地権者を集約する民事信託スキーム

不動産投資でのSPCは合同会社や特定目的会社が
一般的ですが、多数の土地保有者をまとめるため
設立されるSPCがあります。

阪神地区での不動産開発事業で、個人の地権者が
多数いるプロジェクトで、その土地を賃貸して
1つの事業者が、事業展開を計画しています。

多数の個人地権者と土地賃貸契約を締結する場合
例えば、相続が発生すると地主が変わり
変更の覚書を交わすなど、事務作業も増えます。

また、相続人が反社会勢力者の場合、賃貸契約が
終了し、事業者の事業が停止するリスクがあります。

このような契約の不安定さを改善するため
全地権者を信託委託者とし、信託受託用の法人を
設立し、民事信託を締結するスキームがあります。

一般に信託は信託業法の適用を受け、信託の
免許を持つ事業者しか信託受託出来ませんが
民事信託の場合、信託業法の適用はなく
信託の免許なしで受託することが出来ます。

この場合、地権者は信託受益権者になり、事業者と
賃貸契約を直接締結することはありません。

事業者は、受託法人と賃貸契約を締結します。
事業者が、受託法人に支払った賃料は、信託決算を通じて
信託配当として、受益者に支払われます。

このように民事信託を利用すれば、
①法的・契約的に、地権者を集約する。
②経済的には、地権者は受益者として賃料収入を得る。
ことになります。

法的・税務的に注意すべき点がありますが
民事信託は、複数地権者を集約する機能としては
利用するメリットはあると思います。

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メイン口座からリリース口座への振替可能額 

SPC案件では、メイン口座、リリース口座、営業者口座など
複数の銀行口座を開設することは一般的です。

ただ、ローン契約等でメイン口座内で、元利金返済額の積立や
オペレーションコストの積立などを管理することを
定めていることがあります。

会計処理上は、同一口座内の積立は表現されないので
別途、管理する資料を作成しなければなりません。

その名称は、案件によって様々ですが、『勘定残高管理表』などの
名称の資料を作成します。

この資料の作成目的は、メイン口座からリリース口座への
資金振替をする際、いくらまで振替出来るか把握することに
あります。

メイン口座の残高があれば、残高相当額をリリース口座に
振替は可能ですが、メイン口座残高のうち
積立すべき残高がいくらであり、リリース口座への振替額を
日々把握するには『勘定残高管理表』を作成しなければ
なりません。

このようにSPC会計業務では、会計処理だけでなく
預金口座の管理もローン契約書等に定められており
別途、管理資料を作成しなければならないことが
あります。

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DSCR計算時のオペレーティング費用の扱い

プロジェクトファイナンスの際、資金繰の健全性チェックのため
四半期毎にDSCR計算をすることが一般的です。

DSCRは、一定期間の『営業CF』が、対象期間の元利金支払い
どの程度余裕あるかを示す指標です。

毎月の手取り給与が30万円で、食費等の必要な生活費を10万円とすれば
残り20万円で住宅ローンを支払います。毎月のローン支払いが
10万円の場合、DSCRは20万円÷10万円(ローン支払)=2が
DSCRになります。

DSCRは、数値が高いほど良く、例えば、DSCR基準値を、1.2以上
など一定値以上に設定しています。

この計算方法で、問題となるのが、『営業CF』計算時の
オペレーションコストの算出です。この算出は
契約書記載の計算方法の解釈で、差が出ることがあります。

オペレーションコストに消費税を含むか否かは
契約書のDSCR計算定義に記載していることが一般的で
税抜で計算すると記載するケースが多いと思います。

投資対象がオフィスビル等でSPCが課税事業者で支払った
消費税が満額還付されるようなケースでは、オペレーションコストは
消費税申告時に精算され、税抜で問題ありませんが、
投資対象がレジ物件で消費税が還付されないケースでは
オペレーションコストは、税込で計算することが正しいと
思いますが、計算方法の定義で、そこまで意識していない
案件も散見されます。

