7月 2008アーカイブ

シンガポールでの不動産事情

先日、自宅へシンガポールに住まれている
日本人の方から、シンガポールでの
不動産事情について、お話を聞きました。

ご存知のとおり、シンガポールは
日本の淡路島程度の大きさの小さな国です。
税率が低く、英語圏(古くは、イギリスの
植民地でした。)ということもあり
世界の中でも有数の金融センターでもあります。

日本では、石油などに代表されるように
物価が上がっていますが、シンガポールでも
日本と同様に物価が上がっているようです。
日本と同様に、石油関連商品のほか
不動産価格(売買価格、賃料とも)が
ここ数年で、一番あがっているとのことです。

シンガポールの場合、これからも人口増加が
見込まれることから、不動産の価格も
上昇しているものと思います。

日本の場合、ここ5年程度の不動産価格の
上昇は、人口増加というより、バブル経済の
影響で下がりすぎた不動産価格が
最近の不動産の金融化の影響もあり
不動産価格が上昇したと思っております。

日本とシンガポールでは、不動産事情が
大きく異なっていると思います。

企業破綻は、早いもの勝ちか

最近の企業破綻

先週末には、不動産会社の破綻が
相次ぎました。これからも、同様の
ことが続くことも考えられます。

ところで、民事再生法ができて、10年ほど
経過したのでしょうが、民事再生法と
いう言葉は、一般的に知られる言葉に
なったと思います。
民事再生法は、百貨店のそごうの破綻の最
使われたころから、一気に世間に認知され
使われるようになったと思います。

私にとって、そごう百貨店は
会計士試験に合格して、監査法人に入所してから初めて
担当させていただいたので(そごう大阪店のみの担当です)
それなりになじみのある会社でした。

ところで、最近の企業破綻を見て感じることは
上場会社であっても、民事再生法の申請に
昔ほどの抵抗感がなくなったと思います。
上場会社であれば、破綻しそうになれば
経営者は、死にもの狂いで資金繰りに
奔走し、出来るだけの手を打って、なんとか
しようとしたが、どうにもならない時に
初めて破綻にいたるものという印象を
持ってましたが、
最近では、もっと打算的で、早めに
破綻すれば、企業価値の毀損も小さいし
再生する可能性も高いため、簡単に
破綻にいたっているケースがあるのでは
ないかと思っています。

いすれにしても、企業が破綻すれば
関係者に迷惑がかかることでしょうから
簡単に破綻にいたるという風潮が
あるのであれば、好ましくない傾向と
思っております。

建物に含み益

最近では、建築コストが上昇して
建物を建てる採算ベースが厳しくなって
きています。
この要因は、鉄等の材料費、また
石油価格上昇による材料を運搬する費用の
高騰、関西地区では、堺や尼崎での大規模
プロジェクトによる工員の需要が、旺盛で
工員の単価が、高くなってきていることが
要因です。

このため、数年前では10億円でできた工事が
今では、例えば、15億円要することも
あるそうです。
この結果、数年前に竣工した建物を評価した
場合、建物に含み益が生ずることが
あります。
(不動産鑑定での建物評価は、建物の
 建築時の建築コストをベースとは
 せず、評価時点の建築コストをベース
 とするからです。
通常、土地に含み益が発生することは、
理解できますが、減価償却する建物は
竣工時の、まっさらの状態が、最も
価値があり、その後は、老朽化等により
価値が下がっていくという理解が一般的です。

しかし、最近の経済環境では、建物に
含み益が生じるという不思議な現象が
おこっております。

最有効使用という考え方とCRE戦略

不動産鑑定の作業では、対象地について
最有効使用とは、何かという検討をします。
最有効使用とは、対象地において、
最適で合理的な不動産の利用のことです。

例えば、銀座の目抜き通りに、戸建住宅が
あれば、大抵の人は、こんなところには
戸建住宅を建てるのではなく、商業施設を
建てるべきだと思うでしょうし、
逆に、交通の不便なところに、都会に
しかあるそうもない、高層のビルがあれば
こんなところには、似つかわしくないと
思うでしょう。

不動産鑑定では、その土地・土地に応じた
最適な利用と現状を比較検討しながら、
不動産鑑定を行います。
場合によっては、現況建物を取り壊して
最有効な建物を建築することを想定して
鑑定評価を行います。
不動産の最有効使用は、時の
経過とともに、変わっていきます。
対象地の昔の町並みを写真などで、見る
ことが出来れば、そのことは、手に取る
ようにわかることでしょう。

企業が保有する不動産についても、
最有効となることが、CRE戦略を
検討するにあたっての切り口になると
思います。

ただ、単に最有効使用にすることだけが
CRE戦略で、検討すればよいのではなく
企業としての最有効使用とは、何か
ということも考えなければならないと
思います。
企業の不動産は、それぞれ独立して
企業経営において、機能しているわけではなく
他の不動産と有機的に関係を、及ぼしながら
機能しています。
その中で、最有効な利用方法を検討する
ことちなると思います。
単純に取り壊すとしても、資金を要しますし
場合によっては、代替地を探さなければ
なりません。
企業というものは、日々活動をしているので
単純に保有不動産を取り壊したりは
できないものです。

これが、単純な不動産の有効活用と、CRE戦略
との違いではないでしょうか。

最近の不動産流動化ビジネス

最近、証券化関係者とお話する時
他社の動向は、どうですかという
質問を受けることが多くあります。
ここ半年で明らかに、潮目が変わったので、
他社の動向が気になっている方が多い
ようです。

