9月 2010アーカイブ

不動産取引とM&A

不動産をSPCを利用して、投資するスキームは
ここ10年程度で、拡大し、定着してきました。
最近の不動産市況の低調さからSPC利用も
減ってきていますが、今後もある程度は
利用されると思います。SPCには、倒産隔離という
他ではできない機能があり、これは資金調達の
上で、必要不可欠となることが、今後も
生まれるようでしょうから。
 
ところで、不動産取引で、M&Aを利用するケースが
増えてきています。
具体的には、A社が保有している不動産をB社に
売却すれば、B社は不動産取得税等の税負担が
生まれます。
それを回避するため、A社が会社分割をして不動産のみを
取り出し、(これを、A’社とします。)、B社がA’社を
子会社化するか、合併することで、不動産取得税
負担を回避します。
 
つまり、不動産取引を、会社分割や、合併等を
利用して、組織取引に変えることで、流通コストを
抑えるという方法です。
会社法の改正で、柔軟な対応が可能となったため
今後もM&Aを利用した不動産取引も増えると
思います。

不動産業界の縁起かつぎ

不動産の売買日は、大安に
することが、好まれます。
今月で言えば、9月17日などです。
やはり縁起をかつぎたいためでしょう。
 
このように不動産業界では
縁起をかつぐケースがよくあります。
水曜日を定休日にしている
不動産業者が多いのは、水曜日の
水は、取引が水に流れてしまう
という縁起が悪いためです。
 
また、今だに資金決済で銀行振り込みを
利用しても、領収書の授受が根強く
残っています。
これは、かつて現金で資金決済して
いた時の名残と、不動産取引では
多額な資金が移動するため、その
証としての、領収書がほしいという
ためだと思います。
 
このほかにも沢山、縁起を担ぐ
ことや、風習があると思います。
不動産業界には、他業界にない
独特のものがあります。

仲介業者に支払う手数料

宅建業法により、賃貸物件の
テナントを仲介した業者に
支払う手数料は、賃料の1ヶ月を
上限とするルールがあります。
 
テナント(入居者)と所有者(大家)から
受取る手数料の合計が、1ヶ月を
超えてはならないと定められています。
ただし、テナント募集に要した
実費については、手数料とは別に
請求することが出来ます。
 
そのため、所有者(大家:SPC)では
入居者が新たに入った場合
実費として、仲介業者に広告宣伝費を支払う
ケースがあります。
これは、先述の
宅建業法の制約から、広告宣伝費として
(実質的にも、テナント募集に、仲介業者は
広告宣伝費を使っていますが)
仲介業者に支払うものです。
 
最近では、テナント募集が困難なこともあり
広告宣伝費以外の貸室保証料という名目で
大家(SPC)から仲介業者に、手数料が
支払われるケースがあります。
 
貸室保証料をその文言通りに読めば
入居者が、入居後、賃料を滞納した場合
賃料を保証する保証料に相当するもの
ですが、敷金を差入れている入居者であれば
賃料を滞納しても、回収できる可能性は
高く、保証債務を履行するケースは少ないと
思います。
 
テナント募集が難しいこの世の中では
テナントを集めてくれる仲介業者に支払う
手数料も膨らんできています。
その分、投資家の利回りは、低下している
こととなります。
 
 

不良債権処理型の証券化

景気のいい頃は、新たに土地を
購入して、そこに新築の建物を
建てる『開発型』の証券化案件が
多く組成されました。
 
最近のように景気が悪く、新たに
建物を建設するような環境では
なくなると、開発型証券化案件は
めっきり生まれてこなくなります。
 
こんなご時世では、不良債権処理型の
証券化案件が、増えてくる気配があります。
後ろ向きな案件というイメージが
ありますが、これも証券化スキームの
倒産隔離等の基本的な機能を発揮する
証券化ビジネスの活躍する場面でも
あります。
 
ただし、不良債権処理型の証券化案件は
不良債権に至るまでに、無理をしている
ことや、関係プレイヤーに悪い影響を
与えているケースが多いので、
会計事務所として、このような案件を
受託する際には、無理をしていることや
過去に与えた悪い影響が、こちらに
飛び火してこないか、十分見極める
ことも重要です。