4月 2010アーカイブ

事業仕訳と不動産鑑定

国家資格の中で、不動産鑑定士は
国や地方自治体等の公的部門から
仕事を受ける割合が、高い専門家
です。
 
今、行われている事業仕訳の第一段では
地価公示等の事業も、事業仕訳の
対象となりました。
結果は、少しの予算額の減額でしたが
厳しい国の財政事情の下では、
鑑定士の仕事に対する報酬も
カットの対象となっています。
 
このような現象は、鑑定士業界でも
脅威と捉えられています。
国や地方自治体の厳しい財政事情は
当分変わることはないでしょうから
予算額のカットが続けば、
公的部門からの受注のウエイトの
高い鑑定業者は、死活問題に
なりかえないと危機感を
募らせています。
 
不動産投資ファンドによる
鑑定需要も、減退し、鑑定業界では
将来見通しに、ますます
厳しい見方が、強くなっています。

不動産鑑定と相続税評価の違い

農地に住宅を建設する場合、農地法上の
許可が必要です。もし、許可を得ないで
建てた住宅は、不法住宅となります。
 
それでは、このような不法住宅を
第三者に売却するために、仲介業者に
依頼すれば、どのようになるでしょうか?
仲介業者は、不法行為に加担する
こととなるので、仲介業務を
断ってきます。
不法住宅は、市場性がない不動産なのです。
 
ところで、このような不動産を
鑑定評価すれば、どうなるでしょうか?
農地法の転用許可を得た不動産と比べて
許可を得ていない、不法住宅は
市場性が著しく低下するため
当然のように減額して鑑定評価額を
算出します。
 
では、このような不動産が相続された
場合の評価はどのようになるでしょうか?
農地法上の転用許可を得ている不動産よりも
評価が減額されるのでしょうか?
結論から言いますと、減額はされません。
なぜかと言いますと、農地法違反という
不法行為をした者に関する相続税が、
不法行為により減額され、
きちんと農地法の転用許可を得た者
より税負担が軽減されることは
不公平であるため、減額は出来ないという
こととなります。
 
これは、例えば法人が、違法行為による
罰金を払ったとして、それは法人の
経費としては認められないという考え方に
似ています。
もし、罰金を経費に認められれば、罰金を
払うようなことをすれと、税負担が軽く
なり不合理です。
 
不動産の鑑定評価の目線で、相続税での
評価をすると、思わぬ落とし穴があります。

M&Aでの土壌汚染ある不動産の評価

不動産を証券化する場合には
土壌汚染ある場合、その対象から
外れる。
少なくとも、汚染を除去してから
でないと証券化の対象とならない。
 
実務的には、土壌汚染ある不動産から
汚染を除去するまでに、作業を要するし
完全に除去されるまでどれくらい費用を
要するかは、簡単に判断できないので
証券化対象不動産から
除外されることが、通例である。
 
一方で、M&Aで、その対象企業が
保有する不動産に土壌汚染が含まれている
ケースがある。
M&Aでは、通常、『事業』が取引の
対象となるので、土壌汚染があっても
事業に直接差し支えなければ、
土壌汚染がある不動産を保有する企業が
取引の対象となりうる。
 
しかし、取引価格に土壌汚染は考慮
すべきであるが、どのように反映すべきでしょうか?
 
通常、除去業者より入手した土壌汚染除去
費用の見積もり額を、取引価格から控除します。
ただ、土壌汚染があれば、特に買い手側は
除去されても、心理的にマイナスイメージを
持っており、その部分をスティグマと
いいますが、控除することがあります。
 
このスティグマというものは、心理的な要素で
形成されるもののため、いくらであるかと
客観的に説明することは難しいでしょうが
土壌汚染費用控除後の土地価格の10%
程度が適当と考えられています。