最近の動向を言いますと、今の
経済情勢を反映した不動産流動化
案件が組成されています。

わかりやすくいいますと、
資金繰りに窮した不動産会社が
売りたたく物件を、購入して
それを時間をかけて、売却して
利益を上げようとする案件が
出てきています。

不動産鑑定の実務で、取引事例を
調べる際、売り急ぎにより
相場価格の30%オフで取引されている
事例などが、時々出てきます。
まさに、そのような売り急ぎ物件を
狙って安く購入し、売却益を
得ることを得ようとする案件です。

これからも、破綻するまたは資金繰りに
窮する不動産会社も出てくるようでしょうから
このような案件も増えるかもしれません。

最近の企業破綻

先週末に、ゼクスとキョーエイ産業が
民事再生法を申請する取締役会決議を
したことがリリースされました。

両者の破綻は、偶然ではなく、不動産会社の
経営環境の悪化を 物語っていると感じています。

いずれの会社も私どもの事務所で関与している
案件で、プレイヤーの一員として、過去に
一度は、関係のあった会社であることも
そのように感じさせる原因なのかもしれません。

ゼクスについては、私が住んでいるところから
数キロ離れたところで、運営が起動に乗らなかった
高齢者向けマンションがあり、身近なことと
感じさせています。

これから少なくとも数年程度は、厳しい環境が
続くと予想されますし、そのような環境で
乗り切れる会社と、息切れする会社とに
分かれてくるものと思います。

不動産会社の場合、その業態から過小資本で
過大負債になりがちなため、環境の変化には
大きな影響を受けやすいです。
また、不動産会社は、通常、投資部分のハイリスク
ハイリターン部分を保有していることが多く
市況が好調な時は、莫大な利益を得ますが
反転した場合、大きな損失を被ります。
(ジェットコースターのアップダウンの
 ようなイメージです。)

不動産会社は、リスク管理をどのように、
しているかが、会社の命運を分けることに
なろうかと思います。

不動産鑑定価格の内訳額 続編

不動産鑑定での土地、建物の
内訳価格をどのようにするかという議論が
会計や税務にどれくらい影響するものか
検証してみます。

仮に土地・建物で10億円の不動産が
あったとします。
土地・建物の按分方法で、内訳価格が
変動するとしても、せいぜい、4:6が
6:4に逆転する程度だと思います。
(1:9が、9:1にまで逆転することは
ないと思います。)

であれば、建物価格が4億円になるか
6億円になるかということです。
消費税は、前者2000万円、後者3000万円で
1000万円の差が出ます。

減価償却費は、附属設備の耐用年数と
加重平均して、20年とすれば
4億円の場合、年間償却費2000万円と
6億円の場合、年間償却費3000万円と
1年で1000万円、20年間で2億円の
差が出ます。

更に法人税の影響では、税率を40%
とすれば、年間で400万円、20年間で8000万円の
差が発生します。

10億円の鑑定額で、その内訳価格を
どのように取るかで、上述のような
差が大きいのか、小さいのかは
人によって、違うと思いますが、
鑑定士が、鑑定評価の内訳価格を出される
際には、この程度の影響があることを
頭の片隅に置いておくことは
それなりに意味があることと思います。

CRE戦略を検討すべき企業とは

CRE戦略を検討すべき企業は、
どのような企業が多いでしょうか?

一般に、新興企業は、不動産を保有しておらず
賃借しているケースが多いと思います。
企業が成熟して、資金力がつけば、不動産を
保有する余力も出てくることと思います。

そのため、不動産を多く持つ企業は、ある程度業暦の
企業が、多いと考えられ、そのような企業が、
CRE戦略を検討する必要性が高いと思います。

企業と不動産とは、長い目で付き合って
いく必要があります。
一方で、不動産の時価会計導入により
リスク資産という認識も必要に、なってきています。
リスクに対しては、何らかの管理手法が必要かと
思います。また、不動産の金融商品化という
トレンドの基では、不動産の市場動向を、睨みながら
企業は行動する、又は対処することが必要ではない
でしょうか。

右肩上がりの土地神話は、もう起こらないでしょうから
不動産を利用して価値を生み出す努力が、
不動産を保有する企業としては、
より大切になっていると思います。

貧乏人の銭失いにならないためのCRE戦略

建物を取得した場合、その取得による
費用と比べて、数倍のライフサイクルコストを
要するといわれています。
ライフサイクルコストとは、建物完成から滅失
までに要する修繕費等のメンテナンスコストの
ことです。

この長期修繕計画を作成して、経営計画に
織り込むことが重要と考えています。
この必要なライフサイクルコストを、
惜しむと、後の修繕費が高くつき
結局のところ、損をすることとなります。

建物とは、長い付き合いをしなければ
ならないので、会計年度のような1年または数年
タームで物事を考えていると、かえって
支出が多くなってしまいます。

貧乏人の銭失いにならないような
長期修繕計画を立てることも、CRE戦略上は
大変重要なことと思います。

不動産時価会計での指標

不動産に対して、時価会計(減損会計、賃貸等不動産の時価評価)を
導入することにより、不動産の評価が、企業会計に与える影響が
大きいことは、ご承知の通りです。

そのため、不動産に関して、管理する指標なるものが
必要ではないかと思っております。
通常の営業活動については、損益分岐点売上高などで、損益管理を
していますが、不動産の場合、減損分岐点収益や(減損会計の
適用をうけるまでの)安全余裕率などの指標を、利用することで
保有する不動産の減損会計の可能性を管理することができるのでは
ないでしょうか。

また、賃貸等不動産の場合、賃料収入や不動産の市場価格が
損失計上となるか否かの基準となるため、損失計上分岐点賃料収入や
その推移、不動産の市場価格の現況と推移について
管理することが必要ではないでしょうか。

いずれにせよ、不動産の時価会計導入に対して
企業としての管理指標が必要なのは、CSR(企業の社会的責任)
の観点からも必要となってきていると思います。