不動産鑑定価格の内訳額 続編

不動産鑑定での土地、建物の
内訳価格をどのようにするかという議論が
会計や税務にどれくらい影響するものか
検証してみます。

仮に土地・建物で10億円の不動産が
あったとします。
土地・建物の按分方法で、内訳価格が
変動するとしても、せいぜい、4:6が
6:4に逆転する程度だと思います。
(1:9が、9:1にまで逆転することは
ないと思います。)

であれば、建物価格が4億円になるか
6億円になるかということです。
消費税は、前者2000万円、後者3000万円で
1000万円の差が出ます。

減価償却費は、附属設備の耐用年数と
加重平均して、20年とすれば
4億円の場合、年間償却費2000万円と
6億円の場合、年間償却費3000万円と
1年で1000万円、20年間で2億円の
差が出ます。

更に法人税の影響では、税率を40%
とすれば、年間で400万円、20年間で8000万円の
差が発生します。

10億円の鑑定額で、その内訳価格を
どのように取るかで、上述のような
差が大きいのか、小さいのかは
人によって、違うと思いますが、
鑑定士が、鑑定評価の内訳価格を出される
際には、この程度の影響があることを
頭の片隅に置いておくことは
それなりに意味があることと思います。

不動産時価会計での指標

不動産に対して、時価会計(減損会計、賃貸等不動産の時価評価)を
導入することにより、不動産の評価が、企業会計に与える影響が
大きいことは、ご承知の通りです。

そのため、不動産に関して、管理する指標なるものが
必要ではないかと思っております。
通常の営業活動については、損益分岐点売上高などで、損益管理を
していますが、不動産の場合、減損分岐点収益や(減損会計の
適用をうけるまでの)安全余裕率などの指標を、利用することで
保有する不動産の減損会計の可能性を管理することができるのでは
ないでしょうか。

また、賃貸等不動産の場合、賃料収入や不動産の市場価格が
損失計上となるか否かの基準となるため、損失計上分岐点賃料収入や
その推移、不動産の市場価格の現況と推移について
管理することが必要ではないでしょうか。

いずれにせよ、不動産の時価会計導入に対して
企業としての管理指標が必要なのは、CSR(企業の社会的責任)
の観点からも必要となってきていると思います。

不動産の時価会計の大枠

既に、導入済みの減損会計
賃貸等不動産の時価評価会計、資産除去債務の会計
リース会計により、不動産に関する
時価会計制度が一通り、揃うことになります。

いろいろな会計制度があり、少し整理してみます。

 )楸箸僕?僂靴討い詈殕不動産(本社、店舗、工場、営業所)
  は、減損会計の対象となります。
  減損会計では、損失計上はあっても、利益計上は
  ありえません。事業用不動産ですので、事業活動を
  通じて、利益を得るために、保有しているからでしょう。

◆”堝飴困鯏蟷顱淵ぅ鵐ムゲイン、又はキャピタルゲイン)
  目的で保有してあれば、これは
  賃貸等不動産の時価会計の対象となります。
  この会計では、利益計上もあれば、損失計上も
  あります。この点は、減損会計と大きな差でしょう。

リース会計により、従来ではオフバランス処理していた
リース試算も、オンバランスされるようになり
上記の,泙燭蓮↓△梁仂櫃箸覆觧饂困増えました。

資産除去債務会計では、従来では潜在的にしか
会計上認識されていなかった、土壌汚染除去費用
アスベスト除去費用、定期借地契約での契約満了時の
建物除去費用等を、認識しなければならなくなりました。

企業から見れば、保有する不動産の種類(事業用、投資用)に
応じて、会計上のリスクへの対応が求められることと
なります。
また、内部統制において、これらの資産に対する
リスク管理体制も求められることでしょう。

正常価格と特定価格

不動産鑑定では、鑑定評価額の
種類として、正常価格、特定価格、限定価格、特殊価格の
4種類がある。

そのなかでも比較的目にするのが、正常価格と
特定価格のため両者の関係について
説明しておきます。

正常価格というのは、特段の条件設定もない
前提での市場価格で、標準的な価格です。

一方、特定価格は、法令等の要請で
正常価格での前提条件を満たさない場合の
価格です。
一般に、不動産を証券化する際の
鑑定評価では、DCF法による価格を
鑑定評価額とすることから
(正常価格であれば、DCF法だけでなく、積算価格や
比準価格も考慮するので)
特定価格とすることが、あります。

しかし、証券化におけるDCF法による鑑定評価額を
どの鑑定業者も、特定価格としているわけではなく
正常価格として評価書を作成しているケースも
見られます。
これは、特定価格と表記すれば、正常価格との
関係を説明しなければならないことや
証券化の対象不動産の場合、DCF法による価格が
まさに市場価格(=正常価格)であるため
だそうです。

この特定価格・正常価格の議論は、鑑定士の
中でもいろいろな考えがあるようですが
証券化における不動産鑑定評価額で
特定価格と正常価格との間で、大きな差は
ないものと思います。

