1つのSPCで複数資産を投資対象とする場合

 1つのSPCで複数の不動産や発電所を投資対象とする案件もあります。
その場合、SPC会計ではどのような対応が必要でしょうか?
私どもの事務所では、投資対象毎に部門を設定し、
物件毎の収益性などが一目で分かるような経理処理体制を採用しています。
物件毎に財産を分別管理するためにも会計上の部門設定は有効と思います。

 部門設定した際、問題となることは、
ある部門の預金口座で他部門に属するような部門を跨ぐ取引をした場合、
どのように経理処理をすれば良いでしょうか。
部門別の貸借対照表を作成し、貸借を一致させるには、
部門を跨ぐ取引があった場合の対象方法としては

  • どちらかの部門に属する取引とみなして経理処理する。
  • ダミーとなる部門を設定して、貸借を一致させる。

のいずれかの方法を採用することになります。

 例えば、消費税還付額がある場合も部門を跨ぐ取引になります。
消費税の課税取引は、各部門で発生し、消費税還付額も各部門で計上されます。
一方で、還付口座は1つの口座しか指定することは出来ず、
還付取引はいずれかの部門に属することになります。
そのため還付金を各部門に振り分けるなどして、
部門別の消費税還付額(未収消費税)を精算する作業が必要となります。

このようにSPCに部門設定をした時は、物件別の採算性は見やすくなりますが、
細部の実務では、悩ましい問題が発生します。

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 税理士法人 淀屋橋総合会計
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営業者口座ないSPCの営業者報酬の計上

SPC案件では、メイン口座(事業用口座)、リリース口座、営業者口座
など、役割に応じて、銀行口座を開設するケースが一般的です。

メイン口座は、賃貸収入(信託配当等)の受取り、借入金の
元利金支払いなど、SPC事業の中心となる資金の授受を
行います。

リリース口座は、AM報酬や、投資家への配当金支払など
最も劣後する支払いをメイン口座から資金振替を受けた後に
行います。

営業者口座は、①資本金の受入 ②メイン口座から営業者報酬(匿名組合契約に
記載されています。)の受取 ③法人税の支払
を行います。

このように、銀行口座を分けているSPCでは、資金の移動内容が
預金口座を見れば分かるので明確です。

なかには、上記のように複数の口座を持たずに1つの銀行口座で
進んでいるSPCもあります。

そのような場合 営業者報酬の精算による銀行口座間での
資金移動は行いません。匿名組合決算のために、営業者報酬の計上は
必要です。そのため、匿名組合部門営業者部門を設定し
営業者報酬相当営業者部門が匿名組合部門に未収計上し、匿名組合
部門
未払計上する 経理処理で対応します。

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営業者口座のないSPC

匿名組合契約では、匿名組合が営業者に年間20万円程度の営業者報酬を支払う
ことが一般的です。この営業者報酬は、SPCを維持するため事業を行っている
匿名組合が、営業者(SPC)に対して報酬を支払うというものです。
ただ、この営業者報酬は、SPCの内部取引のため、SPC全体の決算では内部取引
として消去され表示されることはありません。匿名組合決算の損益計算書で
『営業者報酬』として表示されます。
 
SPC案件では、営業者用の預金口座として、『営業者口座』が準備されることが
一般的です。営業者報酬は、匿名組合決算に合わせて匿名組合口座から営業者
口座に送金されます。営業者は、受取った営業者報酬で法人税等の納税資金に
充当します。
 
案件によっては、営業者口座がなく、匿名組合事業を行う事業口座のみという
案件もあります。そのような場合、営業者報酬をどのように扱うかが問題と
なります。
 
匿名組合契約書には、営業者報酬の記載はあるので、匿名組合経理では営業者
報酬を計上します。しかし、営業者口座はないので、営業者報酬の精算処理はなく
経理が進みます。その結果、営業者から匿名組合に対する営業者報酬を受取る
債権が計上され、匿名組合では反対の債務が計上されます。営業者口座がないので
これらの債権債務は計上されたままで、匿名組合経理上残ることになります。

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契約書等への押印手続

SPC会計業務をしていると、契約書や作成書面への
押印作業は、定期的に発生します。弊事務所でも
SPCの印鑑をお預りしているためです。

今まで、多くの書類に押印をしてきました。
押印の種類について、整理しご説明したいと
思います。

押印の種類
① 署名欄への押印
② 割印・・・複数枚の契約書の綴じた部分への押印
③ 捨印・・・主に登記申請書類の場合、軽微な修正を
司法書士が出来るようにする押印

