設立1期目は、基準期間(事業年度)が12ヶ月未満のケースが多く、課税売上高を
12ヶ月に換算
して判定しなければいけません。
前々事業年度の課税期間の課税売上高をその課税期間の月数で割り、
これに12を掛けて算出した金額で判定します。

【ケース2】
SPCが免税事業者であったが、課税売上高が増加するなどして
消費税課税事業者になる時に提出する
『消費税課税事業者届』に記載する「課税売上高」です。

「基準期間(前々事業年度)」で判定する際は、「課税売上高」のみで判定します。
「特定期間(前事業年度)」で判定する際は、前事業年度の最初の6ヶ月で
① 課税売上高が1,000万円を超えた場合 または
② 給与支払額が1,000万円を超えた場合
課税事業者となり消費税の申告義務が発生します。

なお、免税事業者であるSPCの課税売上高の判定は、税込額
行うことにも、注意が必要です。
 
通常、SPCでは給与支払いが発生しないので、「特定期間」の課税売上高で
消費税課税事業者に該当することは、ありません。

インボイス制度が始まった今、消費税制度が、複雑になりました。
SPCが課税事業者になるか否かの判定基礎となる
「基準期間の課税売上高」の正確な判定は大切です。

この判定を誤り、免税事業者と理解していたSPCが
課税事業者であった場合、そのインパクトは大きく
慎重かつ正確な判定が大切と感じました。

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契約書等への押印手続

SPC会計業務をしていると、契約書や作成書面への
押印作業は、定期的に発生します。弊事務所でも
SPCの印鑑をお預りしているためです。

今まで、多くの書類に押印をしてきました。
押印の種類について、整理しご説明したいと
思います。

押印の種類
① 署名欄への押印
② 割印・・・複数枚の契約書の綴じた部分への押印
③ 捨印・・・主に登記申請書類の場合、軽微な修正を
司法書士が出来るようにする押印

になります。①②は必須となりますが、③まで押印するケースは
少ないように思います。

レジ案件のSPCでは、年度末付近は、テナントの入れ替えも
多く、押印する頻度も多くなります。

シングルテナントのSPCの場合は、テナント入れ替えによる
押印は少ないので、リファイアンスの際には、押印の頻度が
上がりますが、押印する頻度は多くありません。

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会計上 税務上

SPC会計で問題となるポイントに、会計上問題ないか、
税務上問題ないかという2つがあります。

会計上の問題は主に費用処理すべきものを資産計上する等、
費用を繰延計上し、利益を出す方向にある経理処理が
認められるかどうかというポイントです。

一方、税務上の問題は費用処理が認められるかというポイントです。
税務上は消費税で課税取引か非課税取引かというポイントも
ありますが、ここでは法人税上の費用処理が認められるか否かに
ポイントをあててお話します。
 
税務上の問題は、費用処理をして課税所得を少なくするか否かが
ポイントで、費用処理出来るものを繰延処理しても問題になることは
ありません。

具体的には、減価償却の耐用年数を税務上は20年のところ、
30年で処理する、もしくは減価償却資産の取得価額を広く解釈して、
費用処理出来るものを取得原価に含める場合などです。
税務上認められない処理をすると税務調査等で法人税納付漏れなどの
リスクが発生します。

一方、会計上の問題は、税務上の問題とは180度逆の論点が多く、
費用処理出来るものを資産計上する場合などが該当します。

SPCが上場会社の連結子会社の場合、SPCの決算数値が連結財務諸表に
反映されます。また、通常は連結上の親会社と同じ経理処理方針が求められる
ことから、親会社の方針がSPCの経理にも影響します。

このようなケースでは、SPCが会計監査を受けるケースも多く、会計上の
問題をクリアーしなければ、決算を締めることが出来ないこともあります。

SPC会計では、このような会計上の問題と税務上の問題の2つをクリアー
出来る経理処理が求められます。

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会計監査の要否

 SPCは、投資家や金融機関からの借入金で投資事業を行っており、
正しく会計処理され財務の透明性が求められます。
そのため会計監査をするケースが多く見受けられます。

 会計監査には、大きく分けて法定監査と任意監査の2種類があります。
法定監査は法的に会計監査が求められるケースで、会計監査を受けることが強制されます。
一方で、任意監査は法的には会計監査を受ける必要はありませんが、
プロジェクトの関係者間でのプロジェクト契約やローン契約、
投資契約等で会計監査を受けた決算書を毎年提出することが求められるなど、
主に契約書の中で会計監査を求めているケースが該当します。

 会計監査を受ける場合、監査費用を要するので、投資家の利回りが下がる要因になります。
一方で、会計監査というチェック機能が働くので、決算書信頼性は高まります。

スキーム条件会計監査
TMKスキーム優先出資をうけている法定監査
GK-TKスキーム総負債が200億円未満法定監査
総負債が200億円以上任意監査

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リファイナンスと長期前払費用の償却

不動産証券化の際、ノンリコースローンのローン手数料や、弁護士費用等の一定のまとまった費用が発生します。これらの費用を、支出時に全額費用処理する場合と、長期前払費用として計上しローン期間等で償却するケースがあります。

ローン関係費用は、ローンが実行されればそれでSPCは経済的メリットを受けたとして、そのタイミングで全額費用処理することがあります。一方で、ローンが完済されるまで、返済の猶予を受けているため長期前払費用として計上し、ローン期間で償却することもあります。ここでは、長期前払費用として償却するケースについて、解説したいと思います。

長期前払費用の場合、償却期間をどのように取れば良いかが論点になります。通常ノンリコースローンでは、通常の約定返済期間と、2年程度の延長可能なオプションが付いてあることがあります。例えば、通常のローン期間が5年で、2年延長のオプションがあるケースはどうなるでしょうか?ほとんどのケースでは通常のローン期間5年で償却しています。ただ、SPCの利益計上を早めるため、2年間の延長オプションを考慮して7年間で償却するケースもあります。

税務上は、ローン手数料や弁護士費用は、支出時に全額費用処理することを制限する規定はないので、長期前払費用として費用計上を繰延処理しても問題にはなりません。会計上は、このような長期前払費用は資産性がないものとして、計上が認められないことも想定されますが、ローン実行中はこれらの費用支出の恩恵を受けていることから、容認されることが一般的です。

では、通常の返済期間5年のローンが3年目にリファイナンスをした場合は、どのようになるでしょうか?このようなケースでは、当初受けたローンは一括返済することになります。そのため、未償却の長期前払費用残高は、一括償却をして残高ゼロになります。

リファイナンスのためにローン手数料や弁護士費用を支払っているでしょうから、再度ローン期間に応じて長期前払費用を計上することになります。

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SPC設立時によくある事

弊事務所では、SPCを設立するために法人登記をおこなう
機会が多いのですが、登記完了から1週間程すると数々の
ダイレクトメールが郵便で届きます。

弊事務所が登記上SPC本店の住所となっていますので、
会計ソフト会社、カード会社、レンタカー会社等しばらくの間は
何度々も同じDMが郵送されてきます。

国税庁の法人番号公表サイトには、名称検索や住所検索の他に
法人番号検索ができますが、下記のシステムから検索すると
おのずと新設企業がどこなのかが分かってしまいます。
DMを発送する会社からするととても便利な機能です。

登記をして最初の決算が終わりしばらくすると、日本年金機構より
厚生年金保険・健康保険の加入状況についての提出依頼が届きます。
SPCは、基本的に役員報酬や給与が発生しませんので、対象者が
いない旨の回答を提出することになります。

しばらくすると、社会保険加入の対象者がいない事を証明できる
書類の提出依頼が届きます。
・決算書の写し(無報酬が確認できる直近のもの)
・役員報酬が無報酬である旨を記載した株主総会の議事録や定款等の写し
上記の書類を提出することを求められます。

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取得価額の範囲

不動産ファイナンス案件の際、不動産の取得価額について、
論点になることがあります。
これについて、会計上、税務上の整理をしておきたいと思います。

税務では取得原価に組み入れなければならない項目を定めていて、
それ以外のものを組み入れても問題になることはありません。
取得価額に組み入れることで将来の減価償却費計所時点までに
費用処理が繰り延べられるからです。

