6月 2008アーカイブ

不動産の特殊性

不動産の金融商品化について
最近のブログでは、触れてきましたが
その反対とも言える、不動産の特性について
触れてみたいと思います。

不動産には、地縁的選好性という特質が
あります。個人の需要者を想定すれば
わかりやすいのですが、例えば、都心からの
立地条件や利便性が同じ地域でも
自分の生まれ故郷の地域など愛着のある
地域を選好するという傾向です。

つまり、不動産の需要は、必ずしも
経済合理性のみで決定しないものなのです。

企業においても、創業地については
それなりの選好性が、働くものだと思います。
ただ、個人はともかく、企業については
この選好性については、薄れていく傾向に
あると思います。

例えば、東芝の創業地である銀座の不動産売却
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2007_09/pr_j1903.htm
などが、象徴的なものなのでしょう。

ただ、依然として土地に対する愛着を持っている
企業もたくさんあると思いますが、めまぐるしく
変動する経済環境のもとでは、そのような
こだわりが、かえってマイナスとなることも
あろうかと思います。

今一度、見直すことが求められる時も
くるかもしれません。

平成初期と昨今の不動産市場の違い

平成初期の頃の不動産価格の高騰は
土地神話(土地価格は、上がり続ける)の基に
不動産の取引価格が上がり続けて
経済実態から乖離した価格にまで
到達したため、価格が急落しました。
当時の日本の土地総額が、米国の土地総額の
数倍となり、日本の土地を全部うれば
米国全土を買っても、お釣りがあるという
状態になりました。

昨今の不動産価格の高騰は、不動産投資
ファンドやJREITの出現により
不動産市場に資金が、入ってきて
価格が上昇したことは、ご存知のとおりです。

ただ、ここでの価格形成プロセスが、平成初期の
不動産バブルとは、おもむきが異なります。
昨日のブログでも、少し触れましたが
最近の不動産相場は、価格ではなく
利回り(キャップレート)で、言われる
ことが多くなりました。
これが、不動産の金融商品化の
象徴的なことです。

利回りで、不動産の市場を見ることと
取引事例価格(相場価格)で、不動産の市場を
みることでは、大きく異なることがあります。
利回りは、収益÷時価で算定されます。
つまり、時価(市場価格)と収益とのバランスをみて
その不動産の価格が、高いか低いか評価することです。

平成初期のバブル期のような極端に高い
市場価格になれば、利回りが極端に低くなります。
リスクのほとんどない、国債の利回りよりは
低くなることはないでしょうから、利回りで
評価する場合、一定のラインで、歯止めがかかると
予想されます。

これが、平成初期のように、単純に取引事例価格のみで
不動産相場が、形成されるのであれば、歯止めが
かからず、米国の土地全部を、日本の土地全部で
変えてしまうという極端な価格に、なってしまうのでしょう。

この点では、平成バブルの教訓が、活かされている
と思います。

不動産の金融商品化とCRE戦略

不動産のストラクチャーの
仕事をしていると、不動産が金融商品化
していることは、肌で感じています。
不動産の金融商品化されたことで
変わったこととは、不動産の価格が
上昇してきたときに、
『最近 不動産価格が上がってきた。』と
いうのではなく、
『最近、キャップレート(利回り)が下がってきた。』と
いうことなりました。

(利回りとは、収益÷価格であり、価格が上昇すれば、利回りが下がります。)
不動産の利回りは、金融市場での、金利水準や
リスクプレミアムと密接に関係があり、
不動産価格が、金融市場や情勢に大きく影響する
ことが、不動産の金融商品化と言われる所以なのでしょう。

前段が、長くなりましたが、この不動産の金融商品化
という事実について、不動産ファンド関係者は
十分理解されております。
一般の事業会社も、このトレンドを不動産保有や
利用について、活かすことが大切だと感じています。

先述のとおり、最近の不動産については
エリア毎に、概ねの利回りが決まってきています。
ですから、不動産を保有する会社については
その不動産が、近隣の利回り水準の収益を
あげているか、検証することが必要ではないでしょうか?

