6月 2008アーカイブ

コミングリングリスクとSPC

金融用語として、コミングリングリスク
という言葉があります。
これは、混合リスクという意味ですが
わかりやすく言えば、金融機関が融資した
資金で得た収益が、金融機関への元利金
返済ではなく、他のことに使われてしまう
リスクのことです。

金融機関は、融資判断の際、融資資金で
使われる資産等から得られるキュッシュフローを
判断のポイントとしています。
しかし、そのキャッシュフローが元利金返済
以外の目的で使われてしまえば
本末転倒のこととなってしまいます。

不動産証券化でのノンリコースローンでは
不動産のみを担保としているため
このように混合してしまうとスキームの
根本からゆるがすこととなります。

わざわざコストをかけてSPCを利用する
目的のひとつとして、コミングリング
リスクの回避というものがあります。
つまり、SPCを利用することで、不動産から
得られる資金を、まず、債権者への
元利金返済を優先させて、なお、残余が
ある場合は、投資家等へ返済させることで
コミングリングリスクを回避することが
できます。

通常のコーポレートローンの場合
不動産を抵当権として取っても
コミングリングリスクを回避することは
困難です。

これも、SPCを利用されるメリットの
ひとつとして、あげられると思います。

資産除去債務に関する会計

平成22年4月1日以降から開始する事業年度より
資産除去債務に関する会計基準が適用される
こととなりました。

不動産に関する会計については、次のことが
影響することと予想されます。
 ヾ覿箸保有する不動産にPCBがある場合
 その除去費用を債務として計上しなければ
 なりません。
◆‘瑛佑縫▲好戰好箸ある場合も
 その除去費用を債務として計上しなければ
 なりません。
 定期借地契約で、建物を建てている場合
 契約期間満了時には、建物を取り壊して
 原状回復させて、地主に返還する義務が
 あるので、その取り除く費用を
 債務として計上しなければなりません。
ぁ(殕する土地に土壌汚染がある場合
 汚染を除去しなければならなければ
 除去費用を債務として計上しなければ
 なりません。

以上だけでも、不動産に関する会計に
与えるインパクトは大きいと思います。

,裡丕達造砲弔い討蓮環境省にPCB保管
事業所と届けている事業所は、その計上義務があるものと
思います。

平成15年現在ですが、保管事業所を検索できます。
http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcbjigyo.php?yr=2003

△離▲好戰好箸蓮▲▲好戰好箸あれば全ての
企業が除去債務を計上しなければ、ならないかと
言えば、少し疑問があります。アスベストがあっても
屋根裏などで、封印されてあれば、解体等しなければ
実害はなく、除去債務を計上しなければならないのかなど
債務計上の基準については、難しいところが
あります。

づ攵躅??砲弔い討癲土壌汚染があったとしても
直ちに除去しなければならないものではないものも
あります。

また、不動産を流動化等してあれば
PCB,アスベスト、土壌汚染については
費用をかけて調査していますが、流動化や売却を
まったく検討していない不動産については
これらの調査をしていないことが
一般的と思います。
このようなリスク要因について
把握していない企業もたくさんあると思います。

まずは、企業の保有不動産について
これらのリスクがあるか調査することから
この会計基準への対処が、始まるものと
思います。

オフバランス判定の5%ルール、15%ルール

SPCを利用する場合、オリジネーター
(譲渡人)が、対象資産をオフバランスできるか
田舎の判定の際に、一定のルールがあります。

一般的なのが、5%ルールというものがあります。
5%ルールとは、譲渡人が譲渡した資産(不動産)の譲渡時の時価に
対して、譲渡後に負担するリスク(通常は、エクイティ額)
が、5%の範囲内であれば、オフバランスできるという
ものです。
(特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る
 譲渡人の会計処理に関する実務指針 H12.7.31
 日本公認会計士協会)

このルールは、明文化されたオフバランスルールです。

これ以外に、明文化されていませんが、SPCでの
オフバランス判定の共通認識となりつつあるのが
15%ルールというものです。

具体的には5%ルールを更に厳しく見たもので、
譲渡人が、SPCに資産(不動産)を譲渡して、譲渡人が
負担して良いリスクとは、エクイティ部分の
15%未満でなければならないというものです。
これは、SPCではなく通常の会社の場合、他の会社議決権の
15%以上を保有し、他の会社と重要な融資や契約など
していたら、他の会社は、関連会社として
持分(例えば、15%)相当額を、連結しなければ
ならないというルールから派生してきて
エクイティを議決権と見なして、譲渡人はエクイティの
15%を持っていれば、オフバランスできないという
ルールです。(明文化されていませんが。)

