2月 2009アーカイブ

税理士と不動産鑑定士の違い(縄張り意識)

今回は、税理士と不動産鑑定士の違いを
業界の『縄張り意識』という観点から
比較してみます。

税理士界に入会してから、研修会に
参加すれば、頻繁に聞く言葉があります。
それは、『税理士の無償独占』という
言葉です。
『無償独占』とは、税務相談等の税理士業務を
例え、無償で行うとしても、それは
税理士免許がなければ、税理士法違反に
なりますよという意味です。
具体的には、銀行が無料税務相談会を
開くとしても、その講師は、税理士で
なければならず、税理士免許を持たない
銀行員がすることは、いけませんよという
ことです。
この無償独占という制度は、税理士業務の
縄張りを強固にしているものです。

一方、不動産鑑定士の業務はどうでしょうか?
不動産鑑定士の業務である不動産評価は
誰が行っているでしょうか?
不動産業務を業務として有償で行うには
不動産鑑定士の資格が必要ですが
無償であれば、例えば、不動産仲介会社等が
「あなたの保有不動産を、無料査定します。」
というような広告文書なら頻繁に
見ることがあるように、税理士の『無償独占』
制度はありません。
この無償独占の有無だけで、業界の縄張り
意識の大きな差を感じます。

金融庁によるモニタリング

今月上旬に、金融庁から
適格機関投資家等特例業務等の
届出をしているSPCを対象に
1法人あたりCD2枚が、送られてきました。

CDにあるマニュアルをプリントアウトして
設定作業を読んでいきました。

2月27日までに、設定作業を終え、その旨を
金融庁に報告する。

   ↓

設定作業が終われば、金融庁から
パスワードが発行される。

   ↓

パスワードをもって、金融庁の
サイトにログインし、サイトを通じて
直接、金融庁からの質問に答える。

質問は概ね1年に1回行われ、金融庁としては
継続的にモニタリングをしていきたいのだと
思います。

今回は、1番目の設定までの作業を
2月27日までにして下さいと言って
いるもので、金融庁のデータのやりとりで
情報漏洩を防止するため、送信するデータを
暗号化設定する作業でした。
3月末までを目途に、パスワードが送られてきて
金融庁によるモニタリングが
開始する見込みです。

税務の世界でも、e-taxといって
電子申告が、徐々に浸透しつつあります。
今回の金融庁への報告も電子データで
報告する形式をとっています。
e-taxは、必ずしも義務でなはく
従来通り、紙ベースで申告することも
可能ですが、
金融庁への報告は、紙ベースでは
受け付けてくれません。
恐らく、ファンド関係の仕事をして
いる方々は、パソコンの使い方には
慣れており、今回のような電子データによる
報告には、十分対応できると判断された
からなのでしょう。

公認会計士という生き物

最近の不動産関係会社の
破綻により、不動産関係の
会社に対して、会計監査を
担当する会計士は、厳しい態度で
望んでいるケースが多くなっていると
思います。

昨年の監査法人のドラマでもありました
ように「監査の厳格化」を
肌身を持って、感じられている方も
多いかと思います。

そこで、公認会計士という人種について
ついて、少し解説したいと思います。
通常、公認会計士の資格を取得するには
勉強を始めてから5年程度要します。
最近では、試験制度が改正されて
2~3年程度で取得できるように
なりましたが、今、第一線で、活躍
されている会計士は5年程度の月日を
要しているものと思います。

会計監査とは、成功することが当たり前で
失敗することは、許されない仕事という側面が
あります。
具体的には、会計士が、
適正と意見表明した監査証明を発行して
その会社が、その後も順調に運営して
いくのが当たり前と見られ、
反対に適正と監査証明を出しても
その直後に、会社が破たんすると
キチンと監査をしていたかと問われ、
もし粉飾決算でもあろうものなら
厳しい批判を受け、場合によっては
資格停止処分を受けることとなります。

このように、会計士は今まで自分が
築きあげてきたものを、1つの監査証明で
全て失うことを、非常に嫌います。
つまり、10の成功を得るよりも
1つの失敗を恐れる生き物なのです。

通常の事業会社の場合、2つ失敗しても
3つ成功すれば、良いとか
10の失敗をしても、1つの大成功が
あれば、それでカバー出来るという
感覚があると思いますが、その感覚は
会計士には、あてはまらないものと
理解していただければと、思います。

かんぽの宿の不動産鑑定

かんぽの宿の不動産鑑定が
固定資産税評価の7分の1との
報道があります。
通常、固定資産税評価額は
土地の場合、正常な地価とされる
公示価格の70%程度としており
固定資産税の7分の1の評価は
きわめて低いものと想像できます。

なぜこのような低い鑑定評価額が
算出されたかと言えば、
報道によれば、かんぽの宿の
収益をベースとして、鑑定評価額を
算出したとのことです。
もう少し、突っ込んで解説しますと
非効率な経営をしていたであろう
かんぽの宿の収益をベースとして
鑑定評価額を算出したため
一般的な市場価格より
極めて低い鑑定評価額が、算出された
ということと思われます。