になります。①②は必須となりますが、③まで押印するケースは
少ないように思います。

レジ案件のSPCでは、年度末付近は、テナントの入れ替えも
多く、押印する頻度も多くなります。

シングルテナントのSPCの場合は、テナント入れ替えによる
押印は少ないので、リファイアンスの際には、押印の頻度が
上がりますが、押印する頻度は多くありません。

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会計上 税務上

SPC会計で問題となるポイントに、会計上問題ないか、
税務上問題ないかという2つがあります。

会計上の問題は主に費用処理すべきものを資産計上する等、
費用を繰延計上し、利益を出す方向にある経理処理が
認められるかどうかというポイントです。

一方、税務上の問題は費用処理が認められるかというポイントです。
税務上は消費税で課税取引か非課税取引かというポイントも
ありますが、ここでは法人税上の費用処理が認められるか否かに
ポイントをあててお話します。
 
税務上の問題は、費用処理をして課税所得を少なくするか否かが
ポイントで、費用処理出来るものを繰延処理しても問題になることは
ありません。

具体的には、減価償却の耐用年数を税務上は20年のところ、
30年で処理する、もしくは減価償却資産の取得価額を広く解釈して、
費用処理出来るものを取得原価に含める場合などです。
税務上認められない処理をすると税務調査等で法人税納付漏れなどの
リスクが発生します。

一方、会計上の問題は、税務上の問題とは180度逆の論点が多く、
費用処理出来るものを資産計上する場合などが該当します。

SPCが上場会社の連結子会社の場合、SPCの決算数値が連結財務諸表に
反映されます。また、通常は連結上の親会社と同じ経理処理方針が求められる
ことから、親会社の方針がSPCの経理にも影響します。

このようなケースでは、SPCが会計監査を受けるケースも多く、会計上の
問題をクリアーしなければ、決算を締めることが出来ないこともあります。

SPC会計では、このような会計上の問題と税務上の問題の2つをクリアー
出来る経理処理が求められます。

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会計監査の要否

 SPCは、投資家や金融機関からの借入金で投資事業を行っており、
正しく会計処理され財務の透明性が求められます。
そのため会計監査をするケースが多く見受けられます。

 会計監査には、大きく分けて法定監査と任意監査の2種類があります。
法定監査は法的に会計監査が求められるケースで、会計監査を受けることが強制されます。
一方で、任意監査は法的には会計監査を受ける必要はありませんが、
プロジェクトの関係者間でのプロジェクト契約やローン契約、
投資契約等で会計監査を受けた決算書を毎年提出することが求められるなど、
主に契約書の中で会計監査を求めているケースが該当します。

 会計監査を受ける場合、監査費用を要するので、投資家の利回りが下がる要因になります。
一方で、会計監査というチェック機能が働くので、決算書信頼性は高まります。

スキーム条件会計監査
TMKスキーム優先出資をうけている法定監査
GK-TKスキーム総負債が200億円未満法定監査
総負債が200億円以上任意監査

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リファイナンスと長期前払費用の償却

不動産証券化の際、ノンリコースローンのローン手数料や、弁護士費用等の一定のまとまった費用が発生します。これらの費用を、支出時に全額費用処理する場合と、長期前払費用として計上しローン期間等で償却するケースがあります。

ローン関係費用は、ローンが実行されればそれでSPCは経済的メリットを受けたとして、そのタイミングで全額費用処理することがあります。一方で、ローンが完済されるまで、返済の猶予を受けているため長期前払費用として計上し、ローン期間で償却することもあります。ここでは、長期前払費用として償却するケースについて、解説したいと思います。

長期前払費用の場合、償却期間をどのように取れば良いかが論点になります。通常ノンリコースローンでは、通常の約定返済期間と、2年程度の延長可能なオプションが付いてあることがあります。例えば、通常のローン期間が5年で、2年延長のオプションがあるケースはどうなるでしょうか?ほとんどのケースでは通常のローン期間5年で償却しています。ただ、SPCの利益計上を早めるため、2年間の延長オプションを考慮して7年間で償却するケースもあります。

税務上は、ローン手数料や弁護士費用は、支出時に全額費用処理することを制限する規定はないので、長期前払費用として費用計上を繰延処理しても問題にはなりません。会計上は、このような長期前払費用は資産性がないものとして、計上が認められないことも想定されますが、ローン実行中はこれらの費用支出の恩恵を受けていることから、容認されることが一般的です。