5%ルールは、明文化され運用に差があるケースは
ほとんどないと思いますが、15%ルールについては、
実務の世界での運用に大きな差があると感じています。
この点については、不動産ファンド会社から
疑問視されている言葉も、しばしば聞いております。

この点については、早く制度が整備されることが
望まれます。

不動産投資ファンドをCRE戦略の観点から検証

最近の不動産市場にも、大きな位置を占めるようになった
不動産投資ファンド会社が、組成する不動産投資ファンドを
CRE戦略の観点から検証してみる。

一般に、不動産を現物として購入する場合と
SPC等を組成して、購入する場合とでは、
コスト的には、SPCを利用する方が
高くなることが一般的です。
なぜなら、SPCを組成するにも、運営するにも
弁護士や会計士等の専門家報酬、アレンジ費用や
融資手数料等が別途必要に
なるからで、SPCを利用することによって
コーポレートローンより金利が低く
なったとしても、全体としては、コストアップ
となるからです。

であるならば、わざわざ、SPCを利用して
不動産投資することのメリットは、CRE戦略の
観点からは、ないのではということとなります。

結論としては、そうではなく、SPCを利用する
ことで、レンダー(金融機関)は、ファンド会社の
信用リスクを考慮せず、不動産の収益性だけを
もって融資判断でき、不動産ファンド会社が
SPCを利用しない場合より、多くのプロジェクトを
実行することが可能となります。

つまり、1物件あたりの収益額が小さくなっても
多くの物件をこなすことによって
収益額の絶対値をあげることが、SPC利用に
よって期待できます。

ここ5年から10年程度で、東京を中心に
急成長した不動産ファンド会社は
これらの手法を利用して、取り扱い不動産残高を
伸ばしてきました。

最近5年程度の不動産市況が、上昇した
局面では、投資額を増やすことで、レバレッジ効果も
期待できたことから、CRE戦略の観点から見ても
SPC等を利用した不動産投資に合理性は
あったと思います。

ゼロベースで考えるCRE戦略

不動産には、思い入れがあることが
多くあります。以前のブログでも、企業の場合
創業の地に対しては、愛着があるように
全てが、経済合理性のもとで、意思決定される
ものではありません。

そのような不動産と向き合って、企業経営に
活かすために、ゼロベースで、不動産を
見直すことが、CRE戦略の起点になるものと
思っています。

昨日のブログでは、数値分析の限界について
触れてみましたが、数値分析をすることが
無意味なのではなく、数値分析をすることで
見えてくるものは、経営に活かしていけば
良いものだと思います。

ゼロベースで、見直すことで、今まで
見えてこなかったものや、気がつかなかったことや
新しいアイデアが生まれてくるものだと
思います。
今までの既成観念にとらわれない為にも
全ての不動産を洗いなおす作業は、それなりに
有益だと思います。

CRE戦略での数値分析の限界

CRE戦略では、不動産のリスクを数値化するという
お話をしましたが、数値化による問題点もあります。

例えば、減損会計適用リスクに不動産が、どの程度にまで
接近しているかを検証するため、不動産毎に
収益性を計算したとします。
その結果、A不動産は、10%、B不動産は、5%
C不動産は、1%だったとします。
不動産保有企業の投下資本利益率が、3%とすれば
C不動産は、収益性を引き下げる物として、てこ入れを
するか、場合によっては売却も検討することとなります。

しかし、企業経営において、A不動産、B不動産、C不動産は
バラバラに存在しているのではなく、それぞれ
企業の数値に現れる収益だけでなく、様々な方面に
影響を与えています。

この例として、不動産ではありませんが、吉本興業という会社では、
タレントのテレビ出演による出演料収入や
キャラクターグッズの売上が、極めて収益性が高いのですが
なんばグランド花月などの、舞台での売上や収益性は
低いものだそうです。

だからといって、なんばグランド花月を閉鎖するようなことは
吉本興業はしません。
なぜなら、舞台というものは、芸人によって、生の観客に
触れる場所であり、テレビ出演しているタレントが
人気が落ちてくれば、舞台に出て、生の観客に触れることで
芸に磨きが入り、人気が回復することがあるからだそうです。

