工事負担金の経理処理

地熱発電所や太陽光発電所などの売電事業を開始するには、
自社で発電した電力を送電するために、
電力会社が維持管理している既存の電線網と自社の発電設備をつないで、
通電してもらう必要があります。
この工事は、中部電力や九州電力などの電力会社が行いますが、
工事代金は、売電事業者であるSPCが支払います。

工事代金は、売電事業者が負担するのですが、
設備を所有者は、電力会社なので、
この工事代金は、「工事負担金」という科目で、
固定資産ではなく、繰延資産に計上し、
15年(または電力会社との契約における受給期間)で均等償却します。
(ただし、工事負担金が20万円未満の場合は、
 少額の繰延資産として、一時償却できます。)

支払時点では、一旦「建設仮勘定」とし、
売電開始時点で、事業に供したこととなりますので、
勘定科目を「工事負担金」に振替え、償却を開始します。
仮払い消費税も売電開始時に計上し、仕入れ控除の対象となります。

売電SPCが負担する工事負担金の経理処理

工事負担金は、売電事業をするSPCが、
通電の為の送電設備を設置してもらうため、
電力会社に支払う工事代金です。
 
経済的には、売電事業者SPCが負担しますが、
設備の所有者は電力会社にあります。
 
売電事業者SPCが支払い時点では、建設仮勘定に計上し、
売電開始時点で、事業に供したこととなり、
繰延資産である工事負担金に振替え、同時に仮払い消費税も計上します。

工事負担金の償却期間は、
15年とする国税庁の質疑応答事例が公表されています。
 
「工事負担金・耐用年数」

汽力発電所の浚渫工事の償却期間

現在、地熱発電事所を建設中の顧問先様が、
昨年、井戸の浚渫工事をされました。

浚渫というのは、
一般的には、港湾・河川・運河などの底面を浚って
土砂などを取り去る土木工事のことを言いますが、
今回の工事は、先に掘削した井戸の中をきれいにして、
発電に必要な蒸気が通るようにするものでした。

井戸の掘削工事からはかなり時間がたってからの工事で、
発注先も掘削工事を依頼した業者とは
全く別の業者でした。
この浚渫工事だけを単体で見た場合、
何らかの物理的な資産が出来上がるわけではありませんし、
掘削工事とは別の工事なので、
工事代金の約1000万円を一度に費用処理できないか、
または、一度に費用処理できないにしても、
10年で償却できる港湾浚渫負担金などのように
短期間で償却できる方法はないか
税務署に問合わせをしてみました。

結論から申しますと、答えは、ノーでした。

当該浚渫工事は、
井戸を使った発電に不可欠の工事であり、
すでに資産計上している井戸掘削工事と
切り離すことはできない。
よって、当工事代金は、
汽力発電用の構築物として資産計上し、
41年で償却するのが妥当であるというのが
税務署の回答でした。