不動産の典型的需要者

不動産鑑定の実務において
最後の鑑定評価額を決定する際
その不動産の、典型的な需要者を
想定し、その需要者は、何を
メルクマールとして、取引価格を
決定するかを検討し、最終的な
価格を決定します。

例えば、戸建住宅や分譲マンション
であれば、給与所得者の
個人等が想定され、個人は
通常 不動産相場価格を見て
取引価格を決定するので
取引事例から算出される価格に
重点をおいて、鑑定評価額を
決定します。

ところが、経済環境の変化により
典型的需要者が、変わることがあります。

昨年まででしたら、賃貸用の収益物件の場合
典型的需要者は、不動産投資ファンド等が
想定されましたが、昨今の金融環境の
変化により、不動産投資ファンドが
需要者とならないケースが増えてきております。

需要者の属性により資金調達能力も
異なるでしょうから、
鑑定評価額も変わってくることとなります。

不動産の金融商品化により、不動産市場に
資金が沢山入ってくることになりましたが
今は、その時と逆のことがおこっている
のでしょうか。

不動産開発は、難しくなっています。

今年度の初めころから
不動産開発が、急速に難しくなりました。
この要因は、土地価格の上昇
建築コストの上昇、
完成後の不動産需要者である
不動産投資ファンドやエンドユーザーの
需要の減退があげられます。

このことは、最近の地価上昇傾向や
建築単価の上昇
また、マンション等の販売の低迷など
市場のデータからも、その傾向が
はっきり出ています。

そのため、不動産鑑定評価実務でも
開発によって必要な支出と
売却して得る収入との差額である
開発利益は、縮小しています。

このような状態が永遠に
続くものではなく、時が経てば
土地価格が調整されたり、不動産投資
に資金が帰ってくるでしょうから、
それまで、待つことに
なります。

不動産市場は、株式相場や
商品相場などのように、短時間で
価格調整が進まないことが多く
環境が変わるまで、少しガマン
が必要です。

ガマンしている間に、
シビれて立ち上がれなくなると
いけないので、フィービジネスを
持つなどしてガマンしている間も
血液が、体中に回るように
しておかなければ
なりません。

不動産の周辺環境は変化するもの

不動産鑑定での現地調査において
対象地を含む近隣の状況を
見ることが、重要な作業の
ひとつです。
現地調査では、その地域の歴史を
垣間見ることができます。

例えば、古い工場や倉庫などが
建っている隣で、新築の高層
マンションが建っているような
ことがあります。
そこは、かつては、工場が
多くあった地域でしたが、中国などへの
生産拠点の移動などにより
工場が閉鎖され、その後に、マンションが
建設されるようになったと
推測されます。

このように、不動産の周辺環境は
年月をかけて変わっていくものです。
そして、この変化をいち早く掴むことが
不動産開発業者にとって大切な
ことなのでしょう。

かつては、ドーナツ化現象と言って
都心は仕事をするところで、
郊外に住宅を建てて、人口が
郊外にひろがり、都心の人口が少なく
なりました。最近では、その逆の
都心回帰といって
郊外にいた人が、都心に戻る傾向になって
います。

将来の人口分布がどのように
移行する予測することが、不動産開発の
ポイントになるのでしょう。

不動産の典型的需要者

不動産鑑定において
鑑定評価額を算定する際には
その不動産の典型的な需要者を
想定します。
その典型的な需要者は、時の
経過とともに変わっていきます。

戸建住宅の場合は、典型的な
需要者は個人などの居住目的の
者しか想定されませんが
最近まで、収益物件の需要者で
あった不動産投資ファンドは
金融情勢の変化により
需要者となるケースが、激減
していると思います。

ならば、典型的な需要者が
富裕層等の資産家に変わってきたならば
鑑定評価額の算定にも
影響すると思います。

富裕層であれば、投資規模も
小さくなるかと思いますし
需要量にも限界があるかと思います。

このように、不動産を取り巻く
経済情勢は、急速に変化しており
これに対応していくことも
不動産鑑定士の重要な役目であると
思います。

企業価値評価と不動産鑑定評価

不動産鑑定において
鑑定評価額を決定する際には、
その不動産の典型的需要者を想定し
その需要者が、何をメルクマールとして
価格を決定するかを検討して
鑑定評価額を決定します。

例えば、戸建住宅であれば
取引相場価格が、メルクマールに
なるであろから、取引事例より
求めた価格(比準価格といいます)を
重視して、鑑定評価額を決定し

賃貸用マンションであれば
賃貸収益がメルクマールに
なるであろうから、DCF法価格や
収益還元価格から求めた価格
(収益価格といいます)を重視
して、鑑定評価額を決定します。

ところで、M&Aの際に、企業価値評価を
行いますが、企業が保有する
不動産を評価するときに
鑑定評価額を利用することも
あろうかと思います。

M&A対象企業の不動産の典型的
需要者と、実際のM&Aを仕掛ける
企業の不動産の利用目的が
異なることもあります。

また、M&Aによるシナジー効果
を鑑定評価に織り込むことは
困難だと思います。
そのため、M&Aでの企業価値評価において
不動産鑑定評価額をそのまま
利用できないことも
あります。

不動産の本当の大きさは

不動産の不可解な点として
1物4価など言われるような
公示価格、路線価、固定資産税評価
鑑定評価、実勢価格と
1つの不動産に複数の価格があることが
挙げられます。

それだけでなく、不動産の面積について
も、同一の不動産で、複数の
面積が表示されることがあります。

不動産鑑定において、面積を確定する
ことは、評価額を確定するにあたって
必須となりますので、神経を使います。

たとえば、マンションの場合
登記上の面積と、広告等で表示される
専有面積とはことなります。
登記上は、壁の内側で面積測定するに
対して、広告等では、壁の中心から
面積測定するので、広告等での
専有面積は、登記上の面積より
大きく表示されています。

