7月 2009アーカイブ

賃貸等不動産の時価開示のインパクト

先週、東京でCRE戦略のセミナーを
受講してきました。
そこでは、今後予定されている
賃貸等不動産等の時価開示に
合わせて、企業のCRE戦略を
見直しましょうとの話が、ありました。

賃貸等不動産の時価開示は、
今までも取り上げて来ましたが
概略を言いますと、賃貸不動産及び
遊休不動産の時価とその不動産の
損益を注記で開示するということで
会計処理を伴うものではなく
あくまで開示ということで、かつて
有価証券の時価情報という
ものが、有価証券報告書で
注記として開示されていたものに
似ている感があります。

この開示によって、賃貸等不動産の
時価と損益が明らかになり
その不動産の収益性が、明らかに
なります。
つまり、企業が保有する賃貸等
不動産をどの程度、収益性という
観点から効率的に利用しているか
開示されることとなります。

ですから、高い時価の不動産を
低い収益しか上げていなければ
株主からは、もっと収益をあげるか
売却するか追及される可能性が
でてきました。
企業は、保有する不動産の収益性に
眼を向けざるを得なくなるという
ことです。
そこでのセミナーは、不動産会社が
主催しており、最終的には
不動産戦略の見直し、引いては
売買等の仲介業務をされたいということが
最終目的であったと思います。

セミナー開催の趣旨は、別に
賃貸等不動産の時価開示は、
かつても村上ファンドが、阪神電鉄に
保有不動産の有効利用を提案してきた
ように、他の企業も、そのような
提案を受ける可能性が高まることは
間違いありません。

金融業と不動産業

不動産業者と金融機関との
関係は、切っても切れないほどの
深い関係があります。
不動産は、通常値が張るもののため
購入(投資)する時は、すべて
自己資金で、行うののではなく
銀行から借りた資金を一部使うことが
一般的であるからです。

よくよく金融業と不動産業を
比べてみるとよく似た側面が
あります。
これも、金融機関と不動産業者との
関係を深めている要因のひとつ
ではないかと思います。

それは、金融業も不動産業も
直接何か物を産み出すものではなく
金融業は、お金を取引先に供給して
不動産業は、不動産を取引先に
供給して、利用料や手数料、売買利益を
得て、利益を産んでいます。

つまり、金融機関はお金を、不動産業は
不動産をうまく流通させることが
使命であるということが、良く似た
ところではないでしょうか。

両者の関係は、経済環境によって
大きく変わり、今のような銀行の
融資が難しい時は、金融機関が
不動産業より優位に立ち、数年前の
ように、金融機関が貸出先を
懸命に探している時は、借手である
不動産業が相対的に、立場が
強くなります。

最近の監査法人の事情

私が、会計士試験を合格した
平成5年の試験合格者数は700名
程度でした。
しかし、最近では3000名の合格者を
出し、その数は、4倍になります。

最近の少子化傾向で、学生の数が
減っているにもかかわらず、合格者が
これほどにまで、多く出るという
ことは、会計士の裾野も広がった
のでしょう。

通常会計士試験に合格すれば、監査法人に
就職します。中でも大手監査法人は
その就職先の、大きな受け皿になって
います。
最近の合格者増により、大手監査法人の
従業員数も大きく膨れ上がりました。

昨年度(H21年3月期)までは、内部統制の
導入支援等の特需があり、新入従業員にも
仕事があったようですが、特需も
収まれば、仕事をする機会も減っている
ようです。

新入従業員にとって、実務経験を
重ねることは、キャリアアップのため
重要なことですが、今それが難しくなって
いることが、大手監査法人の
大きな悩みのひとつのようです。

極端な例では、1ヶ月間、仕事がなく
事務所に来て、パソコンを利用した
研修ばかり受けているようです。
監査法人は、空の人件費を払っており
その負担も大きくなっています。

そのしわ寄せが、パートナーといわれる
幹部層に跳ね返って、売上高のノルマが
従来より高くなっているようです。

次の特需が、国際会計基準の
導入時期として、そのまで、持たない
場合は、大手監査法人でもリストラを
することがあるかもしれません。

国や地方公共団体ほどCRE概念の導入を

平成初期のバブル経済の崩壊で
昭和末期から平成初期に、かけて
不動産投資をして、痛手を受けた
企業は破綻するか、生き延びても
不良資産として処理は、ほとんど
完了しています。

民間企業の場合、不良資産を
意味もなく、持ち続けることは
資本の原理により、困難であるため
です。

一方で、公共団体の場合、平成初期
バブルの頃の不良資産を、いまだに
保有していて、有効に活用されていない
ケースは、たくさんあります。
納税者である国民、県民又は市民から
見れば、税金で購入した不動産を
有効活用されず、本来であれば
得られる収益を得ずに、放置されている
ことになります。

これは、目に見えて税金が無駄に
使われているのではありませんが
経済用語でいう、機会費用が
発生していることとなります。

公共団体の場合、資本の原理が
働かないので、ひとつひとつの
意思決定が遅いということ
また、公共団体の破綻に実例としては
ありますが、民間企業に比べると
極めて、稀なことであるため
不良資産の処理がなかなか進んで
いないことが多くあります。

公共団体こそが、民間企業のように
CRE戦略の概念を導入して
保有不動産を国民、県民及び市民の
ために有効に活用するなり、
処分するなりを
考えるべきなのでしょう。

PREとCRE

CRE(企業の保有不動産)の対に
なることばとして、PRE(国や地方公共団体等が
保有する不動産)ということばがあります。

私どもの事務所でも、最近PREに関する
仕事をする機会があったので、PREに
ついて、感じたことをお伝えします。

CRE(企業が保有する不動産)は、その
企業が上場企業であるか、非上場
企業であるかを問わず、資本の原理が
働くため、採算の悪い不動産は、処分するか
有効利用することになります。

一方で、PREの場合、資本の原理が
働かないため、遊休不動産でも
放置されているケースが多くあります。
そういった意味では、潜在的に手を加えるべき
不動産は、CREよりPREの方がたくさん
あるのでしょう。

しかし、PREはCREと違って、営利性より
公共性や公益性を求められるため、
有効活用する方向性は、異なることでしょう。

これからは、地方公共団体も複式簿記の
貸借対照表や損益計算書を作成することから
遊休資産に対しては、従来とは異なった
目線で、見直されることが
予想されます。