SPC 税務調査

今月はじめに、税務署から
私どもの事務所で管理している
SPCについて、税務調査を
受けました。

SPCの税務調査で言えば、
案件立ち上げ直後に、消費税の
還付を受ける際、その金額が
多額になれば、契約書等を含めて
調査を受けることが多くありますが
今回、うちの事務所が受けた税務調査は
消費税還付に関するものではなく
スキームの概要(プレイヤー、投資
対象物件、仕組み)の調査であったという
印象を受けました。

調査の約1週間前に、税務署から
電話があり、調査が始まりました。
調査に当たって、概要を調査官に
説明するために、各案件毎の
スキーム図や投資対象物件が
わかるような資料を作成して
おいたところ、調査官からは
作業がはかどったとのコメントを
いただきました。

スキームの概要を調査官に
説明して感じたことは、
ストラクチャーズドファイナンスは
専門用語が多く、普段、私どもが
関係者間で、使っている言葉が
初めて聞く人からすれば、聞きなれない
言葉ばかりであるということと
ストラクチャーものは、法律の制限
金融商品取引法、不動産特定共同事業法
宅建業法、破産法等の法律の規制が
様々な局面で、出て来ていると
でしょうか。

当初、4日間の調査とのことでしたが
準備した資料で、調査対象の
大部分をカバーできたのでしょうか
1日間で調査が、終了しました。

現時点のことになりますが、
私どもの事務所で事務管理を
しているSPCについて、今回の税務調査
に間して、税務処理について
指摘された点が、ないことも
本ブログを通じて、関係者に
ご報告いたします。

不動産投資家の変貌

不動産投資ファンドの低迷により
不動産投資家の顔ぶれが、変わって
きています。
昨年まででは、不動産投資会社や
不動産開発業者 自身か
設立したSPCが、不動産需要者
となるケースが多くありました。

最近では、不動産関係の会社では
なく、本業で、利益を得た会社(又は個人)が
余裕資金で、不動産投資をするケースが
増えています。
彼らは、本業で得た資金を預金等で
寝かしておくのであれば、
利回りの高い不動産に投資すれば良いと
考えており、キャピタルゲインではなく
インカムゲインの獲得を、目的と
しています。

不動産と付き合うのであれば、このような
スタンスの方が、健全のなのでしょう。
インカムゲインが主目的であり
キャピタルゲインがおまけ位に
考えられれば良いのでしょう。

中間法人法が廃止されます

今年の12月1日より中間法人法が
廃止されます。
それに変わるものとして、『一般社団・財団法』
施行による『一般社団法人』を倒産隔離のため
利用することとなります。

いままでの有限責任中間法人と比べて
一般社団法人は、次の点が異なります。
(主な項目のみです。)

 ヾ道?寮瀉屬蓮任意となります。
◆ヾ雍盖鮟个虜把祿300万円の制度はなくなります。

などです。

 …蟯召稜Ь擇必要
◆〕?2年 監事4年の任期

などは変更ありません。
既存の有限責任中間法人は、
登記上『一般社団法人』に
当然に変更されます。
(例えば、登記上 有限責任中間法人ABCは
 一般社団法人ABCへ変更となる。)

なお、有限責任中間法人の定款は
法人名変更のため、変更手続きが
必要で、平成20年12月1日以降
終了する事業年度末の定時総会までに
変更が必要です。

法人名称変更に伴う定款変更により
法人名称変更の登記も必要となります。

これを怠ると、20万円以下の
過料が科せられます。
ストラクチャー上では
中間法人の定款変更には
レンダー等の承認が、必要でしたら
その手続きも必要となります。

SPCにしておいて良かった

最近、不動産ファンド(SPC)を
使って、不動産投資をしていた会社が
次々と破たんしましたが、
これらの会社が、SPCを使っていた場合と
SPCを使っていなかった場合とを
比較したら、どのようになるでしょうか?

