平成30年以降の広大地制度

来年(平成30年)1月1日より
広大地の制度が改正されます。
現在の広大地制度は、
①地積が大きく(三大都市圏は、500㎡以上、それ以外は1000㎡以上)
②宅地開発の際、開発道路が必要で
③マンション適地ではない
ことが条件です。
一方、平成30年以降は
①地積が大きく
普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区(路線価地図を見ればわかります。)
③容積率が400%を超えない(東京23区は300%を超えない)
という内容に改正されます。

従来は、開発道路の必要性や
マンション適地といった
あいまいな基準であり
適用されるか否かの判定には困る
ケースが多くありましたが
平成30年以降は、客観的な基準に
なり、判定に困るケースは減ると
思います。

また、広大地に適用されても
土地評価の減価割合も変わります。

従来の評価方法は
評価額 = 路線価 × 地積 × 広大地補正率
平成30年以降は、
評価額 = 路線価 × 地積 × 画地補正率× 規模格差補正率
という方法になり、評価の減額が
半分程度になると試算されます。

このため、地主の間では
平成29年末までに、現行の広大地に該当する
土地を持っていれば、贈与をするケースが
増えております。

平成29年末までに贈与すれば
現行の広大地制度で広大地が判定され
評価減も現行の水準で出来るからです。


広大地の判定業務で感じたこと

最近は、メガソーラーのことに多く触れていましたが
広大地の案件もしているので、それに関した
お話をしたいと思います。
 
広大地の判定では、まず机上での調査を
行います。地図を見たり、用途地域、容積率等を
調べます。
 
そこからは、広大地に該当するかどうかの
可能性のようなものを感じます。
これは、ある程度案件をこなしていると
感覚的に可能性の高さや低さは感じることが
出来ます。
 
問題は、その後の詳細な調査作業です。
詳細な調査作業では、対象地付近での
おおむね過去10年間の開発事例の調査
や行政的な開発上の制限の詳細調査を
行います。
 
その結果、机上調査では、浮かび上がらなかった
開発傾向や制約事項が判明してきます。
当初の机上調査で感じていた広大地の可能性とは
異なってくることがあります。
 
ここが、広大地判定実務の難しいところなのでしょう。
教科書的には、マンション適地や旗竿地は
広大地に該当しないとありますが、マンション適地は
時代背景によって、変化するものであり、旗竿地も
地域によっては、全く見受けられないところも
あります。
 
机上調査で、明確に判定できるケースもありますが
詳細な調査で、新たに発見されることが、広大地判定に
決定的な影響を及ぼすことが、あります。
 
実務上は、非常に悩ましいところでもあります。
 

広大地制度の趣旨

土地の価格は、単価×面積 であるかと
言えば、そうではありません。
なぜなら、単価20万円/㎡×100㎡=2000万円の土地が
単価20万円/㎡×1000㎡=20,000万円と10倍になるかと
言えば、そうではありません。
 
なぜなら、2000万円の土地を買える人は、
たくさんいますが、20,000万円(1000㎡)の
土地を買える人は、当然に限られてきます。
 
面積の大きな土地は、ディスカウントされる
のです。つまり、20,000万円より
安くなるはずです。
 
1000㎡のような大きな土地は、分割して
戸建住宅を開発してうるか
マンションを開発するなどして売却
するしか方法は、考えられません。
(商業地や工業地は除きます。)
 
戸建住宅を開発する時、通常、開発道路と
言って、道路に使う土地が出てきます。
このように、面積が大きく、開発道路の
設置が必要な土地については、
財産評価基本通達24-4が適用され
広大地として、その面積に応じて
評価額を下げて、相続税評価額が
計算されます。
 
大きな土地の基準
マンション適地か否かの基準
開発道路が必要か否かの基準
の検討には、様々な角度から
検討しなければなりませんが
広大地の制度趣旨は、上述
した通りです。
 
 

旗竿地と広大地

対象土地が、マンション敵地でなくても
いわゆる旗竿地に該当し、戸建住宅建設に
開発道路の設置が、不要な場合、
開発に伴う土地のロスが、ないということで
広大地には該当しないことに
なります。
 
それでは、旗竿地に該当するか
否かは、どのような観点で、判断するのでしょうか?
 
