適格機関投資家等特例業務(QII)届出 出資実行後届出

適格機関投資家等特例業務(QII)届出の
近畿財務局での実務的なところは、先日ご説明した
とおりです。

届出は、TK出資をするまでの、事前届出となります。
事前届出で手続きが完了ではなく、出資を受けた後に
出資をしたことのエビデンス(預金通帳の写)や
出資者が確定したこと(適格機関投資家が含まれているなど)
の提出が必要です。

これらは、全て、GBIZでの届出が可能ですが
案件組成する際には、何度か届出が必要となります。

また、SPCが決算を迎えた時は、事業報告書(決算書と
投資内容の概要)の報告をし、事業報告書は公衆の縦覧に
供する手続きを踏まなければなりません。

QII特例は、メリットも多くありますが、上記のように
財務局への届出や報告等が必要な点には、注意が必要です。

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取得価額の範囲

不動産ファイナンス案件の際、不動産の取得価額について、
論点になることがあります。
これについて、会計上、税務上の整理をしておきたいと思います。

税務では取得原価に組み入れなければならない項目を定めていて、
それ以外のものを組み入れても問題になることはありません。
取得価額に組み入れることで将来の減価償却費計所時点までに
費用処理が繰り延べられるからです。

税務では不動産の売買代金と仲介手数料、そして売買時に精算される
固定資産税が取得価額に含めるように定めていて、例えば、司法書士報酬や
登録免許税等を費用処理しても、取得価額に含めても問題になることはありません。

一方、会計では不動産を取得に要したものを、取得価額に含めるべきとし、
税務のようにものと明文化されたものはありません。
その点では、会計上の取得価額の範囲は、案件によって異なります。

一般的には、税務上の取得価額に含めるべきものは、取得価額に含めることは
必須として、司法書士関連費用、ローン手数料、弁護士費用、不動産取得に関する
アセットマネジメント費用は取得価額に含めるケースもあります。
それ以外に、これらの費用を長期前払費用として、例えばローン期間に応じて
償却するというケースもあります。
 
会計監査を受けるSPCの場合、会計監査担当会計士によって、取得価額の範囲が
問題となることもあります。
事前に監査担当会計士とは、擦り合わせをしておくことが大切と思います。

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棚卸資産か固定資産か

 不動産の流動化案件では、
 不動産を流動資産である棚卸資産とするのか、
 固定資産にするのかが論点になります。

 棚卸資産になるか固定資産になるかのポイントは、
 SPCが保有する不動産の出口戦略の考え方に影響を受けます。
 つまり、保有期間が数年程度の場合は、棚卸資産になりますが、
 5年程度の長期保有の場合は長期投資のため、固定資産に該当します。

 棚卸資産の場合、減価償却費を計上しませんが、
 固定資産の場合、減価償却費を計上します。
 証券化不動産は、将来売却することが見込まれています。
 この不動産の減価償却費を計上するか否かで受ける影響についてですが、
 減価償却費を計上しない棚卸資産は、
 将来売却時の簿価は当初から変動しないままで、
 減価償却費を計上する有形固定資産の簿価は
 償却額相当減額された低い簿価となり、
 売却益は固定資産計上の方が多くなります。
 しかし、保有期間全体を通じての減価償却費を加味した売買損益は同額になり、
 損益計上のタイミングがズレることになります。

 評価損の計上では、棚卸資産の方が計上の可能性が高くなります。
 仮に低価法を採用するSPCでは毎年取得する不動産鑑定評価額が簿価を下回れば、
 評価損を計上することになります。
 固定資産に計上している場合は、不動産鑑定評価額が簿価を下回っても、
 直ちに減損損失を計上することにはならず、
 減損の兆候など、一定の要件を満たした場合、損失計上となります。
 一般的には不動産鑑定評価額が簿価の50%以下になるなどの兆候がある
 などの要件を満たした場合に減損損失を計上します。

 

       棚卸資産固定資産
計上区分通常の保有期間経過後に売却が決まっている長期保有
減価償却費の計上なしあり
評価損計上の対象低価法評価損 強制評価損減損会計の適用

ネットバンクの利用

SPC会計をする際には、案件の出納業務も引き受ける
ケースがあります。

最近ではほとんどの銀行でネットバンクサービスが
普及し、送金だけでなく納税など、ほとんどの支払業務を
パソコンで処理出来るようになりました。

ネットバンクの良いところは、銀行の窓口に訪問しなくても
送金等の手続きが出来るところにあります。
月末付近は送金件数も増え、銀行の窓口も混雑します。

ネットバンクでは窓口での待ち時間なく送金手続きを
進めることが出来ます。

その他に、預金口座の取引明細や予約振込の状況を
お客様やアセットマネジメント会社と容易に共有出来ます。

最近ではネットバンクが広く普及し、銀行で送金手続きを
する窓口数も少なくなったと思います。
ネットバンクで容易に送金出来る代わりに、送金実施までの
セキュリティ対策が重要になってきます。

