リファイナンスと長期前払費用の償却

不動産証券化の際、ノンリコースローンのローン手数料や、弁護士費用等の一定のまとまった費用が発生します。これらの費用を、支出時に全額費用処理する場合と、長期前払費用として計上しローン期間等で償却するケースがあります。

ローン関係費用は、ローンが実行されればそれでSPCは経済的メリットを受けたとして、そのタイミングで全額費用処理することがあります。一方で、ローンが完済されるまで、返済の猶予を受けているため長期前払費用として計上し、ローン期間で償却することもあります。ここでは、長期前払費用として償却するケースについて、解説したいと思います。

長期前払費用の場合、償却期間をどのように取れば良いかが論点になります。通常ノンリコースローンでは、通常の約定返済期間と、2年程度の延長可能なオプションが付いてあることがあります。例えば、通常のローン期間が5年で、2年延長のオプションがあるケースはどうなるでしょうか?ほとんどのケースでは通常のローン期間5年で償却しています。ただ、SPCの利益計上を早めるため、2年間の延長オプションを考慮して7年間で償却するケースもあります。

税務上は、ローン手数料や弁護士費用は、支出時に全額費用処理することを制限する規定はないので、長期前払費用として費用計上を繰延処理しても問題にはなりません。会計上は、このような長期前払費用は資産性がないものとして、計上が認められないことも想定されますが、ローン実行中はこれらの費用支出の恩恵を受けていることから、容認されることが一般的です。

では、通常の返済期間5年のローンが3年目にリファイナンスをした場合は、どのようになるでしょうか?このようなケースでは、当初受けたローンは一括返済することになります。そのため、未償却の長期前払費用残高は、一括償却をして残高ゼロになります。

リファイナンスのためにローン手数料や弁護士費用を支払っているでしょうから、再度ローン期間に応じて長期前払費用を計上することになります。

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棚卸資産か固定資産か

 不動産の流動化案件では、
 不動産を流動資産である棚卸資産とするのか、
 固定資産にするのかが論点になります。

 棚卸資産になるか固定資産になるかのポイントは、
 SPCが保有する不動産の出口戦略の考え方に影響を受けます。
 つまり、保有期間が数年程度の場合は、棚卸資産になりますが、
 5年程度の長期保有の場合は長期投資のため、固定資産に該当します。

 棚卸資産の場合、減価償却費を計上しませんが、
 固定資産の場合、減価償却費を計上します。
 証券化不動産は、将来売却することが見込まれています。
 この不動産の減価償却費を計上するか否かで受ける影響についてですが、
 減価償却費を計上しない棚卸資産は、
 将来売却時の簿価は当初から変動しないままで、
 減価償却費を計上する有形固定資産の簿価は
 償却額相当減額された低い簿価となり、
 売却益は固定資産計上の方が多くなります。
 しかし、保有期間全体を通じての減価償却費を加味した売買損益は同額になり、
 損益計上のタイミングがズレることになります。

 評価損の計上では、棚卸資産の方が計上の可能性が高くなります。
 仮に低価法を採用するSPCでは毎年取得する不動産鑑定評価額が簿価を下回れば、
 評価損を計上することになります。
 固定資産に計上している場合は、不動産鑑定評価額が簿価を下回っても、
 直ちに減損損失を計上することにはならず、
 減損の兆候など、一定の要件を満たした場合、損失計上となります。
 一般的には不動産鑑定評価額が簿価の50%以下になるなどの兆候がある
 などの要件を満たした場合に減損損失を計上します。

 

       棚卸資産固定資産
計上区分通常の保有期間経過後に売却が決まっている長期保有
減価償却費の計上なしあり
評価損計上の対象低価法評価損 強制評価損減損会計の適用

減価償却での耐用年数の考え方

建物の減価償却費を計上する場合、税法の定めもあり償却方法は定額法しか採用
できません。償却額は耐用年数を何年とするかで償却方法が異なります。法人税
法では、建物の用途や構造等によって耐用年数を定めており、建物のそれぞれを
調べて、対応する耐用年数を採用することが一般的です。
 
不動産証券化案件では、不動産鑑定評価書を取っています。そこには建物の残存
耐用年数が記載されています。こちらの耐用年数を採用することも可能ですが、
法人税法で定める耐用年数より短い場合は、法人税法での耐用年数での計算結果
との差額を、法人税申告書で調整(申告加算)しなければなりません。
 
このような手間は回避することが通常で、不動産鑑定評価書の耐用年数を採用す
るケースは、法人税法の耐用年数より長くなるケースに限られます。
 
一方で償却額を多くするためには、どのような方法があるでしょうか?通常、建
物は躯体部分と電気設備、給排水設備、空調設備、エレベーターなど付属設備と
一体となっております。通常建物の耐用年数と言われるものは、躯体部分の耐用
年数を指しています。建物に含まれる電気設備等の設備は、法人税法では躯体よ
りも短い15年程度の耐用年数を採用することになっています。
 