この他、オペレーションコストの範囲に振込手数料は含むか
また、年次計画記載のオペレーションコストより算出するなど
案件によって、その定義が異なります。

この点は、アセットマネジメント会社と十分打合せをしながら
計算書を作成しております。

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営業者口座ないSPCの営業者報酬の計上

SPC案件では、メイン口座(事業用口座)、リリース口座、営業者口座
など、役割に応じて、銀行口座を開設するケースが一般的です。

メイン口座は、賃貸収入(信託配当等)の受取り、借入金の
元利金支払いなど、SPC事業の中心となる資金の授受を
行います。

リリース口座は、AM報酬や、投資家への配当金支払など
最も劣後する支払いをメイン口座から資金振替を受けた後に
行います。

営業者口座は、①資本金の受入 ②メイン口座から営業者報酬(匿名組合契約に
記載されています。)の受取 ③法人税の支払
を行います。

このように、銀行口座を分けているSPCでは、資金の移動内容が
預金口座を見れば分かるので明確です。

なかには、上記のように複数の口座を持たずに1つの銀行口座で
進んでいるSPCもあります。

そのような場合 営業者報酬の精算による銀行口座間での
資金移動は行いません。匿名組合決算のために、営業者報酬の計上は
必要です。そのため、匿名組合部門営業者部門を設定し
営業者報酬相当営業者部門が匿名組合部門に未収計上し、匿名組合
部門
未払計上する 経理処理で対応します。

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契約書等への押印手続

SPC会計業務をしていると、契約書や作成書面への
押印作業は、定期的に発生します。弊事務所でも
SPCの印鑑をお預りしているためです。

今まで、多くの書類に押印をしてきました。
押印の種類について、整理しご説明したいと
思います。

押印の種類
① 署名欄への押印
② 割印・・・複数枚の契約書の綴じた部分への押印
③ 捨印・・・主に登記申請書類の場合、軽微な修正を
司法書士が出来るようにする押印

になります。①②は必須となりますが、③まで押印するケースは
少ないように思います。

レジ案件のSPCでは、年度末付近は、テナントの入れ替えも
多く、押印する頻度も多くなります。

シングルテナントのSPCの場合は、テナント入れ替えによる
押印は少ないので、リファイアンスの際には、押印の頻度が
上がりますが、押印する頻度は多くありません。

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会計監査の要否

 SPCは、投資家や金融機関からの借入金で投資事業を行っており、
正しく会計処理され財務の透明性が求められます。
そのため会計監査をするケースが多く見受けられます。

 会計監査には、大きく分けて法定監査と任意監査の2種類があります。
法定監査は法的に会計監査が求められるケースで、会計監査を受けることが強制されます。
一方で、任意監査は法的には会計監査を受ける必要はありませんが、
プロジェクトの関係者間でのプロジェクト契約やローン契約、
投資契約等で会計監査を受けた決算書を毎年提出することが求められるなど、
主に契約書の中で会計監査を求めているケースが該当します。

 会計監査を受ける場合、監査費用を要するので、投資家の利回りが下がる要因になります。
一方で、会計監査というチェック機能が働くので、決算書信頼性は高まります。

スキーム条件会計監査
TMKスキーム優先出資をうけている法定監査
GK-TKスキーム総負債が200億円未満法定監査
総負債が200億円以上任意監査

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適格機関投資家等特例業務(QII)届出 出資実行後届出

適格機関投資家等特例業務(QII)届出の
近畿財務局での実務的なところは、先日ご説明した
とおりです。

届出は、TK出資をするまでの、事前届出となります。
事前届出で手続きが完了ではなく、出資を受けた後に
出資をしたことのエビデンス(預金通帳の写)や
出資者が確定したこと(適格機関投資家が含まれているなど)
の提出が必要です。

これらは、全て、GBIZでの届出が可能ですが
案件組成する際には、何度か届出が必要となります。

また、SPCが決算を迎えた時は、事業報告書(決算書と
投資内容の概要)の報告をし、事業報告書は公衆の縦覧に
供する手続きを踏まなければなりません。

QII特例は、メリットも多くありますが、上記のように
財務局への届出や報告等が必要な点には、注意が必要です。

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適格機関投資家等特例業務(QII特例)届出

不動産を信託受益権化したGK-TKスキームでは、
TKの募集に先立って、財務局に 適格機関投資家等特例業務の
届出をします。

特例業務の新規届出:財務省関東財務局 (mof.go.jp)