まずは、近隣不動産の開発状況を住宅地図等で
見てみます。旗竿地開発が、多いエリアか
そうでないエリアかは、判断できると思います。
 
第二に、対象地は、二方路地(道路に2面 接している)
なのか、三方路地(道路に3面 接している)か
一方路地(道路に1面のみ、接している)か
無道路地か、調査します。
 
一般に、無道路地、一方路地の場合、旗竿地開発が
困難なケースが多くなります。
なぜなら、道路接面が少ない分、奥行きを深くしないと
旗竿地を取れないため、旗竿開発に伴うロスが大きく
その合理性を見出すことが、困難になるためです。
 
一方で、二方路や三方路では、接面部分が多いため
旗竿開発に伴うロスも少なく、開発ができます。
 
このように、旗竿開発一つをとっても、地域要因
個別的要因と言った、様々な角度からの分析が
不可欠です。
 

広大地とマンション適地

広大地判定の際に、対象地が
マンション適地かどうかは、
判定時のポイントの一つです。
 
一般にマンション適地の条件としては
駅からの徒歩での距離が、10分程度で
2つ以上、道路に面していて
容積率が、300%以上などが上げられます。
 
近隣の開発事例を見れば、どのような
開発がなされているかが分かり
マンション適地かどうかの大きな判断要素に
なります。
 
不動産鑑定基準にもありますが
不動産というものは、変動していく
ものです。
ですから、仮に近隣にマンションが
あったからと言って、そこが
必ずしもマンション適地には、ならない
ことがあります。
つまり、20年前のバブル経済期では
地価水準が高かったため、駅から
離れていたところでも、マンション適地
であったが、最近のような地価が低迷
している状況では、マンション適地は
駅から近いところに、限定されてきて
います。
 
マンション適地の判定は、相続の発生時点で
行う訳ですから、20年前にはマンション適地
であっても、今は、マンション適地では
ないところは、たくさんあると思います。
 
このような不動産市場の判断には、
その不動産が、どのような環境にあるか
判定しなければならないので、不動産市場を
見る目が必要となっています。

広大地判定と農地

土地に関する法制度に、農地法という
ものがあります。
この農地法という法律は、大変厳格な
法律で、不動産取引やその価格に
大きく影響を与えるものです。
 
具体的には、農地と認定された
現況、田や畑となっている土地に
ついては、宅地等に転用する場合
農業委員会等の許可が必要となります。
(農地法3~5条)
 
広大地の判定の際、対象地を
宅地開発して、開発道路をつける
ことが、適用の条件となりますが
宅地転用に、農業委員会の許可を
要する土地については、宅地開発が
事実上困難なため、広大地の
適用は、難しいと思います。
 
対象地が、農地法適用の農地であるか
否かの判断は、広大地適用の
大きな判定要素となりますので
十分に調査することが、必要です。

広大地判定 マンション適地について

相続税での土地評価に関する
財産評価基本通達24-4の
広大地に該当する要件として
『マンション適地』に該当しない
という条件があります。
 
このマンション適地に該当するか
否かは、時代によって変わって
いくものです。
 
土地の価格が高い時代は、駅からの
距離が少し遠くても(徒歩20分など)
マンションが建設されました。
 
しかし、昨今のように土地価格が下落
してくると、駅から遠いところは
マンションは建設されず、戸建住宅が
建設されるようになってきています。
 
広大地の判定は、相続が発生した
時点で行うため、最近のように
マンション適地が、駅から10分程度と
なってくれば、マンション適地は少なく
なり、逆に言えば、広大地に判定される
可能性が高くなります。
 
時代の流れを掴むことが、広大地
判定の重要な要素であることは
間違いありません。

広大地判定業務

最近では、相続対象土地が、広大地に
該当するかしないかの判定の依頼の
仕事が増えている。
 
広大地では、財産評価基本通達24-4で
定義される土地で、それに該当するか
否かで相続税額算定の基礎となる
土地評価額が、最大65%引き下げられる。
 
広大地に該当するか否かには
いくつかの条件があり、それらを
クリアーにしなければならないが
その判定が、机上で出来るものではなく
現地調査の上、周辺の土地利用状況
そして、もしその土地を開発した場合
戸建住宅が建つか、マンションが建つか
を判断しなければならない。
 
これらの判断は、決して絶対的な判定では
出来ず、相対的・個別的に成らざるを得ない。
しかも、その判断を誤ると、相続税額に
大きく影響する。
 
いずれにせよ慎重な判断が必要となる。