具体的には、送金出来るパソコンを制限し、パソコン操作の
権限を明確にし、事務所内で送金手続きにチェック機能が
働くことが大切です。

送金手続きは、正確性とタイミングが重要で失念や誤りが
ある場合、関係者に与える影響は大きなものとなります。

経理処理は最初誤りがあっても、後日訂正することも可能
ですが、送金手続の訂正は手間や費用を要することから、
事務所としては神経を使う作業でもあります。

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適格機関投資家等特例業務(QII特例)届出

不動産を信託受益権化したGK-TKスキームでは、
TKの募集に先立って、財務局に 適格機関投資家等特例業務の
届出をします。

特例業務の新規届出:財務省関東財務局 (mof.go.jp)

一般的には、この届出を会計事務所が担当するケースが
多く、弊事務所でも、この業務を担当しております。

届出先は、SPCの本店所在地を管轄する財務局となり
東京本店のSPCは、関東財務局、大阪本店のSPCは近畿財務局
となります。

この届出終了までのプロセスが、関東財務局と近畿財務局では
異なります。具体的には、関東財務局の場合、事前に書面等のチェックは
なく、SPCが取得した『GBIZ』のIDで電子申請することで
完了します。

ログイン (gbiz-id.go.jp)

一方、近畿財務局では担当者に、申請書類を添付書類である誓約書や
経歴等を添えて、メールで送信し、その後、ヒアリングシートという
質問項目をまとめたリストが送られ、それに回答をした上で
近畿財務局内でのチェック作業を経てからの申請となります。

そのため、近畿財務局への申請では、手続き開始から、申請
が完了するまで、2週間程度要します。

関東財務局では、QIIの申請も多く、個別のヒアリングシートを
作成し、回答を求めるようなことは求めていないようですが
近畿財務局では、案件が少ないためか、上記のような
手続きを経ています。

大阪市内本店のSPCでは、東京本店SPCと比べて、日数に
余裕をもって準備することが求められます。

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インボイス制度の運用変更点

インボイス制度が始まってまだ半年ですが、
すでに、細かいルールの変更が何回かありました。

例えば、当初は、インボイス不備があっても、
インボイスの受領者が修正することはできず、
発行者に正しいインボイスを再発行してもらうことが必要でしたが、
昨年11月には、受領者が修正をして
発行者に確認をしてもらう方法でもよいと改正されました。

また、ETC料金については、当初は、ETC利用照会サービスから
利用証明書を毎回ダウンロードすることが必要とされていましたが、
ダウンロードが必要なのは、最初の1回だけでよいというルールになり、
さらにその後、繰り返し利用する高速道路は
クレジットカード明細の保存だけで構わないということになりました。
ただし、いつでも利用証明書を閲覧できるように、
ETC利用照会サービスへログインできる状態にしておくことが必要です。
参照:3分でわかるインボイスETC対応

銀行振込手数料についても、同様に、当初のルールでは、
毎回インボイスの入手が必要とされていましたが、
インボイスを1度だけ入手すれば、
次回以降インボイスの入手は不要となりました。 

ATMや自動販売機については、
当初から帳簿記載だけで仕入れ税額控除ができるとされていましたが、
ATMについては、銀行名と支店名
自動販売機は、業者の住所や自動販売機の設置場所の住所
に加えて特例にあたる取引である旨を帳簿に記載する必要があるとされていました。
それが不要になり、
帳簿に「自動販売機」と記載するだけでよいことになりました。
参照:仕入れ税額控除に係る帳簿の記載事項の見直し

これらの変更は、2023年10月にさかのぼって適用されます

インボイスは制度開始前から様々に変更がありましたが、
制度開始後も変更され続けていますので、
常に最新の情報をチェックすることが必要となります。
参照:令和6年2月版インボイスQ&A

信託決算書とインボイス制度

昨年10月より開始したインボイス制度が、導入から5ヶ月
程度経過しました。
インボイス制度の実務も、進んでいると思います。

SPC案件の場合、不動産を信託受益権化するケースが
多くあります。信託を通じたインボイス(適格請求書)の
提供方法は、信託銀行によって、違いがあります。

いわゆる大手の財閥系の信託銀行は、信託決算毎に
インボイス取引の明細や計算書を作成し、取引先や
登録番号等をまとめたものが、提出されます。

インボイス制度での立替金の精算書に近いイメージの
取引明細が提出されます。
信託銀行としては、従来作成が不要であった書類を
別途、作成することになり手間が増えると思います。

計算書にはすべての課税仕入取引が記載されるものでは
ありません。
例えば、テナントから回収した賃料から、仲介手数料に
相当する『広告費』を控除されている場合、広告費を
信託銀行が作成する『計算書』に掲載されていないケースが
あります。