不動産活用のメルクマールとして、
市場利回りと、企業が上げる利回りとの
関係を見てみることも、大切だと感じています。

利回りを算定するには、その不動産の時価と
収益を把握する必要がありますが、その方法に
ついては、次回以降にご説明したいと思います。

企業再生とCRE戦略

監査法人勤務をしていた
今から5~10年程度前には
企業再生の仕事を、多く
していました。

今から振り返れば、企業再生も
一種のCRE戦略なのだと感じています。
当時は、ゴルフ場の再生案件を
いくつか担当していました。
当時のゴルフ場は、バブル経済時期に
発行したゴルフ会員権の預託金(預り金)の
返還時期を向えていたが、その
返還資金がなく、資金繰りに窮して
いました。
そのため、ゴルフ場として、必要な設備投資や
メンテナンスも不十分で、客足が遠のき
売上が下落するという悪循環が続いていました。

言い換えれば、預託金の返還や銀行借入の
返済に追われ、不動産(ゴルフ場)へ
必要な資金が、回っていませんでした。

CRE戦略とは、不動産の価値を引き出して
企業価値を高めるというところにあります。
このようなゴルフ場運営会社は、債務免除を受けて、
不動産に必要な資金を投入して、不動産価値を
引き出すということが、債務免除を受ける
大儀名文であり、求められたことなのでしょう。

ゴルフ場運営会社は、その後、株式市場に
上場し、スポンサーは、利益を得たものと
聞いています。

CRE戦略という言葉は、最近クローズアップされて
きた言葉ですが、その実践例としては
今までに、沢山あると思います。

CRE戦略が、フォーカスされる理由

最近の新聞にCRE戦略という言葉が
よくでてきます。
私なりにリサーチして、このように
最近よく言葉として、使われる原因について
考えてみました。

そもそもとして、CRE戦略とは、企業の
保有する不動産のあり方(所有、賃借、売却…)
をどのように選択するかというものです。

CREが、注目される理由として
 _餬彑度の変更 主に不動産の時価会計の導入
 (減損会計、投資不動産の時価会計、リース資産のオンバランス化…)
 により、不動産を会計上のリスク資産としてとらえざるを
 得なくなった。
◆´,亡慙△靴董▲螢好資産である不動産を、どのように
 管理しているか、上場会社の場合、その説明責任を
 求められるようになった。(金融商品取引法の要請 
 一般にいう内部統制制度の導入です。)
 ´△里茲Δ福∪度の変化があるにも関わらず
 不動産については、特定の部署が、購入時期及び
 売却時期しか、その状況について、詳細に
 調査しておらず、´△里茲Δ癖儔修紡弍?任て
 いない
というような背景があると思います。
不動産というものは、金額が大きいものであり
その判断については、慎重に扱う必要があることは
みなさん感じていることです。
しかし、一旦購入すると、その後は、データの
アップデートをしていなかったり、特定部署に
管理を任せていることが多いと思います。

そして、不動産全体について、整合性のとれる戦略を
練っているケースは、稀であると思います。
個々の不動産について、検討するだけでなく、
企業の保有、賃借する不動産全体について
そのあり方を検討する必要があるのだと思います。

CRE戦略

昨日、不動産カンセラー協会主催の
CRE戦略のセミナーに、参加しました。

http://www.jarec.jp/seminar/20080522.html

不動産会計に関わる者としては、大変有用な
内容でした。
CRE戦略とは、不動産に対する企業戦略だと
認識されている方も、多いと思います。
簡単に言えば、
『企業等の保有する不動産を、企業戦略に合わせて
最適な保有や利用形態にする。』
ということでしょうか。

そのためには、不動産に関する情報を
一元管理をして、データ更新を定期的に行い
経営環境変化に対応していかなければなりません。

最近、CRE戦略という言葉を、新聞等で
たびたび掲載されるようになったのは
特に、上場企業の場合、不動産は、減損会計や
投資不動産の時価評価の対象となるリスク資産で
あり、そのリスク管理に対して、どのように
しているか説明責任(金融商品取引法に
よる、内部管理体制の構築)を求められる
ことが、大きな背景にあると思います。

いずれにせよ、数年すれば、CRE戦略という
言葉は、今まで以上に定着することに
なるかと思います。