9月 2008アーカイブ

企業価値評価と不動産鑑定評価

不動産鑑定において
鑑定評価額を決定する際には、
その不動産の典型的需要者を想定し
その需要者が、何をメルクマールとして
価格を決定するかを検討して
鑑定評価額を決定します。

例えば、戸建住宅であれば
取引相場価格が、メルクマールに
なるであろから、取引事例より
求めた価格(比準価格といいます)を
重視して、鑑定評価額を決定し

賃貸用マンションであれば
賃貸収益がメルクマールに
なるであろうから、DCF法価格や
収益還元価格から求めた価格
(収益価格といいます)を重視
して、鑑定評価額を決定します。

ところで、M&Aの際に、企業価値評価を
行いますが、企業が保有する
不動産を評価するときに
鑑定評価額を利用することも
あろうかと思います。

M&A対象企業の不動産の典型的
需要者と、実際のM&Aを仕掛ける
企業の不動産の利用目的が
異なることもあります。

また、M&Aによるシナジー効果
を鑑定評価に織り込むことは
困難だと思います。
そのため、M&Aでの企業価値評価において
不動産鑑定評価額をそのまま
利用できないことも
あります。

CRE戦略の手順

CRE戦略(企業の不動産戦略)に
ついて、新聞や書籍で頻繁に
取り上げられていますが、そのプロセスは
次のようになります。

1.現状分析
現状の不動産の利用状況、管理体制に
ついて調査分析します。

2.問題提起
1を基に、問題点をピックアップ
します。

3.戦略設定
企業の戦略と不動産戦略との整合性
や関連性について、検証し
方向性を決めます。

4.戦略行動
実際に不動産を処分したり
購入する場合は、資金移動を
伴うものとなります。
財務活動と連携をとりながら
実際の行動を開始します。
その際のポイントは、企業価値を
最大化するための行動と
なります。

中間法人法が廃止されます

今年の12月1日より中間法人法が
廃止されます。
それに変わるものとして、『一般社団・財団法』
施行による『一般社団法人』を倒産隔離のため
利用することとなります。

いままでの有限責任中間法人と比べて
一般社団法人は、次の点が異なります。
(主な項目のみです。)

 ヾ道?寮瀉屬蓮任意となります。
◆ヾ雍盖鮟个虜把祿300万円の制度はなくなります。

などです。

 …蟯召稜Ь擇必要
◆〕?2年 監事4年の任期

などは変更ありません。
既存の有限責任中間法人は、
登記上『一般社団法人』に
当然に変更されます。
(例えば、登記上 有限責任中間法人ABCは
 一般社団法人ABCへ変更となる。)

なお、有限責任中間法人の定款は
法人名変更のため、変更手続きが
必要で、平成20年12月1日以降
終了する事業年度末の定時総会までに
変更が必要です。

法人名称変更に伴う定款変更により
法人名称変更の登記も必要となります。

これを怠ると、20万円以下の
過料が科せられます。
ストラクチャー上では
中間法人の定款変更には
レンダー等の承認が、必要でしたら
その手続きも必要となります。

不動産の本当の大きさは

不動産の不可解な点として
1物4価など言われるような
公示価格、路線価、固定資産税評価
鑑定評価、実勢価格と
1つの不動産に複数の価格があることが
挙げられます。

それだけでなく、不動産の面積について
も、同一の不動産で、複数の
面積が表示されることがあります。

不動産鑑定において、面積を確定する
ことは、評価額を確定するにあたって
必須となりますので、神経を使います。

たとえば、マンションの場合
登記上の面積と、広告等で表示される
専有面積とはことなります。
登記上は、壁の内側で面積測定するに
対して、広告等では、壁の中心から
面積測定するので、広告等での
専有面積は、登記上の面積より
大きく表示されています。

また、土地面積でも、登記上の面積と
実測面積では、異なることがあります
(いわゆる 縄伸び、縄縮み)
建物面積は、登記上の面積と
建築確認書に記載される面積や
容積率算定での面積では、異なって
おります。

