事業年度が1年未満の減価償却費

SPCを解散することになりました。

本来の決算日から6ケ月後に解散することに
なったのですが、解散前に資産を売却しました。

売却まで減価償却をする場合、
通常、減価償却に使う償却率は事業年度が1年を
基準としているため、今回のように事業年度が
6ケ月となり、1年に満たない場合は、改定償却率
を用いて、償却率を調整する必要があります。

・改定償却率の計算式
本来の償却率×事業年度月数/12ヶ月=改定償却率(小数点以下3位未満切上げ)

・償却限度額の計算式
残存価格×改定償却率×償却する月数/事業年度月数=償却限度額

(例)建物 耐用年数40年 定額法 残存価額1,000万円 
決算6月末、解散12月末、資産売却日11月末

・改定償却率
0.025×6/12ヶ月=0.0125→0.013(少数点以下3位を切上げ)

・償却限度額
10,000,000円×0.013×5/6ケ月=108,333円

SPCは一般的な法人より、1年に満たない事業年度が
発生することも多いかと思います。
その際の減価償却には注意が必要です。

4 単体納税に係るその他の取扱い|国税庁 (nta.go.jp)

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 大阪市中央区高麗橋4-3-7 北ビル7階
 税理士法人 淀屋橋総合会計
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中古資産取得の減価償却

担当しておりますSPCで
中古資産の取得がありました。

新規で取得した場合とは
減価償却の計算の基となる
『耐用年数』の算定の仕方が異なります。

中古資産取得の場合は
法定耐用年数が経過した期間によって
『耐用年数』が算出されます。

法定耐用年数の全部を経過した資産の場合
その法定耐用年数の20%に相当する年数が
『耐用年数』となります。

例:法定耐用年数35年、35年以上経過の場合
⇒35年×20%=7年

法定耐用年数の一部を経過した資産においては
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に
経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数が
『耐用年数』となります。

【計算式】
法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%

なお、これらの計算により算出した年数に
1年未満の端数があるときはその端数を切り捨て
その年数が2年に満たない場合には2年とします。

例:法定耐用年数35年、経過年数の7年場合
⇒35年-7年+(7年×20%)=29.4年→29年

このように中古資産取得の『耐用年数』の算定は
対象資産の種類を用途だけでなく
経過年数の把握が必要となります。

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SPCで建設したホテルの減価償却の開始時期

担当しておりますSPCでホテルが竣工
いたしました。

ホテルの完成引渡を受けて、建物等の資産を
取得し、減価償却を開始します。

こちらのホテルは、1月末の完成引渡日より
テナントと賃貸契約を締結し、賃貸を開始
いたしました。

しかし、賃料の起算日は、賃貸開始日より
1ヶ月半後の3月中旬、さらに、ホテルの
開業日は、その後の4月初旬となりました。

引渡から開業日までは、備品等の搬入を行い
試泊により、宿泊客を迎い入れ、アンケート
を取ったり、PR活動を行うなり、宿泊業務を
開始しておりました。

減価償却は、「事業の用に供した日」から開始
することになりますが、こちらのSPCのように
既述のとおり、賃貸開始日(1月)、賃料起算日
(3月)、開業日(4月)が異なっている場合、
償却の開始日はいつになるのでしょうか。

国税庁のHPには、「事業の用に供した日」とは
「一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従っ
て本来の目的のために使用を開始するに至った日」
と記載があります。

こちらのSPCは「ホテルを建設し、賃貸する」
ことが本来の目的で、ホテル開業前に賃貸は開始
しております。そのため資産であるホテルの賃貸
を開始した「1月」より、減価償却を開始すること
になります。

このように「事業の用に供した日」はホテル所有
者(SPC)とホテルオペレーター(運営者)では
その開始日の扱いが異なり「賃貸の開始」に基づ
いて判断します。

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新設会社の減価償却

昨年11月に設立した新設の特定目的会社で
この1月に特定資産の購入をいたしましたので、
固定資産台帳兼減価償却明細書を作成いたしました。

SPC案件では、特定資産購入時に、会社設立時に作成した事業計画通りの
キャッシュフローが実現するか
正確な減価償却費等を計算して検証します。

今回購入した建物の耐用年数は、50年。償却率は、0.02です。
資産を取得したのは、1月ですから期末の3月31日までは3月。
(月の途中で購入した場合も1月と数えます。)