本来の鑑定評価の作業に
おいて、収益から評価額を算出する場合
標準的な経営を想定して、その収益から
評価額を算出することとなります。
この標準的な経営とは、どのような
ものかは、実務的には非常に
難しいものですが、1人あたり
人件費を1000万円程度支給していたような
かんぽの宿の場合、適正な人件費レベルに
置き換える必要があったでしょう。

今回の鑑定評価書は、いろいろな
意味で注目されることは間違いありません。
今回の事件で、あまりなじみのない不動産鑑定
という言葉が、みなさんに触れる機会を
得ました。

税務支援制度

税理士登録をすれば、この時期には
税務支援業務を、しなければなりません。
税務支援制度とは、この時期になれば
税務署、商工会議所、駅前の会議室等で
確定申告の受付または申告書の記入指導等を
行っています。
税理士が、それをサポートしなければ
ならないという制度です。

日当は、2万円/日程度で、税理士としての
経歴等は全く考慮されず、一律です。
私のように大阪市の東税務署管内に
所属する税理士は、管内で、確定申告の
記入指導等の会場はないので、他の会場へ
赴きます。

ちなみに、私は例年宝塚市内の会場に
行っております。
来られる申告書は、だいたい決まっていて
年金生活者が、昨年の医療費が多かったため
還付申告をするケース、
給与所得者が、昨年住宅を購入したため
住宅ローン控除を受けるケース
などです。

最近では、会場にパソコンが設置され、
作業が随分スムーズに進むようになりました。
先日、私が行った会場では、1日に1000人程度の
方が来られたようで、税務署職員15名程度
税理士13名程度、それ以外に納税協会や
アルバイトの方たちを合わせて、50名程度で
作業をしておりました。

パソコン設置の影響で、1人あたり申告者に
かける時間を短縮できたのか、
支援する税理士側の負担も楽になったと
思います。
このような傾向は、来年以降も続きそうです。

不動産鑑定士制度の特徴

不動産鑑定士の修了考査が
終わりました。
不動産鑑定士制度と他の士業との
違いについて、触れてみたいと
思います。

私が、不動産鑑定士試験の行政法規を
勉強して驚いたことは、不動産鑑定
業者は、株式会社でもOKであることです。
業者登録の手続きは、宅建免許と
かなり似ています。
これが、不動産鑑定士と他の国家資格とは
決定的に異なる点です。

士業で、法人が業務を受けるのであれば
会計士なら監査法人、
税理士なら税理士法人
弁護士なら弁護士法人
行政書士なら行政書士法人
など、それぞれの資格に応じた法人が
用意されています。
これが、国家資格保有者と
一般事業会社との違いであり
客観的に見て、独立性を確保して
いるものです。

しかし、不動産鑑定士は
株式会社でも業務ができるので
例えば、上場会社(主に、信託銀行
不動産会社)の中に
鑑定部門を持っているところも
あります。
ところが、鑑定報酬は
上場会社の収益レベルから見れば
決して高いものではなく
信託銀行や不動産会社は
鑑定部門ももっているという
アピールのため、鑑定部門を
構えていることもあろうかと
思います。

本来なら鑑定士の独立性を前面に
出すのであれば、株式会社ではなく
不動産鑑定法人のようなもので
なければ、法人として業務が
できないような法整備も
必要であるかと思います。

不動産鑑定士試験と公認会計士試験のちがい

昨日、東京で不動産鑑定士試験の
口頭試問を受けてきました。
かつて、公認会計士試験の
口述試験を平成9年に受けましたが
両者を比較して見たいと思います。

まず、試験の名称が、不動産鑑定士では
口頭試問、会計士では口述試験と
異なります。それぞれの試験の持つ意味が
異なるということでしょう。

次に合格率ですが、不動産鑑定士では
80%程度、会計士は98%(だったと記憶しています。)
です。不動産鑑定士の方が厳しいです。

試験官ですが、不動産鑑定士は、ベテランの
鑑定士のみだと思います。
諮問の内容が、実務修習期間に提出した
鑑定実務報告書に関することですから
鑑定士が担当することとなります。
会計士の場合は、ベテランの会計士のほか
大手企業の経理・財務責任者(公認会計士
資格保持者ではありません)や
大学の会計に関する先生などとバラエティに
富んでました。

試験を受ける時では、鑑定士の場合は
1回に3名の試験官が出てこられて、その部屋のみで
行われますが、会計士の場合は
たしか1部屋2名の試験官がいて、4部屋くらい
順番に回って行ったと思います。

試験全体の印象としては、会計士試験での
口述試験は、合格率が高いこともあり
セレモニー的なものがありますが、鑑定士
試験では、合格率が会計士よりも低いことも
あり受験生も、直前まで自分の提出した
報告書や関係資料を読み返す作業を
怠りなくするなど、試験であるというムードが
あります。

そういうこともあり、試験の雰囲気は、
鑑定士試験の方が、ピリピリしています。
私も、昨日は大変緊張しました。

鑑定士試験の口頭試問を受けられる方は
日本全国でも、今年は300名程度の
マイナーなお話でしたが、関係の方々には
参考になればと思います。