土地価格相場や賃料水準を言うときには
通常、坪単価ベースでいうことが
一般的ですが、公示価格等の公的評価
では、崔渦舛派充┐気譴討い泙后

このような、不動産数量に
関する複雑さが、不動産取引において、
比較可能性を難しくしている
要因の一つと思います。

不動産保有リスク管理のためのCRE戦略

不動産価格は、過去のように
右肩上がりは期待できないので
企業は、不動産保有に関する
リスクを十分認識していくことが
必要です。

不動産を保有することで発生する
リスクには、市場価格が変動する
ことによる含み損の発生するリスクの
他に、不動産固有のリスクがあります。

例えば、土地について、過去の地歴から
土壌が汚染しているリスク
建物の使用材料にアスベストを
利用していたから、その除去費用発生
リスク、PCBを保管しており
その除去費用発生リスクなどが
あります。

リスクとは別に機会費用が発生
していることもあります。
つまり、有効に活用すれば
収益を生む不動産を持っているにも
かかわらず、放置しているケースなど
です。

このように、不動産を保有する企業は
そのリスクを理解し、対処する手段を
持っておく必要性が高くなっております。

SPCにしておいて良かった

最近、不動産ファンド(SPC)を
使って、不動産投資をしていた会社が
次々と破たんしましたが、
これらの会社が、SPCを使っていた場合と
SPCを使っていなかった場合とを
比較したら、どのようになるでしょうか?

通常、金融機関への融資は、ノンリコース
ローン(NRL)といって、SPCが保有する不動産に
ついてのみ遡及できる(責任財産限定
特約というものがあります。)建付けと
なっています。
また、倒産隔離措置が取られ、不動産投資
会社が破綻しても、SPC投資スキームが
直ちに破たんしない仕組みに
しています。
不動産投資会社が、破綻しても
SPCスキームは、直ちに停止せず、
保有する不動産を、通常の売却活動を
通じて、売却することができます。

金融機関は、責任財産しか遡及できないため
不動産の売却が確定すれば、ローンの
返済も確定するので、売却も
スムーズに進むことでしょう。
(他に取れる資産がないので、
 あがきようがないので)

一方で、従来のSPCを利用しない
コーポレートローンでは、
不動産投資会社が破たんすれば、
担保として取っている不動産は
法的(倒産)手続きの上で
売却されるので、迅速な売却は、困難です。

また、責任財産限定特約がないため
金融機関は、担保不動産以外も
遡及することができるので
金融機関が、ギリギリの交渉をすれば
担保処分も進まないことも
考えられます。

バブル経済崩壊後、不良債権処理が
進まなかった要因として、
担保不動産の処理が進まなかったこと
や、代表者の保証があるため、法的整理に
入ることに大きな抵抗があったことが
挙げられますが、SPCを利用した
資金調達では、これらの短所を
カバーしていると思います。

金融機関の中には、今回の
不動産投資会社の破たんがあっても
SPCに資金提供していたため、救われた
部分もあると思います。

不動産価格の硬直性

不動産と有価証券(上場株式をイメージ)を
比較した場合、似ているところと、異なる
ところがある。

まず、似ているところとしては、両者とも
価格は、需要と供給という市場によって
決まるというところである。また、市場について
誰も支配できず、アダムスミス(?)の
見えざる手によって、支配されているものである。
市場価格は、神のみぞ知るものなのである。

価格の下落または上昇トレンドは
人が決めるのではなく、見えざる手が
決めるものである。
不動産会社や有価証券運用会社は
このような市場原理に、従わなければなりません。

一方、両者の決定的な違いとしては
有価証券の場合、日々価格が変動し
その動きを知ることができるが
不動産の場合、その指標となるインデックス
(民間が公表するものを除きます。)が
整備されておらず、価格の変動を
日々知ることができないところにある。