一般的には、この届出を会計事務所が担当するケースが
多く、弊事務所でも、この業務を担当しております。

届出先は、SPCの本店所在地を管轄する財務局となり
東京本店のSPCは、関東財務局、大阪本店のSPCは近畿財務局
となります。

この届出終了までのプロセスが、関東財務局と近畿財務局では
異なります。具体的には、関東財務局の場合、事前に書面等のチェックは
なく、SPCが取得した『GBIZ』のIDで電子申請することで
完了します。

ログイン (gbiz-id.go.jp)

一方、近畿財務局では担当者に、申請書類を添付書類である誓約書や
経歴等を添えて、メールで送信し、その後、ヒアリングシートという
質問項目をまとめたリストが送られ、それに回答をした上で
近畿財務局内でのチェック作業を経てからの申請となります。

そのため、近畿財務局への申請では、手続き開始から、申請
が完了するまで、2週間程度要します。

関東財務局では、QIIの申請も多く、個別のヒアリングシートを
作成し、回答を求めるようなことは求めていないようですが
近畿財務局では、案件が少ないためか、上記のような
手続きを経ています。

大阪市内本店のSPCでは、東京本店SPCと比べて、日数に
余裕をもって準備することが求められます。

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信託決算書とインボイス制度

昨年10月より開始したインボイス制度が、導入から5ヶ月
程度経過しました。
インボイス制度の実務も、進んでいると思います。

SPC案件の場合、不動産を信託受益権化するケースが
多くあります。信託を通じたインボイス(適格請求書)の
提供方法は、信託銀行によって、違いがあります。

いわゆる大手の財閥系の信託銀行は、信託決算毎に
インボイス取引の明細や計算書を作成し、取引先や
登録番号等をまとめたものが、提出されます。

インボイス制度での立替金の精算書に近いイメージの
取引明細が提出されます。
信託銀行としては、従来作成が不要であった書類を
別途、作成することになり手間が増えると思います。

計算書にはすべての課税仕入取引が記載されるものでは
ありません。
例えば、テナントから回収した賃料から、仲介手数料に
相当する『広告費』を控除されている場合、広告費を
信託銀行が作成する『計算書』に掲載されていないケースが
あります。

このような取引は、別途、AM業者やPM業者を通じて
広告費の『適格請求書』を入手しなければなりません。

財閥系ではない信託銀行では、入手した適格請求書の
写しを、そのまま提出するところもあります。
こちらの方が、受託者側で別途、計算書を作成しない分
手間が省けますが、信託取引が多いと、提出する
適格請求書の通数も多くなります。

このように、インボイス制度開始により、請求書の
チェックなど、経理事務に手数が増えていることに
間違いはありません。

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外形標準課税対象法人の見直し

令和6年税制改正大綱で、外形標準課税対象法人が見直されることが発表されました。
これまでは、資本金1億円超の法人に外形標準課税が課されていました。

資本金を資本剰余金へ振り替ることで減資を行い外形標準課税の対象から外れる会社や
持株会社化、分社化をして、子会社の資本金を1億円以下に設定するなどして
グループ法人の一部のみが外形標準課税の対象になるようにしているケースが
散見されることから今回見直しが行われたようです。

①今後は、資本金が1億円以下でも以下のすべての条件に当てはまる場合は、
外形標準課税の対象となります。(令和6年税制改正大綱 P51)

前事業年度終了の日資本金の額が1億円えている
・当該事業年度の資本金資本剰余金合計額が10億円えている

②また、資本金資本剰余金合計額50億円を超える法人の100%子会社は、
事業年度の終了の日の資本金資本剰余金合計額が2億円える場合は、
外形標準課税の対象となります。(令和6年税制改正大綱 P52)

①は、令和7年4月施行予定で(令和6年税制改正大綱 P52)
②は、令和8年4月施行予定です。(令和6年税制改正大綱 P53)

今回の改正以前から特定目的会社(TMK)は、外形標準課税対象外であり、
改正の影響は受けません。(東京都 外形標準課税制度 対象法人QA

GK-TKスキームの場合も通常は、GKの資本金は少額に設定されますので、
資本剰余金との合計額でも2億円を超えることはなく
影響を受けるSPCはありません。

この改正は、通常のSPCに与えるケースは、ほとんどないものと
思います。