税務では不動産の売買代金と仲介手数料、そして売買時に精算される
固定資産税が取得価額に含めるように定めていて、例えば、司法書士報酬や
登録免許税等を費用処理しても、取得価額に含めても問題になることはありません。

一方、会計では不動産を取得に要したものを、取得価額に含めるべきとし、
税務のようにものと明文化されたものはありません。
その点では、会計上の取得価額の範囲は、案件によって異なります。

一般的には、税務上の取得価額に含めるべきものは、取得価額に含めることは
必須として、司法書士関連費用、ローン手数料、弁護士費用、不動産取得に関する
アセットマネジメント費用は取得価額に含めるケースもあります。
それ以外に、これらの費用を長期前払費用として、例えばローン期間に応じて
償却するというケースもあります。
 
会計監査を受けるSPCの場合、会計監査担当会計士によって、取得価額の範囲が
問題となることもあります。
事前に監査担当会計士とは、擦り合わせをしておくことが大切と思います。

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減価償却での耐用年数の考え方

建物の減価償却費を計上する場合、税法の定めもあり償却方法は定額法しか採用
できません。償却額は耐用年数を何年とするかで償却方法が異なります。法人税
法では、建物の用途や構造等によって耐用年数を定めており、建物のそれぞれを
調べて、対応する耐用年数を採用することが一般的です。
 
不動産証券化案件では、不動産鑑定評価書を取っています。そこには建物の残存
耐用年数が記載されています。こちらの耐用年数を採用することも可能ですが、
法人税法で定める耐用年数より短い場合は、法人税法での耐用年数での計算結果
との差額を、法人税申告書で調整(申告加算)しなければなりません。
 
このような手間は回避することが通常で、不動産鑑定評価書の耐用年数を採用す
るケースは、法人税法の耐用年数より長くなるケースに限られます。
 
一方で償却額を多くするためには、どのような方法があるでしょうか?通常、建
物は躯体部分と電気設備、給排水設備、空調設備、エレベーターなど付属設備と
一体となっております。通常建物の耐用年数と言われるものは、躯体部分の耐用
年数を指しています。建物に含まれる電気設備等の設備は、法人税法では躯体よ
りも短い15年程度の耐用年数を採用することになっています。
 
そのため減価償却費を多く計上するには、建物の構成要素を分解して、躯体部分
と設備部分のそれぞれの金額を算出します。その際には、中古建物の場合は前所
有者の固定資産台帳を、新築建物の場合は工事請負契約書などを利用して、それ
ぞれの金額を算出します。
 
このように少し手間を要しますが、建物を構成要素に分解して、それぞれに合っ
た耐用年数を採用することで、建物を全て躯体として減価償却費を計上するより
多くの減価償却費を計上することが出来ます。

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お客様とのデータ共有

SPC案件では、会計証憑や契約書等のPDFデータをご提供いただき、
それに基づき経理処理をして、税務申告書の作成、決算書の作成、
匿名組合決算書の作成など様々な成果物を提出します。
また、SPCの登記内容の変更などあれば、税務署に届出を行います。

プロジェクト期間が長期に及ぶと、会計事務所とアセットマネジメント会社
との間で共有する資料の量は膨大なものとなります。
時々、数年前の資料を確認したい時もあり、これらのデータは時系列で整理され、
データ保管されることが大切になります。

弊事務所では、お客様からのご要望等あれば、ご提出いただいたデータと、
弊事務所が作成しお客様や税務署等に提出した資料を、それぞれ時系列に保管し、
クラウド上で共有出来る体制を整えております。

この体制を整えることで、過去の資料の確認等が容易に出来ます。
資料の保管ルールを定めておくことで、過去の資料を確認したい時も、
短時間で探し出し、確認出来る体制となっております。

紙書類を出来る限りPDF化することで、膨大な資料もパソコン1台で
出来るシステムとなっています。
昨今の在宅勤務を弊事務所でも導入していますが、資料をPDF化しておくことで、
自宅でも事務所にいる時と同じ水準の資料を見ることが出来ます。

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