通常、金融機関への融資は、ノンリコース
ローン(NRL)といって、SPCが保有する不動産に
ついてのみ遡及できる(責任財産限定
特約というものがあります。)建付けと
なっています。
また、倒産隔離措置が取られ、不動産投資
会社が破綻しても、SPC投資スキームが
直ちに破たんしない仕組みに
しています。
不動産投資会社が、破綻しても
SPCスキームは、直ちに停止せず、
保有する不動産を、通常の売却活動を
通じて、売却することができます。

金融機関は、責任財産しか遡及できないため
不動産の売却が確定すれば、ローンの
返済も確定するので、売却も
スムーズに進むことでしょう。
(他に取れる資産がないので、
 あがきようがないので)

一方で、従来のSPCを利用しない
コーポレートローンでは、
不動産投資会社が破たんすれば、
担保として取っている不動産は
法的(倒産)手続きの上で
売却されるので、迅速な売却は、困難です。

また、責任財産限定特約がないため
金融機関は、担保不動産以外も
遡及することができるので
金融機関が、ギリギリの交渉をすれば
担保処分も進まないことも
考えられます。

バブル経済崩壊後、不良債権処理が
進まなかった要因として、
担保不動産の処理が進まなかったこと
や、代表者の保証があるため、法的整理に
入ることに大きな抵抗があったことが
挙げられますが、SPCを利用した
資金調達では、これらの短所を
カバーしていると思います。

金融機関の中には、今回の
不動産投資会社の破たんがあっても
SPCに資金提供していたため、救われた
部分もあると思います。

今時の不動産投資家

不動産価格の下落傾向が、明らかとなり
不動産取引熱もさめてしまい、
証券化案件の組成も少なくなりそうです。

とはいっても、不動産投資会社や
AM会社、アレンジメント会社は、案件組成
をしなければ、業績もあがらず、
なんとかしなければなりません。

このような市場環境では、従来のような
1年から数年程度の短期間で、利益を
得るようなファンドでは、投資家は
みつかりにくいでしょう。

先日の日経新聞にも、掲載されていましたが
私どもの事務所の取引先である
ケネディクスさんは、保有不動産を
ドイツの長期投資家に対して、売却
されたようです。(2008年8月28日付 リリース情報より)
http://www.kenedix.com/

じっくり腰を据えて、投資できる投資家を
みなが探しているようです。

アーバンコーポレーションの破綻の分析

アーバンコーポレイションが、民事再生法を
申請しました。
同社の損益計算書や貸借対照表のみ見ている
投資家からすれば、なぜ破たんしたか
不思議に感じられると思います。

同社は、最近3年間増収増益で推移し
自己資本も、順調につみあがって
いました。
不動産開発業者の場合、更地などで
仕入れた不動産にマンションやビルを建設して
販売し、利益を得ています。
そのため、新規の開発物件を追い求めることが
宿命として求められます。
ましてや、上場会社であれば、より強く
求められます。

同社の営業キャッシュフローを見れば
その様子がよくわかります。

参考に連結決算数字を並べますと

順に、売上高、経常利益、営業CF(単位:億円)
H18/3 643 106 △329
H19/3 1805 563 △550
H20/3 2436 616 △1000

となります。
損益計算書上の利益は順調でしたが
営業CFは、3期連続赤字(実際は、H17/3期以前も赤字)で
財務担当者は、いつも資金繰りに苦労されて
いたことが、窺えます。

最近では、難しくなりましたが、不動産流動化において
不動産とその借入金をオフバランス処理して
企業が少しでも、財務体質をよく見せようと
努力されていた理由もうなづけます。

このように、不動産開発業者は
過少資本、過大借入金で
営業CFの不足を、財務CFつまり、おもに
借入金で賄っているケースが多く、
金融機関が、融資姿勢を変えて借入金で
資金調達ができなくなると
たちまち、経営が苦しくなるという
弱点を抱えています。

今のような投資環境での不動産証券化

最近、不動産関連の企業の破綻や
経営悪化の話をよくきくように
なりました。
このような経営環境では、今までのような
短期間で、売買益を得るような
流動化スキームを組成することは
困難となりました。

