減価償却での耐用年数の考え方

建物の減価償却費を計上する場合、税法の定めもあり償却方法は定額法しか採用
できません。償却額は耐用年数を何年とするかで償却方法が異なります。法人税
法では、建物の用途や構造等によって耐用年数を定めており、建物のそれぞれを
調べて、対応する耐用年数を採用することが一般的です。
 
不動産証券化案件では、不動産鑑定評価書を取っています。そこには建物の残存
耐用年数が記載されています。こちらの耐用年数を採用することも可能ですが、
法人税法で定める耐用年数より短い場合は、法人税法での耐用年数での計算結果
との差額を、法人税申告書で調整(申告加算)しなければなりません。
 
このような手間は回避することが通常で、不動産鑑定評価書の耐用年数を採用す
るケースは、法人税法の耐用年数より長くなるケースに限られます。
 
一方で償却額を多くするためには、どのような方法があるでしょうか?通常、建
物は躯体部分と電気設備、給排水設備、空調設備、エレベーターなど付属設備と
一体となっております。通常建物の耐用年数と言われるものは、躯体部分の耐用
年数を指しています。建物に含まれる電気設備等の設備は、法人税法では躯体よ
りも短い15年程度の耐用年数を採用することになっています。
 
そのため減価償却費を多く計上するには、建物の構成要素を分解して、躯体部分
と設備部分のそれぞれの金額を算出します。その際には、中古建物の場合は前所
有者の固定資産台帳を、新築建物の場合は工事請負契約書などを利用して、それ
ぞれの金額を算出します。
 
このように少し手間を要しますが、建物を構成要素に分解して、それぞれに合っ
た耐用年数を採用することで、建物を全て躯体として減価償却費を計上するより
多くの減価償却費を計上することが出来ます。

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中古資産取得の減価償却

担当しておりますSPCで
中古資産の取得がありました。

新規で取得した場合とは
減価償却の計算の基となる
『耐用年数』の算定の仕方が異なります。

中古資産取得の場合は
法定耐用年数が経過した期間によって
『耐用年数』が算出されます。

法定耐用年数の全部を経過した資産の場合
その法定耐用年数の20%に相当する年数が
『耐用年数』となります。

例:法定耐用年数35年、35年以上経過の場合
⇒35年×20%=7年

法定耐用年数の一部を経過した資産においては
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に
経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数が
『耐用年数』となります。

【計算式】
法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%

なお、これらの計算により算出した年数に
1年未満の端数があるときはその端数を切り捨て
その年数が2年に満たない場合には2年とします。

例:法定耐用年数35年、経過年数の7年場合
⇒35年-7年+(7年×20%)=29.4年→29年

このように中古資産取得の『耐用年数』の算定は
対象資産の種類を用途だけでなく
経過年数の把握が必要となります。

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一括償却資産の除却

担当しておりますSPCで
『一括償却資産』の除却がありました。

『一括償却資産』とは通常の減価償却ではなく
取得価額を三年間で均等償却できる
一定の資産のことです。

取得価額10万円以上20万円未満の資産で
すでに使用を開始しているものに限り計上します。

通常の固定資産であれば
減価償却として費用計上出来るのは
各資産の耐用年数に応じた償却額ですが
『一括固定資産』は決算月に購入したものであっても
三年間で均等した金額を費用計上できます。

この『一括償却資産』を除却した場合は
どういった経理処理になるでしょうか。

通常の固定資産ですと
資産の残存価値と除却額から
除却損益を計上します。

しかし『一括償却資産』の場合は
除却損益を計上しません。

また、除却後も三年間で均等した減価償却費を計上します。
取得時に全額損金処理できる『少額償却資産』は
償却資産税の対象ですが
『一括償却資産』は償却資産税の対象外です。

このように『一括償却資産』は
通常の固定資産の経理処理とは異なり
除却という考え方はありません。

取得価額が30万円未満の減価償却資産は取得時に
全額損金処理できる『少額減価償却資産』は
早期に費用処理できる一方
償却資産税が発生します。

『一括償却資産』は三年間で償却する一方で
償却資産税は発生しません。

それぞれの特性を考慮しながら
償却方法を選択することが大切です。

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SPC発電設備の固定資産税軽減措置

担当しておりますSPCのひとつに
発電事業を手掛ける事業所がございます。

そちらの事業所ご担当者様より
固定資産税軽減措置について
お問い合わせがございました。

再生可能エネルギー発電設備を取得した事業者を対象とした
『再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)』
という制度がございます。

こちらは、太陽光発電、風力発電、地熱発電、
中小水力発電、バイオマス発電(2万kW未満)を対象とした
再生可能エネルギー発電設備取得に対し、
固定資産税が課せられることとなった年度から
3年分の固定資産税に限り、課税標準を軽減する制度です。
(2020年4月1日から2022年3月末日までの間に対象設備を取得が条件)

この制度に該当して軽減措置を受けているかというお問い合わせでした。

該当の事業所は償却資産申告を電子申告で行っています。
申告の際に上記の『特例適用申請書』を添付して申告致しておりました。

念のため、市役所の税務書に問い合わせしたところ
申請受付済であり提出から3年間軽減措置が適用されるとのことでした。

電子で提出した場合申告書の受付控え等は
通常特には返送されないようでしたが
今回は特別に受付印を押印した申請書控えをお送り頂くこととなりました。

再生可能エネルギー発電設備には軽減措置のあるものとないものがあり
申告時にはその判定をして正しい対応が求められております。

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SPCで建設したホテルの減価償却の開始時期

担当しておりますSPCでホテルが竣工
いたしました。

ホテルの完成引渡を受けて、建物等の資産を
取得し、減価償却を開始します。

こちらのホテルは、1月末の完成引渡日より
テナントと賃貸契約を締結し、賃貸を開始
いたしました。

しかし、賃料の起算日は、賃貸開始日より
1ヶ月半後の3月中旬、さらに、ホテルの
開業日は、その後の4月初旬となりました。

引渡から開業日までは、備品等の搬入を行い
試泊により、宿泊客を迎い入れ、アンケート
を取ったり、PR活動を行うなり、宿泊業務を
開始しておりました。

減価償却は、「事業の用に供した日」から開始
することになりますが、こちらのSPCのように
既述のとおり、賃貸開始日(1月)、賃料起算日
(3月)、開業日(4月)が異なっている場合、
償却の開始日はいつになるのでしょうか。

