インボイス制度と不動産信託(賃料収入)

いよいよ 10月よりインボイス制度が開始します。
形の上では、消費税納付の適正化ということですが
従来 免税事業者であった者は、実質的に増税になる
ケースが多く反対する人も多いのが現状です。

実務的には、仕入控除をするには、インボイス登録を
受けた事業者から交付された『適格請求書』の入手が
必須となり、そのチェックも含めて、経理作業が増えることは
間違いありません。

SPC会計でも、一般的な事業会社と同じ対応が迫られます。
不動産信託を利用した、SPCの賃料収入と インボイス制度について
ご紹介します。

SPCが不動産信託を通じて、商業テナントから賃料収入を得る場合
テナントは賃料と合わせて、消費税を支払います。
仮に賃料が100万円で消費税10万円と合わせて、110万円を

不動産信託の場合、テナントは不動産の登記名義人である
信託銀行と締結することが一般的です。
信託銀行は、消費税を含めた賃料を受取り、信託決算での
信託配当を受益者(通常は、SPC)に支払い、賃料収入は
SPCに帰属します。(消費税法 14条

テナントから見て、賃貸人は信託銀行ですが、払った消費税は
受益者であるSPCに帰属するという形式になります。

信託銀行は形式的に賃貸人ですが、実質的にはSPCが賃貸人
ということで、インボイス制度開始後は、信託銀行はテナントに
実質的に消費税を受取るSPCの登録番号を、どのように
伝えるかという問題があります。

インボイス制度開始後は、信託銀行では、請求書に
受益者(SPC)の名称、住所、登録番号を併記した
『ハイブリッド型』の請求書をテナントに交付すると
しています。

テナントから見れば、入居している不動産の受益者が
請求書を見れば、分かるということになります。

インボイス制度の導入は、不動産信託実務にも大きな
影響を与えます。

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不動産信託での登録番号等の通知

SPCスキームでは、不動産信託を利用するケースがあります。

通常、SPCが不動産信託受益権者(以下、『受益者』)として、
賃貸収入等の課税取引をします。賃貸契約はテナントと信託
銀行(または信託会社)との間に締結し、信託銀行がテナントに
消費税を含めた賃料を請求します。

信託銀行は、受取った賃料等を含めた損益を『受益者』に
信託配当として支払います。

不動産信託では、信託銀行が受取った賃料は、『受益者』である
SPCに帰属します(消費税法 第14条)。

消費税を含んだ賃料等を支払うテナントは、仕入控除をするには、
経済的に賃料が帰属する『受益者』の登録番号等を確認する必要があります。

そのため、信託銀行が、テナントに交付する請求書や賃貸契約書、
覚書等に、『受益者』の名称と登録番号を伝えるなどの対応が必要となります。
 
そのため、『受益者』であるSPCは、インボイス登録を受けておく必要があります。

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SPCのインボイス制度対応

今年(2023年)10月から始まるインボイス制度に
対して、SPC会計でも その準備を進めております。

インボイス対応の手順としては、おおよそ以下の
内容で進めております。

取引先のインボイス登録の直接(書面等)もしくは
間接(国税庁ホームページ等)の方法で、状況を
調査します。

同時に、SPCが入手している請求書等が、現段階で
登録番号の記載以外は、問題ないかの検討をしています。
ネットショッピングで購入した備品等では、購入先の
正確な名称や住所が記載されていないケースも
散見され、入手する請求書に相当するものの
見直しの必要性も感じています。

概ね、言えることは、インボイス登録している
事業者の発行している請求書は、適切なケースが
多く、インボイス登録していない事業者の
請求書は、曖昧なものが多いと言えます。

実際に請求書等を入手するSPCのAM業者の
担当者には、現段階で入手している請求書の
不備や不足等があれば、早めにお伝えして
インボイス制度開始に備えたいと思います。

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不動産売買での適格請求書交付

不動産売買で、契約書の売買代金欄に『土地・建物(消費税込) 1億円』
と税込金額でも、内訳の消費税額が、明示されていないケースがあります。

インボイス制度が本格導入されると、消費税額が明示されない取引は、
仕入控除出来ないことが明確になります。

SPCが取引するような一定規模以上の不動産取引では、
土地・建物・消費税額が明示されていることが一般的ですが、
少額取引では、税込金額のみが記載されている売買契約書も散見されます。

このような契約書の記載方法は、インボイス制度が本格稼働すると、
買主が仕入控除出来なくなります。

例外のケースとして、個人が所有する中古住宅やマンションを、宅建業者が買取り、
転売するケースがあります。このような場合、個人がインボイス制度の登録をして、
適格請求書の交付を受けることは、事実上不可能です。
この場合、適格請求がなくても、会計帳簿に、消費税額を記載することで、
仕入控除が出来るとしています。