そのため減価償却費を多く計上するには、建物の構成要素を分解して、躯体部分
と設備部分のそれぞれの金額を算出します。その際には、中古建物の場合は前所
有者の固定資産台帳を、新築建物の場合は工事請負契約書などを利用して、それ
ぞれの金額を算出します。
 
このように少し手間を要しますが、建物を構成要素に分解して、それぞれに合っ
た耐用年数を採用することで、建物を全て躯体として減価償却費を計上するより
多くの減価償却費を計上することが出来ます。

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適格機関投資家等特例業務(QII特例)届出

不動産を信託受益権化したGK-TKスキームでは、
TKの募集に先立って、財務局に 適格機関投資家等特例業務の
届出をします。

特例業務の新規届出:財務省関東財務局 (mof.go.jp)

一般的には、この届出を会計事務所が担当するケースが
多く、弊事務所でも、この業務を担当しております。

届出先は、SPCの本店所在地を管轄する財務局となり
東京本店のSPCは、関東財務局、大阪本店のSPCは近畿財務局
となります。

この届出終了までのプロセスが、関東財務局と近畿財務局では
異なります。具体的には、関東財務局の場合、事前に書面等のチェックは
なく、SPCが取得した『GBIZ』のIDで電子申請することで
完了します。

ログイン (gbiz-id.go.jp)

一方、近畿財務局では担当者に、申請書類を添付書類である誓約書や
経歴等を添えて、メールで送信し、その後、ヒアリングシートという
質問項目をまとめたリストが送られ、それに回答をした上で
近畿財務局内でのチェック作業を経てからの申請となります。

そのため、近畿財務局への申請では、手続き開始から、申請
が完了するまで、2週間程度要します。

関東財務局では、QIIの申請も多く、個別のヒアリングシートを
作成し、回答を求めるようなことは求めていないようですが
近畿財務局では、案件が少ないためか、上記のような
手続きを経ています。

大阪市内本店のSPCでは、東京本店SPCと比べて、日数に
余裕をもって準備することが求められます。

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インボイス制度と不動産信託(賃料収入)

いよいよ 10月よりインボイス制度が開始します。
形の上では、消費税納付の適正化ということですが
従来 免税事業者であった者は、実質的に増税になる
ケースが多く反対する人も多いのが現状です。

実務的には、仕入控除をするには、インボイス登録を
受けた事業者から交付された『適格請求書』の入手が
必須となり、そのチェックも含めて、経理作業が増えることは
間違いありません。

SPC会計でも、一般的な事業会社と同じ対応が迫られます。
不動産信託を利用した、SPCの賃料収入と インボイス制度について
ご紹介します。

SPCが不動産信託を通じて、商業テナントから賃料収入を得る場合
テナントは賃料と合わせて、消費税を支払います。
仮に賃料が100万円で消費税10万円と合わせて、110万円を

不動産信託の場合、テナントは不動産の登記名義人である
信託銀行と締結することが一般的です。
信託銀行は、消費税を含めた賃料を受取り、信託決算での
信託配当を受益者(通常は、SPC)に支払い、賃料収入は
SPCに帰属します。(消費税法 14条

テナントから見て、賃貸人は信託銀行ですが、払った消費税は
受益者であるSPCに帰属するという形式になります。

信託銀行は形式的に賃貸人ですが、実質的にはSPCが賃貸人
ということで、インボイス制度開始後は、信託銀行はテナントに
実質的に消費税を受取るSPCの登録番号を、どのように
伝えるかという問題があります。

インボイス制度開始後は、信託銀行では、請求書に
受益者(SPC)の名称、住所、登録番号を併記した
『ハイブリッド型』の請求書をテナントに交付すると
しています。

テナントから見れば、入居している不動産の受益者が
請求書を見れば、分かるということになります。

インボイス制度の導入は、不動産信託実務にも大きな
影響を与えます。

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SPCのインボイス制度対応

今年(2023年)10月から始まるインボイス制度に
対して、SPC会計でも その準備を進めております。

インボイス対応の手順としては、おおよそ以下の
内容で進めております。

取引先のインボイス登録の直接(書面等)もしくは
間接(国税庁ホームページ等)の方法で、状況を
調査します。

同時に、SPCが入手している請求書等が、現段階で
登録番号の記載以外は、問題ないかの検討をしています。
ネットショッピングで購入した備品等では、購入先の
正確な名称や住所が記載されていないケースも
散見され、入手する請求書に相当するものの
見直しの必要性も感じています。

