10月 2008アーカイブ

不動産の典型的需要者

不動産鑑定の実務において
最後の鑑定評価額を決定する際
その不動産の、典型的な需要者を
想定し、その需要者は、何を
メルクマールとして、取引価格を
決定するかを検討し、最終的な
価格を決定します。

例えば、戸建住宅や分譲マンション
であれば、給与所得者の
個人等が想定され、個人は
通常 不動産相場価格を見て
取引価格を決定するので
取引事例から算出される価格に
重点をおいて、鑑定評価額を
決定します。

ところが、経済環境の変化により
典型的需要者が、変わることがあります。

昨年まででしたら、賃貸用の収益物件の場合
典型的需要者は、不動産投資ファンド等が
想定されましたが、昨今の金融環境の
変化により、不動産投資ファンドが
需要者とならないケースが増えてきております。

需要者の属性により資金調達能力も
異なるでしょうから、
鑑定評価額も変わってくることとなります。

不動産の金融商品化により、不動産市場に
資金が沢山入ってくることになりましたが
今は、その時と逆のことがおこっている
のでしょうか。

Jリートの破綻

昨日、Jリートが、初めて
破綻しました。
Jリートは、主に私募形式の
不動産ファンドの保有物件の
受け皿(買主)として、利用される
ことが、不動産ファンドの1つの
ビジネスモデルでありますが
それを揺るがす出来事です。

原所有者→不動産ファンド(開発、リーシング)
 →Jリート

上記が、ひとつのモデルです。

ですから、大手の不動産投資会社は
関連のJリートを1つ以上
持っていることが、一般的です。

Jリートの破綻を発表する
社長の顔を見て、感じたことですが
一般の事業会社の破綻発表と
異なり、たんたんとした
感じでした。

事業会社のように、事業に失敗
したというより、市場環境が急変して
破綻したと、思われているのかも
しれません。

1年前に、このように環境が
変わるとは、誰も予想できなかった
と思います。
不動産価格、株価ともに底値は
どこにあるのか、分からなくなって
います。

不動産開発は、難しくなっています。

今年度の初めころから
不動産開発が、急速に難しくなりました。
この要因は、土地価格の上昇
建築コストの上昇、
完成後の不動産需要者である
不動産投資ファンドやエンドユーザーの
需要の減退があげられます。

このことは、最近の地価上昇傾向や
建築単価の上昇
また、マンション等の販売の低迷など
市場のデータからも、その傾向が
はっきり出ています。

そのため、不動産鑑定評価実務でも
開発によって必要な支出と
売却して得る収入との差額である
開発利益は、縮小しています。

このような状態が永遠に
続くものではなく、時が経てば
土地価格が調整されたり、不動産投資
に資金が帰ってくるでしょうから、
それまで、待つことに
なります。

不動産市場は、株式相場や
商品相場などのように、短時間で
価格調整が進まないことが多く
環境が変わるまで、少しガマン
が必要です。

ガマンしている間に、
シビれて立ち上がれなくなると
いけないので、フィービジネスを
持つなどしてガマンしている間も
血液が、体中に回るように
しておかなければ
なりません。

底値は、どこか?

日経平均が、10,000円を割り込みました。
10,000円を割ったのは、久しぶりだと
思います。

株式相場も、不動産市場も、いずれも
価格は市場によって決まるものです。
その市場価格は、一定のトレンドを
持って、動いています。
そのトレンドを持って動く際には
ひとつの特徴があると思います。

例えば、今、市場価格が12とします。
10が理論的な価格とすれば、12の
価格が10に向かって下落していきます。

その時、10で下落トレンドが止まるかと
言えば、そうではありません。
例えば 8ぐらいまで、下がりきった
時点で、下落トレンドが止まります。

ですから、
市場価格が、理論値に達した時点で
落ち着くと思いがちですが、
実際のところは、そうではないことが
多いと思います。

株式市場関係者や不動産市場関係者で
底値は、どこだろうかと、考えている
方も多いと思いますが、恐らく
理論的な価格から更に、下がった時点が
底値になると思います。

ただ、理論値からどの程度下がった時点かは
神のみぞ知ることなのでしょう。

金融業は、虚業か?

金融機関の代表格である
銀行の業務は、預金者から
集めたお金を、事業会社等に
貸し付けて、利ざやを稼ぐ
ことです。
お金は、経済活動において
不可欠なものであるが
お金自体が、付加価値を
生むようなことはない。

だから、金融業は、製造業と
異なり虚業であるという
人もいる。
当たっていると思う。

サラリーマンの平均給与を
比較すると金融業と
それ以外を比較すれば
金融業が、高くなっています。

この10年間で金融機関も
世間からの厳しい批判を受け
給与水準も低くなったであろうが
それでも、平均よりは
高い水準にあります。

虚業といわれる側面もあるが
最近のサブプライム問題にも
あるように、金融危機が
起こると、経済活動が
停滞するように、金融機関は
経済社会での、重要な役割を
担っているのでしょう。

お金とは、人体の血液の
ようなもので、それが
うまく全体に行き届かないと
各機能が、停止してしまう
話を思い出しました。

不動産の周辺環境は変化するもの

不動産鑑定での現地調査において
対象地を含む近隣の状況を
見ることが、重要な作業の
ひとつです。
現地調査では、その地域の歴史を
垣間見ることができます。

例えば、古い工場や倉庫などが
建っている隣で、新築の高層
マンションが建っているような
ことがあります。
そこは、かつては、工場が
多くあった地域でしたが、中国などへの
生産拠点の移動などにより
工場が閉鎖され、その後に、マンションが
建設されるようになったと
推測されます。

このように、不動産の周辺環境は
年月をかけて変わっていくものです。
そして、この変化をいち早く掴むことが
不動産開発業者にとって大切な
ことなのでしょう。

かつては、ドーナツ化現象と言って
都心は仕事をするところで、
郊外に住宅を建てて、人口が
郊外にひろがり、都心の人口が少なく
なりました。最近では、その逆の
都心回帰といって
郊外にいた人が、都心に戻る傾向になって
います。

将来の人口分布がどのように
移行する予測することが、不動産開発の
ポイントになるのでしょう。

不動産の典型的需要者

不動産鑑定において
鑑定評価額を算定する際には
その不動産の典型的な需要者を
想定します。
その典型的な需要者は、時の
経過とともに変わっていきます。

戸建住宅の場合は、典型的な
需要者は個人などの居住目的の
者しか想定されませんが
最近まで、収益物件の需要者で
あった不動産投資ファンドは
金融情勢の変化により
需要者となるケースが、激減
していると思います。

ならば、典型的な需要者が
富裕層等の資産家に変わってきたならば
鑑定評価額の算定にも
影響すると思います。

富裕層であれば、投資規模も
小さくなるかと思いますし
需要量にも限界があるかと思います。

このように、不動産を取り巻く
経済情勢は、急速に変化しており
これに対応していくことも
不動産鑑定士の重要な役目であると
思います。