また、土地面積でも、登記上の面積と
実測面積では、異なることがあります
(いわゆる 縄伸び、縄縮み)
建物面積は、登記上の面積と
建築確認書に記載される面積や
容積率算定での面積では、異なって
おります。

土地価格相場や賃料水準を言うときには
通常、坪単価ベースでいうことが
一般的ですが、公示価格等の公的評価
では、崔渦舛派充┐気譴討い泙后

このような、不動産数量に
関する複雑さが、不動産取引において、
比較可能性を難しくしている
要因の一つと思います。

不動産価格の硬直性

不動産と有価証券(上場株式をイメージ)を
比較した場合、似ているところと、異なる
ところがある。

まず、似ているところとしては、両者とも
価格は、需要と供給という市場によって
決まるというところである。また、市場について
誰も支配できず、アダムスミス(?)の
見えざる手によって、支配されているものである。
市場価格は、神のみぞ知るものなのである。

価格の下落または上昇トレンドは
人が決めるのではなく、見えざる手が
決めるものである。
不動産会社や有価証券運用会社は
このような市場原理に、従わなければなりません。

一方、両者の決定的な違いとしては
有価証券の場合、日々価格が変動し
その動きを知ることができるが
不動産の場合、その指標となるインデックス
(民間が公表するものを除きます。)が
整備されておらず、価格の変動を
日々知ることができないところにある。

一般には、地価公示や都道府県地価調査、路線価に
よって価格の変動をしることができても
いずれも1年に1回の公表のため、日々とまで
言わなくても、公表される価格と
実際取引される時点では、ズレが生じることは
避けられない。

このように不動産価格に、毎月ペースでも
公表される、インデックス(民間が公表する
インデックスは除きます。)がないことが、
不動産の取引価格に、市場実態を
反映するまで時間を要し、価格調整がスムーズに
進まないという弱点があります。

そのため、ある日突然、価格が暴落したり
下落トレンドが、長期に続いたりする
傾向があります。

この他に、不動産の場合、価格を決める
要因が複雑なため、単純に価格を比較する
ことが難しいところがあります。
これは、不動産と有価証券との根本的な
性質の違いなので、その差を埋めることは
難しいものと思います。

シンガポールでの不動産事情

先日、自宅へシンガポールに住まれている
日本人の方から、シンガポールでの
不動産事情について、お話を聞きました。

ご存知のとおり、シンガポールは
日本の淡路島程度の大きさの小さな国です。
税率が低く、英語圏(古くは、イギリスの
植民地でした。)ということもあり
世界の中でも有数の金融センターでもあります。

日本では、石油などに代表されるように
物価が上がっていますが、シンガポールでも
日本と同様に物価が上がっているようです。
日本と同様に、石油関連商品のほか
不動産価格(売買価格、賃料とも)が
ここ数年で、一番あがっているとのことです。

シンガポールの場合、これからも人口増加が
見込まれることから、不動産の価格も
上昇しているものと思います。

日本の場合、ここ5年程度の不動産価格の
上昇は、人口増加というより、バブル経済の
影響で下がりすぎた不動産価格が
最近の不動産の金融化の影響もあり
不動産価格が上昇したと思っております。

日本とシンガポールでは、不動産事情が
大きく異なっていると思います。

建物に含み益

最近では、建築コストが上昇して
建物を建てる採算ベースが厳しくなって
きています。
この要因は、鉄等の材料費、また
石油価格上昇による材料を運搬する費用の
高騰、関西地区では、堺や尼崎での大規模
プロジェクトによる工員の需要が、旺盛で
工員の単価が、高くなってきていることが
要因です。

このため、数年前では10億円でできた工事が
今では、例えば、15億円要することも
あるそうです。
この結果、数年前に竣工した建物を評価した
場合、建物に含み益が生ずることが
あります。
(不動産鑑定での建物評価は、建物の
 建築時の建築コストをベースとは
 せず、評価時点の建築コストをベース
 とするからです。
通常、土地に含み益が発生することは、
理解できますが、減価償却する建物は
竣工時の、まっさらの状態が、最も
価値があり、その後は、老朽化等により
価値が下がっていくという理解が一般的です。

しかし、最近の経済環境では、建物に
含み益が生じるという不思議な現象が
おこっております。

最近の企業破綻

先週末に、ゼクスとキョーエイ産業が
民事再生法を申請する取締役会決議を
したことがリリースされました。

両者の破綻は、偶然ではなく、不動産会社の
経営環境の悪化を 物語っていると感じています。

いずれの会社も私どもの事務所で関与している
案件で、プレイヤーの一員として、過去に
一度は、関係のあった会社であることも
そのように感じさせる原因なのかもしれません。

ゼクスについては、私が住んでいるところから
数キロ離れたところで、運営が起動に乗らなかった
高齢者向けマンションがあり、身近なことと
感じさせています。

これから少なくとも数年程度は、厳しい環境が
続くと予想されますし、そのような環境で
乗り切れる会社と、息切れする会社とに
分かれてくるものと思います。

不動産会社の場合、その業態から過小資本で
過大負債になりがちなため、環境の変化には
大きな影響を受けやすいです。
また、不動産会社は、通常、投資部分のハイリスク
ハイリターン部分を保有していることが多く
市況が好調な時は、莫大な利益を得ますが
反転した場合、大きな損失を被ります。
(ジェットコースターのアップダウンの
 ようなイメージです。)

不動産会社は、リスク管理をどのように、
しているかが、会社の命運を分けることに
なろうかと思います。