概ね、言えることは、インボイス登録している
事業者の発行している請求書は、適切なケースが
多く、インボイス登録していない事業者の
請求書は、曖昧なものが多いと言えます。

実際に請求書等を入手するSPCのAM業者の
担当者には、現段階で入手している請求書の
不備や不足等があれば、早めにお伝えして
インボイス制度開始に備えたいと思います。

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匿名組合決算の損益分配(端数の扱い)

匿名組合案件で、複数の出資者がいるケースについて
少し難解なことがあります。

複数の出資者間で優先、劣後関係がなく、フラットな場合で
各出資者への損益分配を出資割合でする時、端数を切捨とすれば
各出資者への損益分配額の合計と、SPC全体で計算される
損益分配額とでは、円単位では差が出ます。

数値例を示しますと、SPC全体の分配対象の損益が
1,000,000円として、各出資者への損益分配計算で、端数切捨が
あれば、各出資者への損益分配合計が、999,995円などのように
円単位で、差が出ます。

このようなケースでの匿名組合決算では、どのように表現するのでしょうか?

損益分配前利益 1,000,000円
損益分配額    999,995円
損益分配後利益     5円

となります。分配されない利益5円の扱いは、匿名組合契約で
何らかの記載があると思いますが、複数の匿名組合出資者が
いる場合は、上記のような、テクニカルな問題が
発生します。

匿名組合での利益はパススルーとして
全額出資者に分配されるはずですが
実務上は、分配されない利益が、僅かですが
発生します。

法人税法 基本通達14-1-3

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レジ案件での控除対象外消費税

居住用賃貸マンション(レジ物件)への投資案件で
建物に係る消費税は、取得時には控除出来ないことは
ご存知の通りです。

税抜経理の場合、控除出来ない消費税は、一定の
期間で償却されます。この場合の償却方法は
60ヶ月(5年間)で償却する方法が、一般的です。

一方で、レジ物件の取得に係る控除対象外消費税を
60ヶ月で償却すると、各年度の償却額が、多額に
なることがあります。

その結果、投資利回りが低下し、投資としての魅力が
劣ることになります。

控除対象外消費税は、60ヶ月で償却の他、対象不動産の
取得価額に含めて、建物等の耐用年数に応じて
償却する方法も可能です。

今の消費税制度では、レジ物件の取得時に支払う
消費税は、控除(還付)対象にはならないので
取得費用の一部という理解で、特段問題ないと
思います。

この点は、オフィスビル等への投資と異なり
消費税の経理処理には、大きな差があります。

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インボイス制度と消費税請求

先日、2023年10月以降導入されるインボイス制度について
関係者と打合せをしました。
その関係者は、経理担当ではなく、大手不動産会社のご担当者
でしたが、インボイス制度について、誤解されている点が
あったので、ご紹介します。

同じような誤解をされている方もいるかもしれないので、ご参考程度に
お聞きください。

①インボイス制度で、登録していない事業者は、一般に
消費税免税事業者ですが、免税事業者でも、消費税は請求できます。

②インボイス登録していない事業者は、適格請求書を
発行出来ませんが、その請求書でも有効な請求書です。

③免税事業者に支払う消費税は、2023年10月以降
仕入控除額が減額され、支払った事業者は損失と
なります。
損失相当分を、免税事業者との取引金額を引き下げるように
要請すると、場合によっては、独占禁止法上 問題となることが
あります。

https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html

④賃料等を口座引落で精算し、毎月請求書等を発行していない時は
請求書の発行事業者が、相手先に『インボイス登録通知書』を
交付し、登録番号等 必要な情報を通知すれば、適格請求書が
なくても、賃料を支払った事業者は、仕入控除が出来ます。

以上が、全てではありませんが、インボイス制度がSPC経理事務に
与える影響は、大きいと思います。

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多数投資家案件の対応

弊事務所が担当している案件で、投資家が80名以上
いらっしゃる案件があります。
通常のGK-TKスキームの案件では、TK出資者は
10社未満がほとんどで、50社を超えるケースは
まずありません。

本案件は、個人投資への節税を売りにしている案件で
出資者が80名以上と非常に多くなりました。

この場合、決算時の投資への報告作業が大変煩雑になります。
そのため、投資家様のご了解を頂ける場合は
ネット経由(具体的には、各投資家様のクラウドフォルダー)で
決算報告をする方式を採用することにしました。

概ね全投資家の80%程度が、ネット経由報告を
ご了解いただけたので、報告作業が軽減されました。

クラウド上に決算データを保存することで、1年前、2年前の
決算書も、ご覧いただけるようになっております。

昨今のペーパーレス時代や、それが求められる
時代背景のもとでは、このように、紙を使わない
決算報告も、増えてくると思います。

一方で、セキュリティー管理も大切ですので
弊事務所では、慎重に、データ管理を進めております。

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