5月 2024アーカイブ

棚卸資産か固定資産か

 不動産の流動化案件では、
 不動産を流動資産である棚卸資産とするのか、
 固定資産にするのかが論点になります。

 棚卸資産になるか固定資産になるかのポイントは、
 SPCが保有する不動産の出口戦略の考え方に影響を受けます。
 つまり、保有期間が数年程度の場合は、棚卸資産になりますが、
 5年程度の長期保有の場合は長期投資のため、固定資産に該当します。

 棚卸資産の場合、減価償却費を計上しませんが、
 固定資産の場合、減価償却費を計上します。
 証券化不動産は、将来売却することが見込まれています。
 この不動産の減価償却費を計上するか否かで受ける影響についてですが、
 減価償却費を計上しない棚卸資産は、
 将来売却時の簿価は当初から変動しないままで、
 減価償却費を計上する有形固定資産の簿価は
 償却額相当減額された低い簿価となり、
 売却益は固定資産計上の方が多くなります。
 しかし、保有期間全体を通じての減価償却費を加味した売買損益は同額になり、
 損益計上のタイミングがズレることになります。

 評価損の計上では、棚卸資産の方が計上の可能性が高くなります。
 仮に低価法を採用するSPCでは毎年取得する不動産鑑定評価額が簿価を下回れば、
 評価損を計上することになります。
 固定資産に計上している場合は、不動産鑑定評価額が簿価を下回っても、
 直ちに減損損失を計上することにはならず、
 減損の兆候など、一定の要件を満たした場合、損失計上となります。
 一般的には不動産鑑定評価額が簿価の50%以下になるなどの兆候がある
 などの要件を満たした場合に減損損失を計上します。

 

       棚卸資産固定資産
計上区分通常の保有期間経過後に売却が決まっている長期保有
減価償却費の計上なしあり
評価損計上の対象低価法評価損 強制評価損減損会計の適用

減価償却での耐用年数の考え方

建物の減価償却費を計上する場合、税法の定めもあり償却方法は定額法しか採用
できません。償却額は耐用年数を何年とするかで償却方法が異なります。法人税
法では、建物の用途や構造等によって耐用年数を定めており、建物のそれぞれを
調べて、対応する耐用年数を採用することが一般的です。
 
不動産証券化案件では、不動産鑑定評価書を取っています。そこには建物の残存
耐用年数が記載されています。こちらの耐用年数を採用することも可能ですが、
法人税法で定める耐用年数より短い場合は、法人税法での耐用年数での計算結果
との差額を、法人税申告書で調整(申告加算)しなければなりません。
 
このような手間は回避することが通常で、不動産鑑定評価書の耐用年数を採用す
るケースは、法人税法の耐用年数より長くなるケースに限られます。
 
一方で償却額を多くするためには、どのような方法があるでしょうか?通常、建
物は躯体部分と電気設備、給排水設備、空調設備、エレベーターなど付属設備と
一体となっております。通常建物の耐用年数と言われるものは、躯体部分の耐用
年数を指しています。建物に含まれる電気設備等の設備は、法人税法では躯体よ
りも短い15年程度の耐用年数を採用することになっています。
 
そのため減価償却費を多く計上するには、建物の構成要素を分解して、躯体部分
と設備部分のそれぞれの金額を算出します。その際には、中古建物の場合は前所
有者の固定資産台帳を、新築建物の場合は工事請負契約書などを利用して、それ
ぞれの金額を算出します。
 
このように少し手間を要しますが、建物を構成要素に分解して、それぞれに合っ
た耐用年数を採用することで、建物を全て躯体として減価償却費を計上するより
多くの減価償却費を計上することが出来ます。

❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑
 大阪市中央区高麗橋4-3-7 北ビル7階
 税理士法人 淀屋橋総合会計
 http://www.yodoyabashisogo.com
❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑

お客様とのデータ共有

SPC案件では、会計証憑や契約書等のPDFデータをご提供いただき、
それに基づき経理処理をして、税務申告書の作成、決算書の作成、
匿名組合決算書の作成など様々な成果物を提出します。
また、SPCの登記内容の変更などあれば、税務署に届出を行います。

プロジェクト期間が長期に及ぶと、会計事務所とアセットマネジメント会社
との間で共有する資料の量は膨大なものとなります。
時々、数年前の資料を確認したい時もあり、これらのデータは時系列で整理され、
データ保管されることが大切になります。

弊事務所では、お客様からのご要望等あれば、ご提出いただいたデータと、
弊事務所が作成しお客様や税務署等に提出した資料を、それぞれ時系列に保管し、
クラウド上で共有出来る体制を整えております。

この体制を整えることで、過去の資料の確認等が容易に出来ます。
資料の保管ルールを定めておくことで、過去の資料を確認したい時も、
短時間で探し出し、確認出来る体制となっております。

紙書類を出来る限りPDF化することで、膨大な資料もパソコン1台で
出来るシステムとなっています。
昨今の在宅勤務を弊事務所でも導入していますが、資料をPDF化しておくことで、
自宅でも事務所にいる時と同じ水準の資料を見ることが出来ます。

❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑
 大阪市中央区高麗橋4-3-7 北ビル7階
 税理士法人 淀屋橋総合会計
 http://www.yodoyabashisogo.com
❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑❑