6月 2022アーカイブ

特定目的会社の配当の損金処理(匿名組合スキームとの違い)

特定目的会社(以下、TMK)も、匿名組合スキーム(以下、GKーTK)を
使う会社と同様に、利益の大半を分配する『導管性』の機能がありますが、
GK-TKとTMKでは、仕組みや損失の扱いに違いがありますので、
今回はその点をご説明いたします。

①TMKは、申告書作成時に配当金が減算される。
 GK-TKの場合は、獲得した利益の大半を
 会計期間終了時に分配金として、出資者に分配しますので、
 税引前当期純利益が、ちょうど法人税等を支払える程度の
 少額になります。➡パススルー制度

 対してTMKは、決算書上の税引前当期純利益は、
 通常の株式会社と同じように計算した利益が計上されます。
 その後、社員総会(株式会社での株主総会)時に、配当額が決定されます。
 そして、税務申告書作成時に別表10(8)を作成し、
 課税所得から減算できる配当金額を計算します。
 (通常は、減算可能な範囲で配当を行う)
 通常の会社では出来ないことですが、TMKの配当金は
 損金算入されます。
 ➡ペイスルー制度

②TMKは、損失の分配はできない。
 以前、「匿名組合の損益分配」でご説明したように、
 GK-TKは、損失の分配をすることもできますが、
 TMKは、利益の配当しかすることができません。
 また、繰越損失がある場合は、
 今期の利益から繰越損失の額を控除した額しか配当することができません。
 (GK-TKは、損失も分配(➡パススルー)しますので、
 基本的には繰越損失は発生しません)

 なお、TMKは資本金が1億円超でも大会社のような
 繰越損失の利用制限はありません。
 

TMKの方が納税額(均等割)が多くなる傾向がある。

 TMKでも、GK-TKでも、投資家から資金を集めますが、
 匿名組合出資という形での出資を受けるGK-TKと違い、
 TMKは、投資家からの出資金は、資本金となりますので、
 利益の額にかかわらず、資本金の大きさによりかかってくる
 均等割の額が大きくなってしまうため、
 少額の納税で済むGK-TKに比べると
 TMKの納税額は大きくなる傾向にあります。
 
 なお、TMKは、資本金が1億円以上でも、外形標準課税はされません。

 今回は、TMKの配当を
 GK-TKの分配金との違いという観点でご説明いたしました。
 機会があれば、TMKの配当が非課税になる条件などについても
 いずれお話しします。


内容TMKGK-TK
導管性ペイスルーパススルー
繰越損失翌期利益から全額控除可基本的に発生しない
法人税等多額になる傾向最低額で収まるケースが大半

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GK-TKでの営業者報酬とは

GK-TKスキームでは、匿名組合(TK)契約で
営業者報酬という項目が出てきます。
この営業者報酬とは、匿名組合の経理で
匿名組合が、営業者(=GKの内部 部門)に
支払う一定の金額です。

GK全体の決算書では、営業者報酬は
TK部門と営業者部門の合算で、相殺され
表示されることはありませんが、TK決算書では
営業者報酬というものが、費用項目として
出てきます。

この営業者報酬とは、何の報酬かと言えば
匿名組合を維持するため、税務申告等をする
営業者に対して、支払う報酬です。

一般的には、年間15万円程度にしているケースが
大半です。

営業者報酬の水準が高いと、TK部門の利益が圧縮され
TK出資者へ付け替えられる利益相当額(=パススルー額)が
小さくなり、GK全体に残る利益は大きくなります。

そのため、営業者報酬を、必要以上に高くすると
GK(=SPC)の利益増えるため、法人税負担が増加します。

営業者報酬は、いくらくらいが適当かと言えば
年間15~20万円程度が適当と思います。

今まで、弊事務所が経験した案件では、『営業者報酬は
法人税相当額』というものがありました。
営業者報酬が決まれば、分配利益、引いては税前利益が
確定します。『営業者法主が法人税相当額』では
法人税額も決めることが出来ず、永遠に決算作業が
終わらないようにも思えます。

このようなケースでは、営業者報酬と法人税額が
ほぼ、一致するような水準に決めて、TK決算を
組むようにしました。

通常、営業者用の銀行口座を開設し、営業者口座は
匿名組合部門から営業者報酬を受取、資金年の入金を受け
法人税を営業者口座から、納付します。

一方で、GK内に、営業者口座を設けていない案件も
あります。このような案件では、営業者と匿名組合との
区分が曖昧なものが多い印象です。

営業者報酬は、GK-TKスキームでの独特の
取引で、GK全体の決算書では、出てこない項目で
GK-TKスキームでの独特の、取引かと思います。

ただ、営業者報酬は、営業者という考え方が
GK-TKスキームを理解する上では、大切な
ものの1つです。

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太陽光発電事業者への出力制御

顧問先のSPCは、関東地方において太陽光発電所を
運営しています。

先日、東京電力パワーグリッド(株)より、出力制御に
関する案内書類が届きました。

2021年4月より電気事業者による再生可能エネルギーの
調達に関する特別措置法施行規則が一部改正された事に
伴い、固定価格買取制度(※FIT)電源においても、発電出力の
制御を行うという趣旨の内容でした。

認定出力が500KW以上の太陽光発電設備のFIT電源に
ついては、供給量が需要量を上回るような、出力制御が
必要とされる場合には、東京電力パワーグリッド(株)からの
連絡に基づき、現地にて停止・発電の操作を行います。

出力制限には、優先給電ルールが決められており、
火力発電→バイオマス発電→太陽光・風力発電→
水力・原子力・地熱発電の順となっています。

今のところ、東京電力管内での実施時期は、未定ですが、
実施に向け、発電事業者が体制を整えるための準備期間と
なっています。
この出力制御ですが、九州電力では既に2018年に日本で
初めて実施されています。

東京都は、大手住宅メーカーに対し新築住宅への
太陽光発電義務化を検討していることが物議を醸しており、
最近の電力不足事情とは、相容れない政策とも思えます。

※FIT
経済産業省が2012年に開始した再生可能エネルギーの
「固定価格買取制度」。一定期間の価格が保証されているので、
事業者が新規に参入しやすい環境をつくる為に導入。

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