長い言い回しになりましたが、企業経営では、低採算
又は不採算でもしなければならない事業もあるという
ことです。
CRE戦略の過程で、リスク等を数値化しても、見えてくるものと
見えてこないものがあるのだと思います。

最近の不動産市況(レジデンシャル)

今月に入って事務所のポストに、大手
デベロッパーのマンションの値下げ広告が
入っていました。
不動産市況が、いよいよ下落傾向に
入ったと感じさせるものでした。

このように、誰でも目にするところにまで
値下げしたことが、わかるチラシが
入れば、これからマンションを購入しようとする
人は、もっと下がるのではないかと
思って、更に買い控えると思います。

大阪市内でも、最近では億ションと呼ばれる
高額のマンションも売り出されていましたが
これらは、本当に実需に基づくものか否か
わからないものもあると思います。

このような高額な物件から、価格は
しばらく下降するのではないかと
思います。
マンション販売は、当面苦戦が続くと
思いますが、体力のある業者とない業者とで
差が出てくると思います。

いつの世も、市場価格は、上下に波を打つように
上がったり、下がったりしながら変動して
いくものだと思います。
そのうねりに呑まれるか、乗り越えるかで
会社の力を試されているのかもしれません。

不動産有効活用とCRE戦略

CRE戦略は、不動産の有効活用だと
思っている方も多いかもしれませんが
有効活用と、CRE戦略とでは、目線が
少し異なると思います。

有効活用というのは、個々の不動産のみ
フォーカスを当てて、もっとも有効な
利用方法を検討することで、不動産鑑定で
いう最有効使用にもっていくということに
視点が似ていると思います。

一方で、CRE戦略とは、個々の不動産という
視点ではなく、企業全体から俯瞰して
そこから、各不動産の位置づけや
利用状況・形態、収益計上状況を
判定して、会社の戦略と不動産の利用方法を
関連付けていくということで
有効活用より、広い目線で検討する
ことになろうかと思う。

CRE戦略を実行するにあたっては、
有効活用のように、個々の不動産について
現況を調査することは、不可欠かと思いますが
集めたデータを、企業の保有または利用する
不動産毎に並べて、比較検討して、どのように
利用していくか戦略を練るというところが
有効活用では、しない作業であると
思います。

不動産全体を俯瞰するということが
有効活用とは、異なる大きな点であると
思います。

不動産保有リスクを明確にするCRE戦略

不動産を保有することは、時価会計の
導入によりリスクが高まっていることは
今までのブログでも、紹介してきました。

また、不動産を保有することを、上場会社の
場合、株主に説明責任を求められることも
出てきています。

これらに対応するためには、まず、不動産を
保有する会社は、リスクを数値化し
そのリスクに対して、どのように対応しているか
手順書等を作成することも必要でしょう。

さらに経営に活かすには、リスク数値の更新や
手順書のブラッシュアップも必要でしょう。

不動産保有リスクの数量化には、金融工学の
手法(バリューアットリスクや、モンテカルロ
シュミレーション等)も必要かもしれません。

今までの経験や勘だけでは、これらのリスクに
対応することは、難しくなってきていると
思います。

対外的説明のためのCRE戦略

不動産を保有する場合、土地神話の時代は
右肩上がりで地価が、高騰したため、含み損を
抱えることなど、考える必要はなかった。
しかし、土地価格は上がることもあれば
下がることもあるのであれば、それに対する
対処が必要なのでしょう。

会計上、不動産を時価評価する傾向にあるので
不動産を保有することによる会計リスクが
高まってきている。
それを、きっかけに、不動産を見直す気運が
高まってくると思います。

会計上のリスクがあるのであれば、対監査法人への
説明資料として、その管理状況について
手順書等を準備しておく必要もあるであろう。
また、上場会社であれば、株主への不動産保有に関して
説明責任も発生するであろう。
例えば、含み益ある不動産を有効活用していなければ
その理由について、説明を求められることもあるであろう。
典型例としては、阪神電鉄が、村上ファンドに
株を買い占められたとき、優良不動産の有効活用を
提案されたとも言われています。

逆に、含み損ある不動産であれば、それを保有する
理由についても説明を求められることも
あろうかと思います。

それらの説明資料や、管理資料を作成するにあたって
CRE戦略に基づく資料があれば、それは
有効なものでしょう。