一般には、地価公示や都道府県地価調査、路線価に
よって価格の変動をしることができても
いずれも1年に1回の公表のため、日々とまで
言わなくても、公表される価格と
実際取引される時点では、ズレが生じることは
避けられない。

このように不動産価格に、毎月ペースでも
公表される、インデックス(民間が公表する
インデックスは除きます。)がないことが、
不動産の取引価格に、市場実態を
反映するまで時間を要し、価格調整がスムーズに
進まないという弱点があります。

そのため、ある日突然、価格が暴落したり
下落トレンドが、長期に続いたりする
傾向があります。

この他に、不動産の場合、価格を決める
要因が複雑なため、単純に価格を比較する
ことが難しいところがあります。
これは、不動産と有価証券との根本的な
性質の違いなので、その差を埋めることは
難しいものと思います。

間もなく中間期末を迎えます

間もなく、中間期末を迎えます。
今までの経験では、3月末付近
9月末付近という節目を迎える頃には
急な仕事が、入ることが、たびたび
あります。今回もそのように
なりそうです。

各社が決算を迎えるので
それに合わせて、取引を一区切り
しようとすることは、当然の
ことでしょう。

会計監査をしている頃は、会社が
経理処理をしたものを検証することが
仕事なので、中間又は本決算を迎えた後の、
4~5月、10~11月が繁忙期
でしたが、今のようにストラクチャーズド
ファイナンスの仕事をしていますと
取引が発生する期末付近が、忙しくなります。

取引があった後の経理処理を検証することが
会計監査という仕事で、
これから取引しようとするところをサポートする
ことが、ストラクチャーズドファイナンスの
仕事ということが、大きな違いだと思います。

会計監査をされている会計士さんと
私とでは、時間軸も異なります。
どちらの仕事が合うか合わないかは
その人の好みにもよると思います。

フィービジネスのCREビジネス

不動産市場が、低迷している昨今
フィービジネスへ注力するプレイヤーが
増えています。
CRE戦略のコンサルティングも
その一例かと思います。

CRE戦略については、国土交通省から
ガイドラインが作成され、
不動産に関する会計も『賃貸等不動産の
時価会計』や『資産除去債務の計上』により
リスク資産として認識せざるを得なくなり
リスク管理の手法としてのCRE戦略のコンサルティング
ニーズも、高まっていると思います。

ここ10年ほどで、不動産の金融商品化
などに不動産をとりまく環境は、大きく
変わりました。具体的には、評価の
手法や、資金調達方法、売買形態などが
変貌し、手法も増えたことは、間違い
ありません。

不動産会社の中には、今まで得た経験を
基にCREの専門部署を
設けて活動しているところもあり
動きも活発になっていると感じています。

少し、意地悪な見方をすれば、
不動産の動きが低調なため、CREという
言葉を利用して、不動産を動かそうとする
意図があるのではとも見えます。

サブプライムローンの影響により
不動産証券化やファンドという言葉に
対するアレルギーや、聞きなれすぎた
ため、CREという別の切り口で
不動産の営業をかけているとも見えます。

昨年か今年にかけて
不動産投資からは退いて、フィービジネスに
転じている会社もあります。

今は、フィービジネスに転じて
じっと我慢の時期なのでしょうか?

今時の不動産投資家

不動産価格の下落傾向が、明らかとなり
不動産取引熱もさめてしまい、
証券化案件の組成も少なくなりそうです。

とはいっても、不動産投資会社や
AM会社、アレンジメント会社は、案件組成
をしなければ、業績もあがらず、
なんとかしなければなりません。

このような市場環境では、従来のような
1年から数年程度の短期間で、利益を
得るようなファンドでは、投資家は
みつかりにくいでしょう。

先日の日経新聞にも、掲載されていましたが
私どもの事務所の取引先である
ケネディクスさんは、保有不動産を
ドイツの長期投資家に対して、売却
されたようです。(2008年8月28日付 リリース情報より)
http://www.kenedix.com/

じっくり腰を据えて、投資できる投資家を
みなが探しているようです。