このような取引は、別途、AM業者やPM業者を通じて
広告費の『適格請求書』を入手しなければなりません。

財閥系ではない信託銀行では、入手した適格請求書の
写しを、そのまま提出するところもあります。
こちらの方が、受託者側で別途、計算書を作成しない分
手間が省けますが、信託取引が多いと、提出する
適格請求書の通数も多くなります。

このように、インボイス制度開始により、請求書の
チェックなど、経理事務に手数が増えていることに
間違いはありません。

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事業年度が1年未満の減価償却費

SPCを解散することになりました。

本来の決算日から6ケ月後に解散することに
なったのですが、解散前に資産を売却しました。

売却まで減価償却をする場合、
通常、減価償却に使う償却率は事業年度が1年を
基準としているため、今回のように事業年度が
6ケ月となり、1年に満たない場合は、改定償却率
を用いて、償却率を調整する必要があります。

・改定償却率の計算式
本来の償却率×事業年度月数/12ヶ月=改定償却率(小数点以下3位未満切上げ)

・償却限度額の計算式
残存価格×改定償却率×償却する月数/事業年度月数=償却限度額

(例)建物 耐用年数40年 定額法 残存価額1,000万円 
決算6月末、解散12月末、資産売却日11月末

・改定償却率
0.025×6/12ヶ月=0.0125→0.013(少数点以下3位を切上げ)

・償却限度額
10,000,000円×0.013×5/6ケ月=108,333円

SPCは一般的な法人より、1年に満たない事業年度が
発生することも多いかと思います。
その際の減価償却には注意が必要です。

4 単体納税に係るその他の取扱い|国税庁 (nta.go.jp)

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外形標準課税対象法人の見直し

令和6年税制改正大綱で、外形標準課税対象法人が見直されることが発表されました。
これまでは、資本金1億円超の法人に外形標準課税が課されていました。

資本金を資本剰余金へ振り替ることで減資を行い外形標準課税の対象から外れる会社や
持株会社化、分社化をして、子会社の資本金を1億円以下に設定するなどして
グループ法人の一部のみが外形標準課税の対象になるようにしているケースが
散見されることから今回見直しが行われたようです。

①今後は、資本金が1億円以下でも以下のすべての条件に当てはまる場合は、
外形標準課税の対象となります。(令和6年税制改正大綱 P51)

前事業年度終了の日資本金の額が1億円えている
・当該事業年度の資本金資本剰余金合計額が10億円えている

②また、資本金資本剰余金合計額50億円を超える法人の100%子会社は、
事業年度の終了の日の資本金資本剰余金合計額が2億円える場合は、
外形標準課税の対象となります。(令和6年税制改正大綱 P52)

①は、令和7年4月施行予定で(令和6年税制改正大綱 P52)
②は、令和8年4月施行予定です。(令和6年税制改正大綱 P53)

今回の改正以前から特定目的会社(TMK)は、外形標準課税対象外であり、
改正の影響は受けません。(東京都 外形標準課税制度 対象法人QA

GK-TKスキームの場合も通常は、GKの資本金は少額に設定されますので、
資本剰余金との合計額でも2億円を超えることはなく
影響を受けるSPCはありません。

この改正は、通常のSPCに与えるケースは、ほとんどないものと
思います。


資産売却後の消費税還付

オフィスビルや太陽光発電所等の収入が課税売上になる
資産を売却すれば、課税売上高は発生しません。

売却後に、その資産を取得するための費用や資産取得等の
課税仕入が発生した時に、支払った消費税は還付されるでしょうか?
この点は、会計事務所によって解釈に差があるところです。

資産を売却した後は、課税売上高が発生しないので、課税仕入れが
発生しても仕入控除出来ず、還付対象にならないと考える会計事務所
もあります。

ただ課税仕入取引が資産の売却前に発生し、資産の売却後に金額等が確定し
課税仕入が発生した場合など、資産売却後に課税仕入が発生することに
合理的な理由がある場合は、仕入控除が可能と考えます。

このような取引での消費税還付は、弊事務所でも経験したことがあります。
実際には次のような取引でした。

SPCが太陽光発電所を開発し、工事が完了し第三者に売却しました。
建設期間中、電力会社に系統連系のため工事代金を支払っていました。
支払った際には、建設仮勘定処理していました。
太陽光発電所の完成から1年以上経過してから、工事代金が確定し、
仕入控除が可能となりました。

このケースで、SPC会計の大手会計事務所では売却した事業年度を
越えてから確定した工事代金の消費税は控除出来ないとの考えでした。

スポンサー企業から弊事務所がこのような事情の説明を受け、詳細な事情の
説明文を添えて消費税還付申告をしたところ、還付申告が認められました。

何が合理的であるか否かは、解釈の分かれるところでありますが、消費税は
エンドユーザーが負担するという消費税の趣旨や、電力会社による工事負担
金額の確定に時間を要し、売却時点では課税仕入額が確定出来なかったなど
の取引の特殊事情を理解出来れば、適切な判断が出来ると思います。

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