国税庁のHPには、「事業の用に供した日」とは
「一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従っ
て本来の目的のために使用を開始するに至った日」
と記載があります。

こちらのSPCは「ホテルを建設し、賃貸する」
ことが本来の目的で、ホテル開業前に賃貸は開始
しております。そのため資産であるホテルの賃貸
を開始した「1月」より、減価償却を開始すること
になります。

このように「事業の用に供した日」はホテル所有
者(SPC)とホテルオペレーター(運営者)では
その開始日の扱いが異なり「賃貸の開始」に基づ
いて判断します。

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SPC案件での不動産の取得価格

SPC案件で、案件租税時には、様々な費用が発生します。
会計士費用、弁護士費用、司法書士費用、ローン手数料
不動産鑑定費用、ER(エンジニアリングレポート)費用
不動産調査費用、仲介手数料など様々です。

これらの費用について、不動産の取得価格に含めるかは
1つの論点です。

税務上は、不動産の売買代金と仲介手数料、固都税の精算が
あれば、その精算代金は、取得価格に含むことを求めております。

実務上は、比較的大きな金額になるローン手数料や、弁護士費用を
不動産の取得原価に含めるか、長期前払費用等で、繰延処理
するケースが多くあります。

特に、複数の投資家が存在する案件では、配当を多くするため
取得原価を税務上のものより広く集計し、費用化するタイミングを
建物の耐用年数等に伸ばすケースも多くあります。

SPCが会計監査を受けているケースでは、この不動産の取得価額が
論点になるケースもあり、取得価格の範囲については、会計監査を
担当する会計士と、相談の上、進めることが、望ましいと思います。

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前年度に取得した固定資産の値引取引

担当しておりますSPCで
前年度取得の固定資産の値引がありました。

前年度は値引前の簿価で償却しています。

値引のあった該当資産の簿価を
今年度に減額しますが、
値引額全額を簿価の減額は出来ません。

次の式相当額を減額します。

値引き等の額 × (値引き等の直前における当該固定資産の帳簿価格
÷ 値引き等の直前における当該固定資産の取得価格)

国税庁HP ≪固定資産の取得価額|国税庁 (nta.go.jp)

仮に100の値引があっても上記式での
計算結果が90とすれば簿価の減額は
90となります。

残りの10は前期損益修正益(特別利益)
として処理します。

償却資産の申告の際は、
念のため該当自治体に
取得価格が減額になった旨連絡の上
値引のあったことがわかる
証憑(契約書等)を添付して申告し、
値引後の取得額での課税にする手続きが必要です。

今年度の減価償却額も減額となります。

四半期決算等ですでに減価償却済の場合、
残りの四半期決算での調整が必要です。

年度をまたいでの固定資産の値引は
頻繁には発生しませんが、
会計処理の取扱いや償却資産税申告など、
影響する範囲は多岐に及びます。

再生可能エネルギーの償却資産税減額の特例

風力発電や地熱発電などの再生可能エネルギー発電設備を建設した場合、
発電設備には償却資産税がかかります。
償却資産税というのは、
土地や建物等にかかる通常の固定資産税がかからない
機械設備や構築物にかかる固定資産税です。

再生可能エネルギー推進のため、
この償却資産税が減額される特例制度があります。
発電所の取得時期により適用される条件が異なり、
令和2年4月1日から令和4年3月末までに取得した資産に関しては、
1/2から3/4が減額されます。

適用には条件があり、風力、水力、地熱、バイオマスの発電所では
国の認定を受け、電力会社と固定価格買取契約を結ぶ必要があります。
太陽光発電の場合は、固定価格買取契約を結んだものは対象外で、
自家消費型の設備が対象となります。

発電量などにも規定がありますので、
詳しくは各自治体のホームページ等を参照してください。

11月に顧問先SPCの地熱発電所が完成し、
要件に当てはまりそうですので、
適用を受けるための申請手続きをする予定です。

発電設備は高額ですから、償却資産税もかなりの額になります。
3年間の限定措置ですが、大きなコストダウンが見込まれます。

令和3年の償却資産申告

年が明けて1月は市区町村に
償却資産申告書を
提出する月です。

1月1日現在、会社が所有している
償却資産(機械や備品など)を
1月末(休みの場合翌日)までに
所在する市区町村へ申告します。

市区町村では、提出された
償却資産申告書に基づき
課税台帳の登録や公示等を行います。

後日、納税通知書が郵送されてきますので、
内容に従って納税します。

担当しておりますSPCで、
発電所の引渡しがありました。
償却資産申告基準日が1月1日ですので、
引渡しが1月1日までか
1月2日以降かによって、
その年に納税するかが変わります。

昨年すでに所有している
償却資産に対しては、
コロナによる売上減少の場合、
今年について減免措置もあります。

いずれも1月末日が申告や
減免申請期日ですので、
忘れずに正しく申告しましょう。