路線価と実勢価格

先日、平成20年の路線価が公表されました。
新聞記事等によれば、都心部の上昇幅が
縮小されたようです。

路線価の基準日は、平成20年1月1日
ということから、昨年1月1日から今年の1月1日に
かけて、都心部では、地価の上昇があったという
ことです。

最近では、地価の下落が始まっているという
認識が広まりつつありますが、都心部で
地価上昇があったというのは、違和感が
あるかもしれませんが、路線価は、あくまで
今年の1月1日時点の評価というところに
要因がありそうです。

また、路線価などの公的評価の性質として
実勢価格から遅行して変動するところが
あることも、違和感の要因のひとつかもしれません。

一般に路線価は、対象地の標準的な地価である
公示価格の80%
となるように計算されています。

ただ、公示価格と実勢価格とは、乖離している
ことが、通常であり、路線価と実勢価格とは
直接結びつけるものはありません。

なお、路線価は、都心部を中心に
網羅的に価格を算出していることから
ある土地と他の土地との価格差を、検討する際に
参考になると思います。

今年度に入って、不動産に対する金融機関の
姿勢や需給動向から来年に、公表される
路線価は、今年のようには、ならないものと
予想されます。

資産除去債務に関する会計

平成22年4月1日以降から開始する事業年度より
資産除去債務に関する会計基準が適用される
こととなりました。

不動産に関する会計については、次のことが
影響することと予想されます。
 ヾ覿箸保有する不動産にPCBがある場合
 その除去費用を債務として計上しなければ
 なりません。
◆‘瑛佑縫▲好戰好箸ある場合も
 その除去費用を債務として計上しなければ
 なりません。
 定期借地契約で、建物を建てている場合
 契約期間満了時には、建物を取り壊して
 原状回復させて、地主に返還する義務が
 あるので、その取り除く費用を
 債務として計上しなければなりません。
ぁ(殕する土地に土壌汚染がある場合
 汚染を除去しなければならなければ
 除去費用を債務として計上しなければ
 なりません。

以上だけでも、不動産に関する会計に
与えるインパクトは大きいと思います。

,裡丕達造砲弔い討蓮環境省にPCB保管
事業所と届けている事業所は、その計上義務があるものと
思います。

平成15年現在ですが、保管事業所を検索できます。
http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcbjigyo.php?yr=2003

△離▲好戰好箸蓮▲▲好戰好箸あれば全ての
企業が除去債務を計上しなければ、ならないかと
言えば、少し疑問があります。アスベストがあっても
屋根裏などで、封印されてあれば、解体等しなければ
実害はなく、除去債務を計上しなければならないのかなど
債務計上の基準については、難しいところが
あります。

づ攵躅??砲弔い討癲土壌汚染があったとしても
直ちに除去しなければならないものではないものも
あります。

また、不動産を流動化等してあれば
PCB,アスベスト、土壌汚染については
費用をかけて調査していますが、流動化や売却を
まったく検討していない不動産については
これらの調査をしていないことが
一般的と思います。
このようなリスク要因について
把握していない企業もたくさんあると思います。

まずは、企業の保有不動産について
これらのリスクがあるか調査することから
この会計基準への対処が、始まるものと
思います。

最近の不動産市況(レジデンシャル)

今月に入って事務所のポストに、大手
デベロッパーのマンションの値下げ広告が
入っていました。
不動産市況が、いよいよ下落傾向に
入ったと感じさせるものでした。

このように、誰でも目にするところにまで
値下げしたことが、わかるチラシが
入れば、これからマンションを購入しようとする
人は、もっと下がるのではないかと
思って、更に買い控えると思います。

大阪市内でも、最近では億ションと呼ばれる
高額のマンションも売り出されていましたが
これらは、本当に実需に基づくものか否か
わからないものもあると思います。

このような高額な物件から、価格は
しばらく下降するのではないかと
思います。
マンション販売は、当面苦戦が続くと
思いますが、体力のある業者とない業者とで
差が出てくると思います。

いつの世も、市場価格は、上下に波を打つように
上がったり、下がったりしながら変動して
いくものだと思います。
そのうねりに呑まれるか、乗り越えるかで
会社の力を試されているのかもしれません。

平成初期と昨今の不動産市場の違い

平成初期の頃の不動産価格の高騰は
土地神話(土地価格は、上がり続ける)の基に
不動産の取引価格が上がり続けて
経済実態から乖離した価格にまで
到達したため、価格が急落しました。
当時の日本の土地総額が、米国の土地総額の
数倍となり、日本の土地を全部うれば
米国全土を買っても、お釣りがあるという
状態になりました。

昨今の不動産価格の高騰は、不動産投資
ファンドやJREITの出現により
不動産市場に資金が、入ってきて
価格が上昇したことは、ご存知のとおりです。

ただ、ここでの価格形成プロセスが、平成初期の
不動産バブルとは、おもむきが異なります。
昨日のブログでも、少し触れましたが
最近の不動産相場は、価格ではなく
利回り(キャップレート)で、言われる
ことが多くなりました。
これが、不動産の金融商品化の
象徴的なことです。