取得価格 1億円 x 償却率0.02 x 事業共用月数3月/12月 =減価償却費 500,000円

と計算してしまいそうですが、
新規設立等で事業年度が12月に満たない場合は
少し計算方法が変わってきます。

償却率0.02 x 事業年度の月数5月/12ヵ月=調整後の償却率0.009(小数点3位未満切り上げ)
取得価格1億円 x 調整償却率0.009 x 事業共用月数3月/事業年度の月数5月 =減価償却費 540,000円

計算方法を間違えると減価償却費が少し違ってきますので、注意が必要です。

SPCは、複数の投資家や債権者と事業計画を共有していますので、
最初のシミュレーションと実際のキャッシュフローが大きく違ってくると
後で説明が大変になります。
減価償却費に限らず、慎重に正確なシミュレーションをすることが必要になります。

シミュレーションは、主にAM会社の役割ですが、
減価償却費のような会計の知識が必要な項目に関しては、
事務管理会社がお手伝いをすることもあります。

前年度に取得した固定資産の値引取引

担当しておりますSPCで
前年度取得の固定資産の値引がありました。

前年度は値引前の簿価で償却しています。

値引のあった該当資産の簿価を
今年度に減額しますが、
値引額全額を簿価の減額は出来ません。

次の式相当額を減額します。

値引き等の額 × (値引き等の直前における当該固定資産の帳簿価格
÷ 値引き等の直前における当該固定資産の取得価格)

国税庁HP ≪固定資産の取得価額|国税庁 (nta.go.jp)

仮に100の値引があっても上記式での
計算結果が90とすれば簿価の減額は
90となります。

残りの10は前期損益修正益(特別利益)
として処理します。

償却資産の申告の際は、
念のため該当自治体に
取得価格が減額になった旨連絡の上
値引のあったことがわかる
証憑(契約書等)を添付して申告し、
値引後の取得額での課税にする手続きが必要です。

今年度の減価償却額も減額となります。

四半期決算等ですでに減価償却済の場合、
残りの四半期決算での調整が必要です。

年度をまたいでの固定資産の値引は
頻繁には発生しませんが、
会計処理の取扱いや償却資産税申告など、
影響する範囲は多岐に及びます。

決算申告に添付する資料

決算・申告を行う際には、
いろいろな決算資料の提出が
必要です。

担当しておりますSPCは
決算で減価償却の計上がありました。
その場合、固定資産台帳の提出が必要となります。

ただし、法人税申告書別表16等で、
明細レベルの固定資産毎の償却額を
記載している場合は提出不要です。

また少額減価償却資産の損金算入の特例を受ける場合には
取得金額に関する明細書を添付しなければなりません。

消費税申告にも還付がある場合、
還付金額が100万円を超える時は、
還付の原因となった契約書
(工事請負契約書等)の写しを、
添付資料として税務署に提出が必要です。

提出した書類や申告書は
法律で保存期間がそれぞれ定められておりますので
申告後も保管が必要です。

汽力発電所の浚渫工事の償却期間

現在、地熱発電事所を建設中の顧問先様が、
昨年、井戸の浚渫工事をされました。

浚渫というのは、
一般的には、港湾・河川・運河などの底面を浚って
土砂などを取り去る土木工事のことを言いますが、
今回の工事は、先に掘削した井戸の中をきれいにして、
発電に必要な蒸気が通るようにするものでした。

井戸の掘削工事からはかなり時間がたってからの工事で、
発注先も掘削工事を依頼した業者とは
全く別の業者でした。
この浚渫工事だけを単体で見た場合、
何らかの物理的な資産が出来上がるわけではありませんし、
掘削工事とは別の工事なので、
工事代金の約1000万円を一度に費用処理できないか、
または、一度に費用処理できないにしても、
10年で償却できる港湾浚渫負担金などのように
短期間で償却できる方法はないか
税務署に問合わせをしてみました。

結論から申しますと、答えは、ノーでした。

当該浚渫工事は、
井戸を使った発電に不可欠の工事であり、
すでに資産計上している井戸掘削工事と
切り離すことはできない。
よって、当工事代金は、
汽力発電用の構築物として資産計上し、
41年で償却するのが妥当であるというのが
税務署の回答でした。