金融機関は、短期売買のスキームに
対して、融資はできないでしょうし
(もしくは、LTVをかなり低く設定されます。)
投資家も、このようなスキームには
資金を提供しにくい環境であると
思います。

最近お会いした、証券化プレイヤーの
方のお話では、このような環境では
長期投資をする投資家向けの案件
でなければ、組成は難しいであろうと
おっしゃってました。
つまり、長く腰を据えて
おくような案件でなければ、
組成できないであろうとのことです。

ただ、長期的な投資をする投資家の
方が、じっくり案件を見定めて
投資するであろうから、慎重に
投資判断をするでしょうから、なかなか
組成するにも、難しい面も抱えていると
思います。

不動産価格は、これからどれくらい下がって
いつごろ、反転するかは、誰にも
分かりません。

1年前とは、すっかり環境が
変わってしまい、案件組成までの
道のりが険しくなっていることは
間違いありません。

最近の不動産流動化ビジネス

最近、証券化関係者とお話する時
他社の動向は、どうですかという
質問を受けることが多くあります。
ここ半年で明らかに、潮目が変わったので、
他社の動向が気になっている方が多い
ようです。

最近の動向を言いますと、今の
経済情勢を反映した不動産流動化
案件が組成されています。

わかりやすくいいますと、
資金繰りに窮した不動産会社が
売りたたく物件を、購入して
それを時間をかけて、売却して
利益を上げようとする案件が
出てきています。

不動産鑑定の実務で、取引事例を
調べる際、売り急ぎにより
相場価格の30%オフで取引されている
事例などが、時々出てきます。
まさに、そのような売り急ぎ物件を
狙って安く購入し、売却益を
得ることを得ようとする案件です。

これからも、破綻するまたは資金繰りに
窮する不動産会社も出てくるようでしょうから
このような案件も増えるかもしれません。

不動産会社の破綻

今年に入って、不動産関係の会社の
破綻が相次いでいます。
レイコフ、近藤産業、スルガコーポレーションなどなど
最近あった方との話では、関西地区で
今年中に、いくつかの破綻があるでしょうとの
ことです。

倒産隔離措置をとった、スツラクチャーに
組み入れられた不動産は、オリジネーターや
AM会社に破綻があっても、法的処理は
免れると思いますが、そうではない不動産に
ついては、法的処理の対象となり、売りたたかれる
ことになろうかと思います。

また、破綻した会社の不動産を狙っている
不動産会社もあることと思います。

しばらくは、厳しい経営環境が
継続することが、予想されることから
資金力のある会社とない会社では
差が出るでしょうし、場合によっては
生死を分けることもあろうかと思います。

コミングリングリスクとSPC

金融用語として、コミングリングリスク
という言葉があります。
これは、混合リスクという意味ですが
わかりやすく言えば、金融機関が融資した
資金で得た収益が、金融機関への元利金
返済ではなく、他のことに使われてしまう
リスクのことです。

金融機関は、融資判断の際、融資資金で
使われる資産等から得られるキュッシュフローを
判断のポイントとしています。
しかし、そのキャッシュフローが元利金返済
以外の目的で使われてしまえば
本末転倒のこととなってしまいます。

不動産証券化でのノンリコースローンでは
不動産のみを担保としているため
このように混合してしまうとスキームの
根本からゆるがすこととなります。

わざわざコストをかけてSPCを利用する
目的のひとつとして、コミングリング
リスクの回避というものがあります。
つまり、SPCを利用することで、不動産から
得られる資金を、まず、債権者への
元利金返済を優先させて、なお、残余が
ある場合は、投資家等へ返済させることで
コミングリングリスクを回避することが
できます。

通常のコーポレートローンの場合
不動産を抵当権として取っても
コミングリングリスクを回避することは
困難です。

これも、SPCを利用されるメリットの
ひとつとして、あげられると思います。