利回りで、不動産の市場を見ることと
取引事例価格(相場価格)で、不動産の市場を
みることでは、大きく異なることがあります。
利回りは、収益÷時価で算定されます。
つまり、時価(市場価格)と収益とのバランスをみて
その不動産の価格が、高いか低いか評価することです。

平成初期のバブル期のような極端に高い
市場価格になれば、利回りが極端に低くなります。
リスクのほとんどない、国債の利回りよりは
低くなることはないでしょうから、利回りで
評価する場合、一定のラインで、歯止めがかかると
予想されます。

これが、平成初期のように、単純に取引事例価格のみで
不動産相場が、形成されるのであれば、歯止めが
かからず、米国の土地全部を、日本の土地全部で
変えてしまうという極端な価格に、なってしまうのでしょう。

この点では、平成バブルの教訓が、活かされている
と思います。

公示価格と実勢価格の関係

不動産価格の指標となるものとして
公示価格というものが、あることは
ご存知のとおりです。

不動産鑑定においても、土地の取引事例価格を
算出する時には、近隣の公示地を決めて
その価格とバランスが取れているか
検討する作業が、あります。
概ね±10%圏内にあることが
バランスが取れているといえる
基準となります。

ただ、この公示価格ですが
これは、地域毎の担当の鑑定士がいて
その鑑定士が決定しています。

また、その価格決定においては、
担当鑑定士が、独断で決定するのではなく
その周辺の公示地を担当する鑑定士との
間で、調整を重ねて価格を決定します。
そういった意味では、地域のバランスを
考慮した上で、価格が決定しています。

では、価格決定においては、その土地の
実勢価格を完全に反映して決定して
いるかといえば、必ずしもそうでは
ないようです。
公示価格は、相続財産の評価に影響する
路線価や、固定資産税評価にも
関係しています。
(通常 公示価格10 路線価8 固定資産税評価7の割合です)
そのため、公示価格の急激な上昇は、
納税者に負担を強いることとなることも
あり、大幅な上昇は、あまり好まれない
ようです。

そういった意味では、公示価格は
経済指数でいう、遅行指数(実態=実勢価格よりも
遅れて反映する指標)に分類されるのでしょう。
不動産市場での、遅行指数としては
賃料も、それにあたるのではないかと
思っております。

賃料は、通常2年に1度改訂される性質のため
市場価格を反映しにくいものですが
(不動産鑑定実務では、新規に契約する時の
 新規賃料と、契約更新の時の継続賃料では
 異なった計算方法をします。)
不動産の価格が上がれば、直ちに賃料に
反映されるものではなく、少し遅れて
反映されます。

特に首都圏のオフィスビル賃料は、ここ
最近、上昇傾向にあるということは
このような賃料の性質を、あらわしている
のでしょう。

今は不動産バブルか?

不動産価格は、最高点に達し、これからは
下落傾向にあるのでは、というのが、最近の
不動産価格に対する風潮ではないでしょうか?

どのような価格も一辺倒に上がり続けることはなく
上がれば下がる、下がれば上がるを繰り返しながら
つまり、波動を描きながら
価格というものは推移していくものです。

ということを万人は経験則から知っているから
今まであがりつづけた不動産価格は、一旦
下落傾向に入ると考えているのでしょう。

それでは、平成初期のバブル経済時期と
今と比較すれば、次のようになると思っています。

いずれの時期も不動産価格の上昇傾向から
下落傾向に転じた時期という点では一致しています。
しかし、その価格形成については、随分異なる点が
あります。
平成初期では、不動産の取引価格で価格が決定する
ことが一般的でしたが、今では取引価格だけでなく
収益価格で価格が決まることが多くあります。
つまり、不動産の金融商品化により、不動産から
あがる収益が、不動産価格を決定する大きな要因
となりました。

取引価格というものは、第三者間の取引であれば
客観的な市場価格と言えますが、価格の根拠という
ものは、当事者間で納得した価格というもので
近隣の相場感や将来見通しなど、突き詰めて考えれば
あいまいなものと思います。

一方で、収益価格は、不動産の収益性について調査分析し
たもので、その根拠というものは、数値によって
説明可能なものです。
また、不動産ファンドに入る不動産については、
土壌汚染、耐震性等の調査(デューデリジェンス)をした
上で価格を決定していることから、その価格に
ついては、それなりの根拠をもったものと言えます。

ただ、米国のサブプライムローンのように、偽りを
基につくられた価格であれば、問題の傷は深くなることも
あろうかと思いますが、私の知る限りにおいては
信託銀行によるチェック、不動産鑑定業者による不動産価格決定
金融機関による融資審査等において、
米国のサブプライムローンのように、偽りの書類を
利用していることは、ないものと思っております。

ということから、今後不動産価格が下落傾向に
入るとしても、今 形成されている価格は
収益価格のウエイトが大きく、その価格については
それなりの根拠をもったものであることからも
平成初期のようなバブル崩壊により、不動産市場が
機能しなくなるほどの下落は、ないものと
見ております。

もちろん、不動産の金融商品化により、金利動向や
金融機関の姿勢は、不動産価格に影響することは
間違いないと思います。