【帳簿のみの保存で仕入控除が認められる場合】
・宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から
棚卸資産(中古住宅等)を取得する取引
(出典:適格請求書等保存方式が導入されます。(国税庁2020年6月 抜粋))

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立替取引での適格請求書交付

SPC案件の場合、不動産会社が一旦立替えた取引を、
SPCが組成された後にSPCに立替金請求し精算する
ケースがあります。
それ以外でも、PM(不動産管理)会社が立替えた費用を、
1ヶ月分をまとめてSPCに請求するケースもあります。
 
SPC案件に限りませんが、立替取引は、どのような会社でも
発生しうる取引です。
この立替取引では、立替払をした会社は、精算をした当社
(SPC)に対して、仕入先から交付を受けた『適格請求書(写)』
と精算内容を記載した『精算書』の交付が必要となります。
 
例外的に、立替払の取引が多数で、『適格請求書(写)』の
交付が困難な場合は、『精算書』に『適格請求書』の記載事項
全てが、記載されてあれば、『精算書』のみの交付も可能です。
 
立替取引であっても、取引先と直接取引した場合に入手する
『適格請求書』に相当する資料を入手することが、仕入控除の
要件になっております。

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インボイス制度の難しさ

インボイス制度開始後は、課税仕入取引が適格請求書に基づく取引であるか
否かの判定をしなければならない点に、難しさがあります。

また、賃貸契約のように契約書を締結して、継続的に行う取引では、
請求書に登録番号等がなくても、契約書に登録番号等の記載があれば、
適格請求書の交付と同じ効果があるとしております。

つまり、請求書だけでなく、
複数書類を確認しなければならないケースもある点が
経理作業を煩雑化している要因です。

また、単発の取引(例 領収書のみ受取る取引)では、
その相手先が、適格請求書の発行事業者であるか否かを調べる必要があります。
もし、相手先が適格請求書発行事業者であっても、登録番号の記載漏れであれば、
領収書等を再発行していただくなども必要です。

少額な取引ほど、インボイス制度に該当するか否かの判断が難しいケースが多くなり、
経理事務が煩雑になることが見込まれます。

大規模な会社であれば、少額払が多い営業担当者にも、
インボイス制度の概要を伝える研修も必要と思います。

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任意組合のインボイス登録

不動産取引では、共有オーナー等が共同で
任意組合を組織し、建物の全体の収支を、
任意組合の名義で受取っているケースがあります。
マンションの管理組合も、これに類似した組織です。
 
この任意組合は、組合員の全員が、適格請求書の
発行事業者であれば、問題ないのですが、組合員が多くなると、
適格請求書発行事業者以外の組合員が、混入しているケースがあります。
 
このケースでは、任意組合が適格請求書の発行事業者になれず、
テナントに交付する賃料請求書は、『適格請求書ではない』ものになります。
従来は、任意組合から受取る賃料請求書で、消費税の仕入計上をしていた
取引(テナント)が、インボイス制度が開始する2023年10月以降は、
消費税の仕入控除額が制限されます。
 
テナントは消費税の仕入控除が制限されるため、賃料の引下げ、
場合によっては賃貸契約の解除などの影響も予想されます。
任意組合の運営側は、将来予想されるインボイス制度の影響を加味して、
テナントと賃料等の条件交渉を進めることが必要です。

【任意組合とインボイス制度】
・インボイス登録がない組合員が1名でもあれば、その任意組合は、
インボイス登録が出来ません。
・不動産取引で、任意組合を利用しているケースは、組合員の属性等より
インボイス登録出来るか判定をし、出来ない場合は、テナント等の
消費税計算に影響ある旨等を伝え、備えることが必要です。

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不動産賃貸契約での適格請求書

不動産賃貸のように最初に契約書を交わし、
その後、毎月定額(もしくは契約に定めた計算額)の賃料を支払う場合、
契約書に登録番号が記載されておれば、毎月発行する請求書に
登録番号の記載はなくても良いとされています。

そのため、契約書に登録番号がある取引先は、経理処理する部門が、
その内容を把握する必要があります。

国税庁が、公表しているインボイス制度に関するQ&Aでは、

【質問内容】

不動産賃貸契約書の締結後に口座振替等により代金を支払い、
請求書や領収書の交付を受けない取引の場合、
請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。

【回答】

適格請求書として必要な記載事項は、
一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、
複数の書類で記載事項を満たせば、
それら書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになります。

上記にあるように、請求書以外の書類を通じて、
仕入先に適格請求書の内容が伝われば、
『適格請求書の交付』と同じ効果をもたらすとしています。

適格請求書であるか否かの判断には、
複数書類(契約書と預金取引明細など)
を確認しなければならないケースがあります。

【適格請求書】
・適格請求書の記載内容は、請求書以外の契約書等で
仕入先が記載内容(登録番号等)把握出来る場合でも、
仕入控除出来る。(適格請求書の交付と同じ効果をもたらす。)

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