では、通常の返済期間5年のローンが3年目にリファイナンスをした場合は、どのようになるでしょうか?このようなケースでは、当初受けたローンは一括返済することになります。そのため、未償却の長期前払費用残高は、一括償却をして残高ゼロになります。

リファイナンスのためにローン手数料や弁護士費用を支払っているでしょうから、再度ローン期間に応じて長期前払費用を計上することになります。

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適格機関投資家等特例業務(QII)届出 出資実行後届出

適格機関投資家等特例業務(QII)届出の
近畿財務局での実務的なところは、先日ご説明した
とおりです。

届出は、TK出資をするまでの、事前届出となります。
事前届出で手続きが完了ではなく、出資を受けた後に
出資をしたことのエビデンス(預金通帳の写)や
出資者が確定したこと(適格機関投資家が含まれているなど)
の提出が必要です。

これらは、全て、GBIZでの届出が可能ですが
案件組成する際には、何度か届出が必要となります。

また、SPCが決算を迎えた時は、事業報告書(決算書と
投資内容の概要)の報告をし、事業報告書は公衆の縦覧に
供する手続きを踏まなければなりません。

QII特例は、メリットも多くありますが、上記のように
財務局への届出や報告等が必要な点には、注意が必要です。

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取得価額の範囲

不動産ファイナンス案件の際、不動産の取得価額について、
論点になることがあります。
これについて、会計上、税務上の整理をしておきたいと思います。

税務では取得原価に組み入れなければならない項目を定めていて、
それ以外のものを組み入れても問題になることはありません。
取得価額に組み入れることで将来の減価償却費計所時点までに
費用処理が繰り延べられるからです。

税務では不動産の売買代金と仲介手数料、そして売買時に精算される
固定資産税が取得価額に含めるように定めていて、例えば、司法書士報酬や
登録免許税等を費用処理しても、取得価額に含めても問題になることはありません。

一方、会計では不動産を取得に要したものを、取得価額に含めるべきとし、
税務のようにものと明文化されたものはありません。
その点では、会計上の取得価額の範囲は、案件によって異なります。

一般的には、税務上の取得価額に含めるべきものは、取得価額に含めることは
必須として、司法書士関連費用、ローン手数料、弁護士費用、不動産取得に関する
アセットマネジメント費用は取得価額に含めるケースもあります。
それ以外に、これらの費用を長期前払費用として、例えばローン期間に応じて
償却するというケースもあります。
 
会計監査を受けるSPCの場合、会計監査担当会計士によって、取得価額の範囲が
問題となることもあります。
事前に監査担当会計士とは、擦り合わせをしておくことが大切と思います。

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棚卸資産か固定資産か

 不動産の流動化案件では、
 不動産を流動資産である棚卸資産とするのか、
 固定資産にするのかが論点になります。

 棚卸資産になるか固定資産になるかのポイントは、
 SPCが保有する不動産の出口戦略の考え方に影響を受けます。
 つまり、保有期間が数年程度の場合は、棚卸資産になりますが、
 5年程度の長期保有の場合は長期投資のため、固定資産に該当します。

 棚卸資産の場合、減価償却費を計上しませんが、
 固定資産の場合、減価償却費を計上します。
 証券化不動産は、将来売却することが見込まれています。
 この不動産の減価償却費を計上するか否かで受ける影響についてですが、
 減価償却費を計上しない棚卸資産は、
 将来売却時の簿価は当初から変動しないままで、
 減価償却費を計上する有形固定資産の簿価は
 償却額相当減額された低い簿価となり、
 売却益は固定資産計上の方が多くなります。
 しかし、保有期間全体を通じての減価償却費を加味した売買損益は同額になり、
 損益計上のタイミングがズレることになります。

 評価損の計上では、棚卸資産の方が計上の可能性が高くなります。
 仮に低価法を採用するSPCでは毎年取得する不動産鑑定評価額が簿価を下回れば、
 評価損を計上することになります。
 固定資産に計上している場合は、不動産鑑定評価額が簿価を下回っても、
 直ちに減損損失を計上することにはならず、
 減損の兆候など、一定の要件を満たした場合、損失計上となります。
 一般的には不動産鑑定評価額が簿価の50%以下になるなどの兆候がある
 などの要件を満たした場合に減損損失を計上します。

 

       棚卸資産固定資産
計上区分通常の保有期間経過後に売却が決まっている長期保有
減価償却費の計上なしあり
評価損計上の対象低価法評価損 強制評価損減損会計の適用